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スーダンの唯一の希望の光

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23 Apr 2023 09:04:07 GMT9
23 Apr 2023 09:04:07 GMT9

スーダンの対立する2人の強力な軍事指導者やその傘下勢力の間で先週勃発し、今煮えたぎっている最中の暴力は、悲しいことに予測できたことだった。スーダン市民の民主化への希求を侮蔑する共通の思いの上に築かれていた、2人の軍事指導者による便宜的な同盟が崩壊して、最高権力を目指す戦闘へと至った。戦闘では、巻き添えになった民間人に犠牲者が出ている。

2019年にオマル・バシール氏を打倒した民衆反乱の後、スーダン軍司令官のアブドゥルファッターフ・アル・ブルハン氏と、即応支援部隊(RSF)司令官のヘメッティことモハメド・ハムダン・ダガロ氏は、社会一般の大義を擁護することで杓子定規な民族的偏見を克服した。残念なことに、2人のパートナーシップは、スーダンの民主的な文民統治への移行のサボタージュ、遅延、妨害の上に築かれていた。両指導者は、ダルフールでのジェノサイドにさかのぼる犯罪や、より最近の2019年6月に非武装でデモに参加した120人以上が虐殺された事件の説明責任を回避しようとしていた。

なにより、2人の取り決めは、スーダン軍が文民当局に対する説明責任を果たすことは絶対にないという共通理解に基づいていた。ただし、文民が永久的に排除された後に、どちらの指導者が最高権力を握るかは決定されていなかった。スーダン軍とRSFにとって、このパートナーシップは非常にうまくいっていた。両者は、スーダンの文民政党のパートナーであるかのように装いながらそのいさかいを利用し、民軍移行政府を支持する国際パートナーを愚弄し、さらにテロ対策活動への参加を約束し、アブラハム合意やイスラエルとの関係正常化への支持を表明することで世界の舞台で責任ある当事者であるかのように装った。

バシール氏排除の原動力になった、不屈の分散型抗議運動であるスーダン抵抗委員会は、概してこの2人の軍事指導者を疑いの目で見ていた。それでも、国際社会は、唯一の現実的な方法と自らを納得させて、2人の軍事指導者との取引を選択した。スーダン軍とRSFは、スーダン人の生活のあらゆる面にがっちり組み込まれていた。特にダガロ氏は、ロシア人との鉱山開発計画などを通じて、私腹を肥やそうとした。欧米諸国は、変革につながった可能性のある、この処罰を受けない繰り返された行動に対する厳しい結果を回避して、逆に2人の軍事指導者に譲歩し、機嫌をとろうとした。

アル・ブルハン氏とダガロ氏のパートナーシップが最高潮に達した時期でも、武力で抵抗委員会を打ち砕くことはできなかった。

マリア・マアルーフ

2021年10月、米国の初代アフリカの角担当特使を務めていたジェフリー・フェルトマン氏とのその米外交官チームは、移行の取り決めに関して懸念になっていたアル・ブルハン氏とダガロ氏の主張に対処するために、一連の会議を開催した。両指導者と文民首相のアブダッラー・ハムドゥーク氏が参加した閉会セッションでは、米代表団が、緊張を緩和し、両指導者の懸念のいくつかに対処して民軍パートナーシップに勢いを取り戻すためのアイデアを提示した。両司令官とハムドゥーク氏は、米代表団が提案した計画に同意した。だが、その5時間後、両指導者は、自らが賛成した妥協案を米国が支持していたにもかかわらず、クーデターを起こし、ハムドゥーク氏と同氏首班の政府の首脳、それ以外にも数十人を逮捕した。

米チームは誠実に両司令官と協力しようとしたが、2人は行動でもって、それに報いるつもりがまったくないことを示した。

それ以来、何度も同じことが繰り返されてきた。軍とRSFの指導者は、約束をしては後でそれを破ってきた。直近では、国連、アフリカ連合、政府間開発機構が文民政府の樹立に向けた協議を推進してきた。

米国、英国、サウジアラビア、UAEのカルテットが枠組み合意を仲介した。この協議の過程で計画された4月初旬の文民政府樹立が、抵抗委員会の目に十分信頼に値するものと映ったかどうかは議論の余地がある。しかし、スーダン軍とRSFは交渉を断念し、お互いを攻撃することを決定したため、すべては過去の話になった。アル・ブルハン氏とダガロ氏は死闘を繰り広げているように見える。

驚異的なスピードで、地域の指導者たちは3カ国の首脳をハルツームに派遣することに合意した。これは、全面的な内戦に至った場合には周辺地域に影響が及ぶことを、スーダンの近隣諸国が理解していることを示している。アフリカ連合、国連、EU、米国がこの取り組みを支援すると予想される。きわめて重要な支援になるだろう。ただし、最近の暴力に責任がある指導者との協力を主張してきたために、国際社会が深く痛手を負ったことを考えると、地域が主導権を握る必要があるだろう。

2人の軍事指導者の権力共有を基盤とする停戦は安定しないだろうし、民主主義と文民統治を希求するスーダン国民を無視するのは容易ではない。アル・ブルハン氏とダガロ氏のパートナーシップが最高潮に達した時期でも、武力で抵抗委員会を打ち砕くことはできなかった。これまで、スーダン市民は、アル・ブルハン氏とダガロ氏が組んだ統一戦線に対峙してきた。この戦線が存続すると仮定して、民間人機構は、分断・破壊され、統治をしく能力や意欲が低下していると考えられる治安組織によりうまく対峙できるだろうと理解できる。この結末に至る可能性は低いかもしれないが、これが今般の身の毛のよだつ悲劇において見出すことのできる唯一の希望の光だ。

  • マリア・マアルーフ氏はレバノンのジャーナリスト、放送出演者、出版者、作家。リヨン大学で政治社会学の修士号を取得している。ツイッター: @bilarakib
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