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G7サミットは西側同盟の復活を明示する

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15 May 2023 03:05:03 GMT9
15 May 2023 03:05:03 GMT9

今週のG7サミットに向け、西側の閣僚は、気候変動から世界経済まで幅広い問題について議論を進めてきた。しかし、5月19日から21日にかけて広島で取り上げられる最重要課題は、ウクライナ紛争と、それが及ぼし続けているさまざまな影響である。

ロシアによる侵攻が始まってまもなく500日だが、紛争が近く終結しそうな明白な兆しはない。先週9日にアントニオ・グテーレス国連事務総長がその事実を強調している。「現時点では和平交渉は不可能だと思います」「双方とも勝てると確信しています」「今のところ、ロシアが占領している地域から撤退するとは思えませんし、ウクライナ側も領土の奪還を望んでいるようです」

したがって、紛争の結末は依然としてまったく不確実である。 それよりも明らかなのは、紛争によって過去1年半の間にG7を含む西側諸国を奮い立たせる効果がもたらされたことだ。

ジョー・バイデン大統領は多くの批判を受け続けているが、その政権は、大西洋をまたぐさらに広い西側同盟の再建と回復に貢献し、また、今最も国際協力が緊急に必要とされている分野を浮き彫りにしてきた。

政治的、経済的勢力としてのG7の復活は、ドナルド・トランプ大統領任期中の苦難、また2007~08年の金融危機後のリーダーシップフォーラムとなったG20の初期の成功を経た後だけに、驚きを持って迎えられた。

実際、一時期はG7が消滅するのではないかとも言われていた。その理由の一端は、世界経済におけるG7のシェアの低下だ。1970年代、西側クラブのメンバーは世界の国内総生産の約80%を担っていたが、その数字は現在30%に近づいている。

しかし、2023年に早送りしてみると、ロシアのウクライナ侵攻に対して西側諸国が予想外に一致して対応したことで、G7は自信を新たにした。確かに、特にウクライナに起因する何らかの「障害」が生じた場合には、それはまだ解体されない可能性がある。

そのひとつは、エネルギー価格高騰の再来かもしれない。例えば、先週の9日、ゴールドマン・サックスは、この冬ヨーロッパ全土でガス価格がほぼ3倍になるとの予測を出した。現在はメガワット時当たり36ユーロだが、今年下半期には100ユーロ(108ドル)を超える可能性があるとしている。

しかし、少なくとも現時点では、2017年から2021年にかけて支配的であった、西側の永続的な目的は不確かだというナラティブ(一部のアナリストは「消える西側」と呼んだ)の流れが逆転しているのだ。

また、G7の加盟国には、1970年代のように世界の優勢な経済圏がすべて含まれているわけではないが、依然として大きな経済力を維持しており、その加盟国が2012年から2022年までの世界のGDP成長の15%近くを占めていることも忘れてはならない。

もちろん、西側諸国の将来に関する課題は、トランプ大統領以前から存在している。さらに、2016年の英国のEU離脱是非を問う国民投票で示されたように、主要な西側同盟の問題を浮き彫りにしたのはトランプだけではない。

今必要なのは、NATOG7のようなフォーラムが積極的になり、複数年にわたって対話を行うことである。

アンドリュー・ハモンド

しかし、トランプ大統領の就任によって西側諸国の将来に対する懸念が強まったことに疑いの余地はない。以来、大西洋をまたぐパートナー間で、新たに展開する大国間競争の時代に対応した戦略を策定しなければならないという危機感が高まっているのはそのためだ。

だが、世界の政治や経済をリードする西側諸国の復活は、現在でもまだ完全とは言い難い。ロシアだけでなく中国に起因する共通の問題に対して西側諸国が結束するというバイデンの目標を達成するためには、まだ実行すべきことが多くある。

必要な動きとして挙げられるのは、EU、カナダ、日本を含むすべての主要国が、古いリベラルな秩序を以前と全く同じ形で取り戻すことは不可能かもしれないと認識することである。その秩序は多くの人にとって望ましいかもしれないが、特に西側社会の人口のかなりの部分がトランプ氏のようなポピュリストの指導者を支持し続けていることを考えると、古いルールに基づいた国際秩序の完全なモザイクへの回帰が現実味に欠けるのは今や明らかである。

それゆえ、バイデン氏の任期は、こうした問題に取り組む絶好の機会である。また、西側主導の新たなグローバル・ガバナンスのあり方を模索するときでもある。

これらの目標を実現するための前提条件は、西側諸国が直面する大きな戦略的問題に集中することだ。現在、そのリストのトップを占めるのはウクライナだが、それ以外にも数多い。

一例は、世界貿易機関の創設から四半世紀以上を経た国際貿易の未来である。このシステムには軋みが生じていて、近年世界中で行われている制裁措置の負担で崩壊する可能性がある。

この問題やその他の重要な課題に対処するには、より多くの西側諸国とその同盟国が、軍事的な問題だけでなく、経済的な問題にも共に取り組んだほうが効果的であることに同意すべきだ。今必要なのは、NATOやG7のようなフォーラムが、不完全ではあるものの、共通の価値観を持った志を同じくする強力な民主主義国の組織として、積極的に複数年にわたって対話をすることである。

いつまで経っても特に変わらないという懐疑的な見解もあるだろう。しかし、それは悲観的すぎるかもしれない。

ロシアのウクライナ侵攻を受けて地政学的、経済的に危機にある今、バイデンが来年の選挙で2期目の当選を果たせば、2023年と2024年は新たな西側諸国の基礎を築く決定的な年になる可能性はある。

  • アンドリュー・ハモンド氏はロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのLSE IDEASのアソシエイトである。
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