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贈るための日本の伝統技術「風呂敷」で「包む」暮らしを

感謝のしるし―京都ハンディクラフトセンター提供画像
感謝のしるし―京都ハンディクラフトセンター提供画像
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07 Mar 2022 08:03:33 GMT9
07 Mar 2022 08:03:33 GMT9

ナダル・サモーリ

大阪: 商品を眺めている時、最初に目に入るのはそのパッケージだ。ショッピングが特に魅力的に感じられるのは、まばゆいばかりのパッケージのおかげかもしれない。

日本では、人々は商品そのものだけを見るのではなく、贈り物を受け取る慣習や心を込めて包まれたものを開ける期待感なども楽しむ。包装には、受け取る人の気持ちに思いを馳せる意図が表現されているのだ。

コンビニのおにぎりやサンドイッチから、環境に配慮した素材の箱まで、購入者の満足のために、巧妙でこだわりのあるパッケージデザインのためには労を惜しまないのが日本の伝統だ。

「日本の丁寧な包装は、物を大切にする精神からきている。つまり、物を包むということは、命の一つの形を包むということなのだ。日本人には歴史的に物を大切にする性質があり、これは、すべてのものに神が宿るという、神道の概念からきている。この信条が物を丁寧に扱う姿勢につながっているのだと思う。そのためにプラスチック素材を余分に使わなくてはいけないこともあり、SDG的観点からすればそれは無駄かもしれない。だが、COVIDの時代である今、特に食品に関しては、衛生的に保護するためのプラスアルファとしてとらえることができる」と、京都ハンディクラフトセンターで長年働いてきたあやめりえさんは語る。

米が紙と紐で包装されている。京都の地元の店で。

ひとつ探求する価値があるのは、1000年もの歴史を持つ「風呂敷」の包装技術だ。正方形の布一枚で物を包む日本の伝統で、サステナブルなリユースが流行するずっと以前からある素晴らしい技術だ。シンプルな一枚の布を適切に結ぶだけで、食料品や本、クッション、箱、その他の容器など、どんなものでも包むことができる。

「風呂敷の折り方、包み方には様々なものがある。厳選された風呂敷は何通りもの包み方ができるし、持ち手をつければ高級品も入れられる風呂敷バッグになる。特にこの風呂敷バッグは最近、人気になってきている。私の風呂敷の使い方の中では、瓶を包むのもとてもお洒落に見える。1本でも、2本でも、持ち手をつけて瓶を包むことができる。そういうことができる技術がすごいと思う。贈り物をそんなふうに包むと、受け取った人にとっても深く印象に残る」と、あやめさん。

風呂敷は本当に便利だ―京都ハンディクラフトセンター提供画像

街で風呂敷包みを抱えている人を見かけると、包みに込められた思いが伝わってきて、とても嬉しくなる。

「お客さんに風呂敷がどんなに便利なものかを実演して見せると、布一枚でできることの選択肢の多さに驚かれる。その感動に、私はいつも笑顔をもらっている」と、あやめさんは語る。

日本には古くから包んだりくるんだりする文化がある。風呂敷は「風呂」を意味する “Furo “と、「広げる」という意味の”Shiki “を組み合わせた名前だ。

「『敷』の部分は、入浴の前と後に足元に布を敷く行為からきている」と、あやめさんは言う。

日本には、年に2回、お世話になった人に贈り物をする習慣がある。7月頃送る夏の贈り物、「お中元」と、12月頃の冬の贈り物、「お歳暮」だ。

「正式な場では、贈り物を風呂敷に包んで持って行って相手の前で開ける習慣がある」と、あやめさん。

感謝のしるし― 京都ハンディクラフトセンター提供画像

「日本文化では動きの美しさが重要で、茶道や日本舞踊など日本の伝統芸術に携わる際の動作はとても肝心だ。同じように、風呂敷を包む時も、解く時も、手の動きの美しさを大切にして、丁寧に、上品に行うことを心がけている」

風呂敷は通常、綿やナイロン、ポリエステル、絹、レーヨンなどの素材でつくられており、色によって意味合いが異なる。赤や黄色(暖色系)は慶事、青(寒色系)は弔事、高貴な色である紫はどちらの場面でも使用でき、緑も同様だ。

「日本には『花鳥風月』という言葉があり、これは日本美術における自然の美しさとその要素(花、鳥、風、月)を強調している。風呂敷の柄の多くは自然から着想を得ており、様々な雰囲気を表現している。また、唐草模様(アラベスク)やシリアのダマスカス地方の剣の鍔に使われる伝統の模様であるダマスクなど、海外から取り入れた柄もある。うちには、京都ダマスクと呼ばれる商品ラインもある」と、あやめさんは言う。

切った竹を2つ並べたメニュー置き。京都、祇園で。

折形(おりかた)、または「折り方」は、一般に「折り紙」として知られる紙を折る技術で“Ori”は「折る」、“Kami”は「紙」を意味している。風呂敷と同様、一枚の紙もうまく使えば非常に便利で、様々な形をつくることができる。切ったり、印をつけたり、糊で貼る必要もない。折り紙の秘密は折り方にあるのだ。

この技術は贈り物の包装にも応用され、端をちょっとしたテープで止めただけの驚くほど上品なパッケージが出来上がる。

日本は、紛れもなく独自の包装文化を育み、洗練させてきた。吟味してみると、日本人は生活のさまざまな場面で多機能の文化を発展させてきたことがわかる。たとえば、多機能のワンルームを家にしたり、様々な台所道具の代わりに箸を使ったり、一枚の紙や布で究極の彫刻を生み出したり、といったように。

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