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フーシ派にIRGCおよびヒズボラとの有機的なつながり判明

2019年9月21日、イエメン・サヌアのフーシ派民兵。(AP写真)
2019年9月21日、イエメン・サヌアのフーシ派民兵。(AP写真)
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03 Nov 2022 01:11:38 GMT9

米国のウェストポイント陸軍士官学校のテロ対策センターは先月、フーシ派とイランのイスラム革命防衛隊(IRGC)およびレバノンのヒズボラとのつながりに関する重要な研究結果を発表した。ヒズボラは既にほとんどの国からテロ組織として指定されているため、IRGCとフーシ派をテロ組織に指定しようと考える国は増えている。この研究は、3つのグループがいかに緊密に連携し、中東全域で戦争を引き起こし、暴力を煽ることによってイエメン、同地域、世界を抑え込んできたかを明らかにしており、こうした決定を下す上で役立つはずである。

ドイツのアナレナ・バーボック外相は30日日曜日に、ドイツとEUは「IRGCをテロ組織としてリストアップする方法」を検討していると述べ、別の制裁パッケージを開始するとの前週の発言を繰り返した。IRGCは、過去8週間において数百人の市民が死亡したイランでの抗議デモの弾圧に関与しており、イエメンをはじめとした地域全体でも活動している。

「フーシ派ジハード評議会:『もうひとつのヒズボラ』における指揮統制」と題された70ページに及ぶ綿密な研究は、3つの組織の有機的な結びつきに疑いの余地を与えず、その協力関係の強化に警鐘を鳴らしている。同研究はフーシ派がいかに「IRGCとレバノンのヒズボラの軍事・治安システムと極めてそっくりなクローンであり、バスィージ型の動員・内部治安システムの誕生」に向かっているかを実証している。「南部ヒズボラ」が出現するリスクは、現地においてほぼ間違いないと著者らは結論付けている。

10月2日に期限切れとなった停戦の更新を拒否することで、フーシ派はイエメンにおける交渉での解決や恒久的な停戦に向けた前進を止めることに成功した。フーシ派は先月にはイエメンに進出している石油会社を攻撃すると脅迫し、その後、アラビア海の政府管理下のムカラ港付近の石油輸送施設を攻撃した。そのため、フーシ派はイエメンの安定と地域の安全保障に対する脅威であり続けている。紅海の航路の安定性や国際的なエネルギー供給の安全性も、フーシ派の脅威によって危機に瀕している。

著者らは、フーシ派がIRGCとヒズボラからの10年を超える支援を受けて、いかにして異質で分散したまとまりのない集団から「全体主義的な考え方」を持つ中央集権的で団結した組織に姿を変え、暴力と抑圧をもって北部部族を支配し、イエメン支配のためのフーシ派の戦いに北部部族を巻き込んだかを詳細に示している。

同研究では、ヒズボラによるレバノン政局の乗っ取りと2014年のフーシ派のクーデターの間に類似点を見出し、軍事戦略に関する両グループのやりとりが一部文書化されていることも示している。

また同研究では、2007年の第4次サアダ戦争から現在に至るまで、フーシ派が戦場で有効な戦力となった時期に、IRGCのクドス部隊とヒズボラの役割が大きくなっていることも示されている。フーシ派の司令官たちは、IRGCとヒズボラの政治・軍事モデルを大いに利用した。例えば、フーシ派のジハード評議会はヒズボラのテンプレートに従って組織されている。フーシ派の軍事戦略の有機的な一部となってしまった「ジハードの助手」の任命は、イラクのテロ集団カタイブ・ヒズボラと同じメンタリング・モデルを採用し、コッズ部隊の手口を踏襲したものである。

フーシ派は、IRGCやヒズボラと同じように、トップレベルの指揮統制体制、予防的安全保障体制、情報作戦、訓練、秘密調達、軍事産業化、ドローン部隊およびミサイル部隊、海上ゲリラ戦など、多くの特徴を取り入れている。

また著者らは、フーシ派の意思決定に対するIRGCとヒズボラの政治的影響力を研究し、IRGCとヒズボラ2つの外部グループとフーシ派指導者の間の「思想と目標の一致」が非常に密接であるため、強制や圧力を必要とせずにフーシ派の意思決定に容易に影響を及ぼせると結論づけている。こうした関係は、単なる必要性に駆られたものでも、イエメン戦争によって意図しないレベルにまで高められたものでもなく、目標とイデオロギーの共通性に基づいて、当初から極めて意図的に選択された関係であったといえる。

その関係は「極めて強固で安定している」と著者らは述べている。イランはフーシ派を重要な戦力と考えており、コッズ部隊の主要な地域作戦部門として機能するヒズボラの発展しつつあるクローンだと考えている。イランは、イラクの同様のイラン系民兵よりも「能力が高く、結束力があり、規律正しい」と考えて、フーシ派を高く評価しているようである。同様に、ヒズボラもフーシ派をイラクの民兵よりも好んでいる。

もし事実がそれほど明確で信頼に足る証拠があるなら、なぜフーシ派の支持者たちにフーシ派・IRGC間とフーシ派・ヒズボラ間の有機的関係が広く知られていないのだろうか。その答えは、グループの指導者たちがその人脈の広さを隠したいという思いから、人脈を厳格に秘匿しているからである。こうした人脈は、指導者のアブドルマリク・アル・フーシ氏と、非常に親しい顧問から成り立つジハード評議会を通じてのみ用いられる。フーシ派の指導者たちは、風評上の理由から、また二重忠誠に対する非難から身を守るため、こうしたつながりについてできるだけ長く「一見もっともらしい反証」をし続けることに関心がある。しかし、そのうわべだけの自立も限界になりつつある。

著者らは、イランがフーシ派指導者との間に「十分な友好関係と信用」を築き、フーシ派に新たな負担や困難を負わせるような方法で、イランの利益のためにフーシ派を選択的に呼び出せるようになった可能性が高いとみている。フーシ派とイランの関係をめぐる緊密な秘密主義と「中央集権的な全体主義」の構造は、直接的なイランの指示によるフーシ派の戦略的・戦術的決定を隠すために利用されてきた。

フーシ派とイランの関係は代理人関係ではないとする意見もあるが、著者らはそのレッテルにかかわらず、フーシ派とイランの関係を「緊密なイデオロギー的親和性と地政学的な連携に支えられた強固で深く根付いた同盟」であると主張している。イランやIRGCとの代理人的なつながりを否定しないフーシ派・ヒズボラ間の直接的なつながりについて特に考慮すれば、似たようなものである。

こうした関係は、目的やイデオロギーの共通性に基づき、当初から極めて意図的に選択された関係であった。

アブデル・アジーズ・アルワイシェグ博士

また、アブドルマリク・アル・フーシ氏のようなイランやヒズボラと密接な関係を持つフーシ派の主要な支持者が姿を消したとしても、現在では 「このような有益で友好的な関係を継続させる考えを持ちやすくさせるような思想的・政治的生い立ちを持った幅広い層の指導者たちが存在する」と著者らは主張している。

このタイムリーな研究により、フーシ派をテロ集団として指定する上で必要な判断を下すのは容易になるはずだ。今年1月、国連安全保障理事会は、「2022年1月17日にアラブ首長国連邦のアブダビで、またサウジアラビアの他の場所において、フーシ派が主張し実行した凶悪なテロ攻撃を最も強い言葉で」非難すると述べた。2月の国連安保理決議第2624号では、フーシ派を「テロ集団」と表現している。この決議は、国連憲章第7章に基づき採択されたもので、すべての国家に対して法的拘束力があるものである。したがって、一部の国や国際機関が、この情報や国連安全保障理事会の委任統治に基づいて、フーシ派に対して適切な行動をとることを未だに困難または不都合だと考えているのは驚くべきことである。

  • アブデル・アジーズ・アルワイシェグ博士はGCC政治・交渉担当事務次長で、アラブニュースのコラムニスト。本記事で述べられている見解は個人的なものであり、必ずしもGCCの見解を代表するものではない。Twitter: @abuhamad1
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