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識字率100%目前のサウジアラビア、後塵を拝するイラン

国民が重要で不可欠な存在であると信じている政府にとって、人的資本への投資は最優先にすべきことである(AFP)
国民が重要で不可欠な存在であると信じている政府にとって、人的資本への投資は最優先にすべきことである(AFP)
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05 Sep 2023 03:09:04 GMT9

社会経済や国家の進歩のためには、国民が重要で不可欠な存在であると信じている政府にとって、人的資本への投資は最優先にすべきことである。若者は特に、国家の進歩において極めて重要な歯車である。

この重要性を認識している各国政府は、人材能力を開発し、形成するために利用可能なあらゆる資源を活用し、有能な幹部を育成し、教育機関を通じて、国家発展の追求において貢献してくれる有能な若者の養成に懸命に取り組んでいる。そこで、多くの国が、男女を問わず、子供が確実に教育を受けられるように、厳格な法令を制定している。加えて、教育を受けることができているか手厚く継続的に追跡調査を行い、学校から中退していないか監視し、識字率100%を達成するためにあらゆる手段を講じている。一部の国ではさらに進んで、現代テクノロジーの最たるものである、コンピューター情報テクノロジーを抵抗なく扱える国民の割合を増やすなど、特定の地域において識字率100%を達成することに重点を置いている。

私はここ数年かけて、この地域、特に湾岸諸国の非識字の状況を追いかけてきた。その結果、60年以上前には非識字の状況が蔓延し苦しんでいたアラビア湾岸の6カ国が、今や先駆者となり、あらゆる教育レベルで著しく進歩していることがわかった。これらの国は非識字の状況を撲滅し、さらに識字率100%を達成するために、広範なプログラムも設計している。

たとえば、サウジアラビアの非識字率は、1972年には60%あったが、最新の統計では2021年末までに3.7%まで低下していた。ちなみに2013年の非識字率は、男女とも含む全年齢層で6.81%だった。つまり、8年間で非識字率が半減したことがわかる。サウジビジョン2030によると、非識字者の最大層である高齢者を対象とした複数のプログラムを通じて、2030年までに非識字率0%を達成することが期待されている。これに加えて、これらの層に対する教育プロセスを促進するためにあらゆる手段を提供し、優秀な者には報酬を与えている。

これまでの実績が、あらゆるレベルでの教育におけるサウジアラビア政府の方針を明確に示している

モハメド・アル・スラミ博士

就学率が99%に達していること、そして、子供が教育過程に参加し、定期的に授業に出席するのを妨げる者を規制する法令が存在し、厳しい罰則が設けられていることは注目に値する。

これまでの実績が、あらゆるレベルでの教育や学習におけるサウジアラビア政府の方針を明確に示しており、さらに、他のあらゆる国際指標においても、サウジの進歩の度合いを物語っている。

イランでは反対に、非識字者が指数関数的に増加しており、世界で見られる状況とは逆の方向に向かっている。先日、イランのユセフ・ヌーリ元教育相は、イランには全く読み書きできない人が900万人いると述べた。ヌーリ氏はまた、初等教育の3段階で中途退学した子供の数が97万人に達したこと、そしてイランにおける完全非識字者が人口の10%を占めていると指摘した。驚異的な数字である。

ペルシャ語のラジオ・ファルダによると、ヌーリ氏が地元の教育テレビ番組に出演中、次のように語った。「この集計には6歳以上の非識字者の数も含まれています。彼らは完全な非識字者です。どのように読み書きするのか知りません。そして、今年もイランの非識字率の統計に変化は見られないと思います」

ヌーリ氏はまた、イランと他の国とでは、教育の対象者となる層が異なることを指摘した。同氏は「現在、イランでは6歳から49歳までの人々が教育を受けていますが、世界では一生涯、その人は教育の対象となります」と述べた。これは、イランには非識字者が存在し、増加しているにもかかわらず、イラン政権が50歳以上の非識字者の撲滅を完全にやめてしまったことを意味する。

イランでは、非識字者が指数関数的に増加しており、世界で見られる状況とは逆の方向に向かっている

モハメド・アル・スラミ博士

イラン議会の研究センターは2019年、イランにおける完全非識字者数が900万人に近づいていると発表した。しかし世界銀行は同年、イランの非識字者数は1160万人で、総人口の15%を占めると推定している。非識字と闘うイランの姿勢が消極的で不十分であることを示す一例として、国民の識字率は1996年に79.5%に達していたが、20年後の2021年は88.7%に留まった。

つまり、25年という時間をかけて非識字と闘ったが、進展は著しく遅く、2006年のように前年と比べて識字率が低下した年もある。マウジ通信の公式発表によると、首都テヘランの非識字率は6%である。シスタン・バルチスタン、クゼスタン、西アゼルバイジャン、ロレスターン、ホルモズガーンの非識字率はもっと高い。

非識字に加えて、中途退学の数も関連している。公式統計によると、イランにおける2021/2022年度の中途退学者総数は911,272人で、前年度より26%増加した。中等学校の中途退学者数は、2015年の6万人から2022年の15万4千人へと増加した。

イランでは現在、非識字者が減らない、中途退学者が増えているという現実に加えて、児童労働が急増している。公式の報告によると、国内に12万人の児童労働者がおり、そのうち7万人が首都テヘランで働いている。イラン国家福祉機関が3月中旬に発表した報告書によると、最大1万4500人の子供がホームレスで路上生活をしている。イランでは「cartonkhab」の子供として知られている存在だ。

国連教育科学文化機関(UNESCO)の報告書によると、イラン人の15歳から24歳の約2%が「完全に読み書きできない」、そして65歳以上の63%もまた、読み書きができない。この結果、国連児童基金(UNICEF)統計センターは、2021年時点で子供にとって最悪の国の一つにイランを挙げた。イランより悪い国はイエメンとアフガニスタンだけで、イラク、シリア、パレスチナはイランほど悪くなかった。

結論として、イランが本当に戦略的な変革(革命の段階から独立国家への移行を意味する)を進めて、開発や人的資本への投資にもっと力を注げば、この地域の国々の進歩に追いつくことができるだろう。イラン政府もまた、世界的な指標におけるランキングで上位を占めることもできるだろう。さもないと、同じ問題の再検討を続けることになるだろう。イラン政権は、この事態の悪化を防ぐためにほとんど何もしておらず、問題を検討してもその度に、よくない数字がさらに大幅に悪化することになるだろう。

  • モハメド・アル・スラミ博士は、国際イラン研究所(ラサナ)の創設者兼所長である。Twitter:@mohalsulami
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