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子供たちを猛暑から守らなければならない

住宅に囲まれた庭で噴水の中に入って涼む子供たち。ジョージアの首都トビリシ。(AFP)
住宅に囲まれた庭で噴水の中に入って涼む子供たち。ジョージアの首都トビリシ。(AFP)
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13 Aug 2023 08:08:23 GMT9
13 Aug 2023 08:08:23 GMT9

今年の7月は世界的に観測史上最も暑い月となった。メディア上には、過酷でかつてなく長く強烈な熱波によってまた新たな記録を打ち立てた猛暑の夏に、世界中の人間、動物、自然がいかに耐えているかという話が溢れている。

こういった前例のない気候の短期的・長期的影響に関する研究のほとんどはまだ初期段階であり、その理解はまだ途上にあるが、既にいくつかのパターンが浮かび上がってきている。

優先的課題としてできる限り深く広く研究される必要がある側面の一つは、極度の暑さへの長期的曝露が若者、特に18歳未満の子供に与える影響だ。このような暑さは発達に深刻な影響を与えると考えられているが、過酷な気候条件がもたらすダメージの全容は数十年経っても十分に理解されない、あるいは知られることさえないかもしれない。こういった影響の一部は大人になって長い時間が経ってから現れる可能性が高いためだ。

既にいくつかの研究が、熱波が若者に与える深刻な影響について懸念を示している。そのうちの一つの研究結果が先週ユニセフによって公開されたが、それによると、南アジアでは18歳未満の子供の76%(約4億6000万人)が長期間にわたって極度の高温に晒されていることが分かった。気温が摂氏35度を超える日が毎年83日以上記録されているという。

南アジアは地球温暖化の影響が最も顕著な地域の一つであるため、極度の暑さに晒されている子供の割合は世界平均の32%(2020年のデータによる)を大幅に上回っている。

長期間にわたって高温に晒される子供たちが多いもう一つの地域はもちろん、中東・北アフリカ(MENA)である。

ある研究の予測によると、熱波が強度を増すことで、2060年までには1億人以上がその影響を受けるようになり、2100年までにはMENA地域の人口の約半数(17歳未満の子供2億500万人、15~24歳の青少年1億800万人を含む)が年間を通して高温に晒される非常に現実的なリスクに直面するという。

それだけではなく、耐え難い暑さとなる年間日数の増加も予測されている。特に、人口密度が既に高く、MENA地域の人口増加の大半を占めると予測される地域においてそれが顕著になるという。沿岸地域や、アンマン、アデン、バグダッドなどの人口増加中の主要都市、それにイラン南部、イラク、サウジアラビア、アルジェリアの都市などだ。

しかし、子供たちが極度の暑さのリスクに最も晒されているのは、南アジアやMENA地域の一部のような最も貧しい人口密度が高い地域だけではない。北米や欧州の最も発展した富裕国も安全ではないのだ。

学校でエアコンなどの冷房機器の使用を増やすことで、暑さをある程度和らげ、学習への悪影響を低減することができる。

ランビル・S・ナヤール

富裕国であろうと貧困国であろうと、子供たちは親たちや祖父母たちの行動がもたらす結果に苦しむことになる。研究が示唆するところでは、ますます酷くなる熱波は子供の健康だけでなく、成長や生理的・心理的・精神的・感情的発達に甚大な悪影響を与えるという。

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によると、熱波に多く晒された子供ほど、慢性呼吸器疾患、喘息、心血管疾患などの健康問題を経験する確率が高い。特に、暑い地域では砂塵嵐の頻度と強度が増すと、子供たちの微小粒子への曝露や急性気道感染症のリスクが高まるという。子供たちの教育や将来のキャリアにも悪影響が及ぶとCDCは指摘している。

子供たちは生まれる前から影響を受けることさえあり得る。出生前に砂塵嵐に晒されることで出生時体重の低下、妊娠期間の短縮、乳児死亡率の上昇などが起こる可能性があるからだ。

強烈な暑さの結果として子供たちが直面する困難は、世界の二酸化炭素排出量を減らすための具体的な対策がなされるまで、何十年も続く可能性が高い。特に、最も排出量の多い発展途上国と比較しても1人あたり数倍の二酸化炭素を排出し続けている富裕国において、そのような対策が不可欠である。

しかし、当面のリスクの少なくとも一部を低減するための方法はたくさんある。例えば、学校でエアコンなどの冷房機器の使用を増やすことで、暑さをある程度和らげ、学習への悪影響を低減することができる。野外における日光や砂塵への長時間の曝露から子供たちを守るための取り組みも有効だろう。

これらは比較的容易な対策であり、極めてローカルなレベルで実施できるものだ。

しかし、圧倒的な数の深刻な影響に対処しようとするなら、全ての国と大企業による協調的でグローバルな行動が不可欠だ。ただ、そのような行動は今のところ、世界レベルではおろか地域レベルでさえ協調的であるとは言えない。

そのうえ、熱波の差し迫った影響を軽減するための短期的な対策にせよ、地球温暖化を遅延あるいは逆行させるために必要とされる長期的な行動にせよ、多額の資金が必要である。

エアコンの供給を増やしたり、医療施設を追加で建設したり、栄養改善を推奨したり、清潔で安全な飲料水へのアクセスを確保したり、などなどのプロジェクトには多額の資金が必要だが、貧困国にそのような金がないことは明らかだ。

しかし富裕国は、長年の約束や新たな誓約にもかかわらず、気候変動が貧困国に与える影響を軽減するために年間1000億ドル以上を提供するという長年の約束を守ることに明らかに乗り気でない。

富裕国はそのうえ、発展途上国が自国の二酸化炭素排出量を削減して地球温暖化を食い止めることに少しでも貢献するうえで役に立つ技術の共有に関しても決して寛大ではない。

子供の問題に取り組んでいる政府機関や非政府組織も、熱波が子供に与える影響についてより長期的な研究を実施し、将来の世代が直面するリスクを最小化するための解決策を見出す必要がある。

  • ランビル・S・ナヤール氏はメディア・インディア・グループの編集長。
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