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ガザ紛争の陰で影響力拡大を狙うイラン

イスラム革命防衛隊のミサイル攻撃を受け、民間防衛チームが捜索・救助活動を実施。2024年1月17日 (AFP)
イスラム革命防衛隊のミサイル攻撃を受け、民間防衛チームが捜索・救助活動を実施。2024年1月17日 (AFP)
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19 Jan 2024 11:01:54 GMT9

イスラエルによるガザ攻撃の初期に表明された、紛争が拡大するのではないかという懸念の多くは、今や現実のものとなっている。特にイランは、近隣諸国などへの攻撃を繰り返している。いわゆる「アラブの春」では、イランはアラブ諸国での平和的な抗議行動を利用し、時には扇動し、影響力を拡大することにかなり成功したが、その時代に我々が目撃したようなパターンが生まれつつある。こうした行動は、イランが最近表明した外交および近隣諸国との紛争の平和的解決へのコミットメントと矛盾するものである。

イランは、パキスタン、イラク、シリア、ヨルダンなどで代理勢力や関連組織を利用して、攻撃や威嚇を繰り返しながらその勢力圏を拡大している。これらの攻撃の一部は、イスラエルの攻撃に対する限定的かつ直接的な反応と見ることもできるが、その多くは無関係である。

例えば15日、イランのイスラム革命防衛隊は声明で、イラクのクルド地域にある「モサドの拠点」へのミサイル攻撃を開始したと発表した。しかし、クルド地域政府の治安評議会はその主張を否定した。同評議会は、イラクのクルド地域当局の所在地であるアルビルで家屋が攻撃され、民間人4人が死亡、6人が負傷したと述べている。

イラクのフアード・フセイン外相も、攻撃された標的はモサドに関連したものだというイランの主張を否定し、イランがアルビルを攻撃したのは、イスラエルと直接対決できなかったからだと述べた。フセイン氏は、イランの部隊はレバノンとシリアに存在し、イスラエルとの国境にごく近く、イラン領内から長距離ミサイルでイスラエルを攻撃することも可能だが、代わりにアルビルを攻撃することを選んだと述べた。

同日、イランはアレッポに弾道ミサイルを発射し、テロリストグループを標的にしたと主張したが、標的の種類に関して独立系情報源からの裏付けはなかった。ヨルダンではここ数週間、イランが支援する民兵組織とみられる勢力と、関係する麻薬密売組織が大胆な武力攻撃を行い、ヨルダンはシリアの潜伏場所への報復爆撃を行った。

これらの攻撃の一部は、イスラエルの攻撃に対する限定的かつ直接的な反応と見ることもできるが、その多くは無関係である

アブデル・アジズ・アルワイシェグ博士

16日、イランはパキスタンのテロ容疑者に対してミサイルとドローンによる攻撃を開始したと発表した。しかし、パキスタンはその主張を否定し、バローチスターンの小さな村で子供2人が死亡、さらに3人が負傷したと報じた。

報復として、パキスタンは駐イラン大使を召還し、イラン特命全権公使の帰国を阻止した。18日には、イラン国内の「分離主義武装勢力の隠れ家」とされる場所へ報復攻撃を行った。

イランはパキスタンと900キロに及ぶ国境を接し、正常な関係を享受している。イランは、パキスタンの村民をその領内で攻撃する代わりに、外交チャンネルを使って懸念を表明することもできたはずだ。イランのエスカレートは、パキスタンに深刻な懸念を抱かせたようだ。これまでの軍事的・外交的措置に加え、ダボスで開催されている世界経済フォーラムに出席中のパキスタンのアンワール・ウルハク・カカール暫定首相と、ウガンダを訪問中のジャリル・アッバス・ジラニ暫定外相は、外遊を切り上げて帰国する予定だ。

一方米国は、紅海で進行中の商船に対する作戦の計画にイランが「深く関与」しているとの見方を示した。この海域で展開する米軍やその他国際部隊は、つい先週のミサイルも含め、兵器がイランからフーシ派に提供されるところを何度も阻止している。

10月、フーシ派はイスラエルによるガザ攻撃に対抗して、ミサイルとドローンによる攻撃を開始したが、その後、紅海でイスラエル行きと思われる船舶を標的にし始めた。フーシ派が表明している目的はガザでの紛争を止めることだが、彼らの行動がガザの状況に影響を与えたという証拠はほとんどない。そして、少なくとも11月19日以降、民兵組織はイスラエルとは必ずしも関係のない他の船舶にまで標的を広げている。

さらに遠方に関しては、イランのメディアによると、12月下旬にイスラム革命防衛隊の司令官が、地中海は「封鎖される可能性がある」と述べたものの、イランは地中海には直接アクセスできないため、それがどのように起こるかについては言及しなかった。半公式メディアのタスニム通信によると、イスラム革命防衛隊「調整司令官」モハマド・レザ・ナクディ准将が、「地中海、ジブラルタル(海峡)、その他の水域は遠からず封鎖されるだろう」と述べたとされる。その当時、イランと連携するイエメンのフーシ派が紅海を航行する商船への攻撃を開始し、一部の海運会社は航路変更を余儀なくされていた。

ナクディ准将は、「新たな抵抗勢力の誕生とその他水域の封鎖」について語り、「昨日は」アラビア湾とホルムズ海峡が「彼らにとって悪夢」となり、「今日は、彼らは紅海に封じ込められている」、と付け加えた。

これらの攻撃や脅迫の多くは、ガザの壊滅的な紛争に乗じたものだ。紛争は現在4か月目に入り、公式な死者数は24,000人を超え、その苦しみと破壊は、ガザが過去に経験したいかなるものをも凌駕している。

その主な要因は、国連安全保障理事会が国際法を順守させ、戦争を止め、十分な人道支援を提供することに失敗したことである。イスラエルが、米国、英国、ドイツといった大国の支援や黙認のもと、国際法のルールを平気で破ることが許されれば、他の国も同じことをしようと試みるだろう。

結果として、ガザに対するイスラエルのむき出しの攻撃が続けば続くほど、他の国や武装集団も国際法を無視して自らの影響力を拡大し、復讐に走り、その過程で地域をさらに不安定化させる可能性が高まる。

同様に、2015年の国連安保理決議第2216号でフーシ派に課された武器禁輸措置の緩い執行が、今日のような攻撃能力の増強を可能にし、航行の自由の侵害を許している。

従って、国際交戦規定と国際法執行に対する信頼や尊重の回復が切に求められている。米国は、特に選挙期間中は、イスラエルに対する型通りの支持という伝統的な政策に囚われているように見えるが、規模を問わず他の大国も一歩踏み出す必要がある。南アフリカは紛争の停止や説明責任の遂行を求め、初めはヨルダン川西岸地区でのイスラエルの軍事行動に関して、そして現在はガザでの攻撃に関して、国際司法裁判所でイスラエルに対する法的措置を取ることでその役割を果たしている。

  • アブデル・アジズ・アルワイシェグ博士は湾岸協力会議の政治問題・交渉担当事務次長補である。この記事に記載されている見解は個人的なものであり、必ずしも湾岸協力会議の見解を示すものではない。X: @abuhamad1
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