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ウクライナ戦争はバイデン氏の大統領職の行方に重大な影響を及ぼす可能性がある

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08 May 2023 08:05:55 GMT9
08 May 2023 08:05:55 GMT9

先週発生したクレムリンへの攻撃以降、ウクライナとロシアの緊張が高まり、紛争は新たな段階に入った。状況は非常に複雑で、地域内外に大きな影響が及んでいる。米国はロシアが攻撃を偽装していると非難し、戦争の行方について懸念が高まっている。

レオン・パネッタ元CIA長官はCNNに対し、ロシアが攻撃を偽装した可能性があると述べ、これを受けてロシア政府は疑惑を否定し、ウクライナに責任があると主張した。

ドローン攻撃とされるものには、どちらの根拠もある。そのため、国際社会は、党派的な利害に基づく結論に飛びつくのではなく、批判的な視点をもって状況に対処する必要がある。この点で、米国は独立した調査を支持すべきだ。独立した調査は、状況を明らかにし、戦争終結の基礎を与える可能性がある。

ウクライナでロシアは米国製移動式ロケットシステムをより頻繁に阻止するようになっており、この紛争の重要な展開の一つになっている。この数カ月、そうした事案が増えている。この悩ましい傾向は紛争激化の徴候であり、緊張緩和に向けた国際社会の取り組みの必要性を浮き彫りにしている。

他方、ウクライナはこれらの脅威への対応として、防衛策を強化している。ウクライナのミコラ・オレシチュク空軍司令官は6日、キーウへの夜間攻撃に使用されたキンジャール型弾道ミサイルを撃墜したと報告した。これは、知られているものとしては初めてウクライナが米国のミサイル防衛システム・パトリオットを使用した事案だ。こうした対策はさらなる攻撃の抑止に資するかもしれないが、紛争の行方についての懸念を高めるものでもある。

紛争勃発以来、米政府はウクライナを明確に支持してきたが、状況の複雑さを認識することが不可欠である。バイデン政権は、この問題に対して均衡のとれた建設的なアプローチをとる必要がある。米国は、ウクライナとロシアの双方に対して、意味のある対話を行い、残忍な戦争の平和的解決を見出すよう促すべきだ。

世界的な大国である米国はこの地域に大きな影響力を有しており、その影響力を行使してすべての関係者に対話を促す必要がある。ジョー・バイデン米大統領は、危険な緊張状態の緩和に向けた決定的な役割を果たすべきだ。欧州の同盟国やより広範な国際社会と協力して、迅速な解決を促す必要がある。

現在行われている戦争は、米国とその同盟国に幅広い影響を及ぼしている。米国の利益を第一に据えた、確固たる積極的な外交政策の必要性を浮き彫りにしている。

米国は、現在欧州で行われているこの戦争からいくつかの重要な教訓を学んだ。第一に、バイデン氏が役割を果たした、オバマ政権の外交政策の弱点が白日の下にさらけ出された。その特徴は、海外での紛争への関与に尻込みするというものだった。シリアで「レッドライン」を設定しながら、その一線が越えられた際に軍事行動をとらないと決定したため、米国の同盟国に、重要な問題で毅然とした態度をとるのに後ろ向きだという明白なメッセージを送った。この決断力の欠如がロシアのウラジーミル・プーチン大統領を大胆にさせ、ロシアの影響力を東欧に拡大するチャンスだと判断させた。

第二に、この戦争は軍事同盟NATOの重要性と、米国がNATOへのコミットメントを維持する必要性を浮き彫りにした。この地域でロシアの攻撃性が高まる中、ロシアの侵略を抑止し、加盟国の主権を守るのにNATOは貢献してきた。

このことは、戦略的に重要な地域で安定を促し、侵略を防ぐために、強固な軍事同盟の維持が重要であることを明確に示している。

戦争の激化がバイデン氏と民主党に大きな政治責任としてのしかかってくる恐れがあるのは明らかだ。

ダリア・アル・アキディ

第三に、この紛争によって、エネルギー面での自立の必要性が前面に押し出された。特に東欧で、ロシアはエネルギー供給の支配を政治的威圧の道具として利用してきた。海外のエネルギー源への依存度を引き下げることにより、米国は、敵対的な政権が世界のエネルギー市場を操作し、同盟国の安全保障を損なう能力を制限できる。

最後に、この戦争は、強力な軍隊と多額の防衛費が必要であることを明確にした。ロシアは軍備を近代化しており、目的達成のために武力を行使することを厭わない。米国は、北朝鮮やその他の体制からも挑戦を受けている。そのため、米国は、軍がこれらの課題に対応するための装備を持ち、部隊が任務の遂行に必要なリソースを確保できるようにしなければならない。

究極の問題は、戦争終結に向けて米国は何をすべきかだ。

米国は、挑発的な軍事演習など、状況をさらに悪化させる行動をとらないよう注意する必要がある。この紛争が大きな人的犠牲を生んでいることを認識し、必要とする人に人道支援を届けるよう取り組むことも求められる。

米国は、ウクライナ・ロシア間の信頼醸成措置を促進すべきだ。これには、双方が国境地帯から軍隊を撤退させることなどの、軍事的緊張を緩和させる措置が含まれる可能性がある。米国は、ウクライナ・ロシア間の信頼構築と対話促進に資する、両国の経済協力を促すこともできるだろう。

究極的には、紛争解決の鍵は、ウクライナとロシアの双方が意味のある対話を行い、平和的な解決策を見出すことだ。米国は、こうした対話を促進し、双方にこのプロセスへの関与を促す建設的な役割を果たすことができる。ホワイトハウスには、状況の複雑さを認識し、すべての関係者の利益が考慮された均衡のとれたアプローチを進める取り組みも必要だ。

ウクライナでの戦争は、バイデン政権にとって大きな外交課題であり、2024年大統領選挙に大きな影響が及ぶ可能性がある。外交問題が米国の選挙に支配的影響を及ぼすことは通常は見られないが、議論を形成し、有権者の感情に影響を与える決定的な役割を果たすことがある。

特にウクライナでの紛争が激化し続けた場合、重要な争点になる可能性がある。バイデン大統領の支持者も反対者も、同氏の戦争処理を綿密に精査するだろう。バイデン氏がウクライナへの軍事援助を決定し、同国の主権と領土保全への支持を確約したことは、同氏の政治的同盟者の一部を含む、国際社会を構成する多くの人々から賞賛を受けている。だが、批判的立場の人たちは、同氏がこの地域でのロシアの侵略を抑止するために十分な措置をとってこなかったと主張している。

戦争の激化がバイデン氏と民主党に大きな政治責任としてのしかかってくる恐れがあるのは明らかだ。共和党は、この紛争を利用して、バイデン氏の外交政策の記録を批判し、ロシアに弱いと印象付けることができる。一部の共和党候補者は、この紛争を分断争点として利用し、国家安全保障や外交問題の優先度が高い有権者にアピールしようとする可能性もある。

  • ダリア・アル・アキディ氏は、安全保障政策センターのシニアフェロー。ツイッター: @DaliaAlAqidi
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