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新たな石油価格戦争はバレル当たりわずか数ドルのところにある

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26 May 2020 12:05:09 GMT9
26 May 2020 12:05:09 GMT9

石油市場はこの1カ月で著しい回復を見せている。サウジアラビアとロシアによる歴史的な減産が効果を見せ、米国シェール業界が生産を縮小し始めて以降、原油価格は約70%上昇しており、バレル当たりの最低価格は30ドル、トレーディングレンジは35ドル前後で確立されてきたようだ。

国家予算を原油収入に頼っている産出諸国にとっては到底十分な価格ではないものの、「ブラックマンデー」の修羅場後としては正しい方向へ向かう一歩と言える。これは、世界的な経済封鎖による歴史上最も厳しい需要破壊の中にあってさえ、石油市場は少なくともある程度は供給側が制御し得ることを示している。

この回復は主に、中国、日本、韓国というエネルギー大量消費の東アジア経済諸国が予想以上に経済活動を素早く再開しつつある兆候を見せたこと、そしてまた、「タンクトップ」と呼ばれる世界的な貯蔵能力の崩壊は起こらないとの認識とによるものであった。

オクラホマ州クッシング市の大貯蔵施設は容量突破の深刻なリスクを冒さずに済み、高額な浮体式貯蔵の需要は減少している。

新型コロナの深刻な第二波や米中貿易関係の完全決裂のような事態悪化を招く大きな可能性は以前としてあるものの、それらを除けば、1カ月前に当然視されていたほど原油価格の見通しは悪くない。専門家たちは、今年は平均35ドル前後、そして2021年はおそらく50ドル以上と予測している。

多くは、サウジアラビアとロシアが主導するOPECプラスの取り決めにかかっている。これは来月のOPEC会議の議題となり、加盟諸国は減産レベルを23%から18%へと減らすか否かを決定することになる。加盟諸国の間では23%レベルを延長すべきとの声がかなりある。サウジアラビアは既にそれ以上のレベル、1日当たり追加で100万バレルの減産を果たしており、他の湾岸生産諸国による裏付けを得ている。その他にもOPEC諸問題の重要な不確定要素としては、減産への準拠レベルという問題がある。ロシアは長らく地質学的・気候的な理由から石油事業の大規模な削減は不可能としてきたが、それらの課題を回避する方法を見つけたようだ。

イラク、ナイジェリア、リビアは財政状況が切迫していることから、OPECプラスの取り決めを正確に遵守するのは難しく、おそらく価格が安定している間はできる限りの量を売りたいとの誘惑に駆られることだろう。

しかし、見極めが最も難しいのが米国のシェールオイルだ。都市封鎖、掘削リグの稼働数削減、失業、倒産など、すべてにおいて先月は過酷な状況を示しており、特にシェール業界の中心地であるテキサス州では、ウェスト・テキサス・インターミディエイトが底値となった。

価格の上昇は経済を再び変化させている。30ドルという価格で生存できるシェール業者の数は多くはないが、それでも価格が徐々に上昇するにつれ再び採掘を検討し始める業者も出てくるだろう。40ドルを超えれば、シェールオイルの生産が再び急増する可能性がある。

これが世界の石油業界の取り組みに問題を投げかけることになる。もし米国が再び世界に大量の石油を供給すれば、サウジアラビアにとって、市場を変化させるための減産を続けていくことに全く意味がなくなる。この減産は収入損失でいえば莫大な犠牲が強いられているのだ。サウジアラビアは再び生産量を全開にし、市場のシェア争いが復活することになるだろう。

我々はまだ決してその状況にあるわけではない。多くはドナルド・トランプ政権が、議会を通すのに苦心している巨額のパンデミック支援パッケージの支援リストに石油産業を加えるかどうかにかかっている。民主党はその考えを気に入ってはいないが、しかし大統領選の年でもあり、国際石油資本から環境問題の譲歩約束を取り付けることができれば、彼らが説得されることもあるかも知れない。

パンデミック対策方針において石油業界は満足しつつある現在ではあるが、新たな石油価格戦争は、バレル当たりあとわずか数ドルで起こる可能性があるのだと認識する必要がある。

  • フランク・ケイン氏は受賞経歴をもつビジネスジャーナリストであり、ドバイを拠点としている。ツイッター:@frankkanedubai
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