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アングロスフィア、ファーウェイに関して反中姿勢で団結

英国・レディングにあるファーウェイのオフィス。(ロイター)
英国・レディングにあるファーウェイのオフィス。(ロイター)
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11 Jul 2020 08:07:25 GMT9
11 Jul 2020 08:07:25 GMT9

アングロスフィアは現在の大国の中でもずば抜けて奇妙な存在だが、今回もやはりそれが浮き彫りになった。これらの旧大英帝国の主要な英語圏は中国、米国、日本、インド等と違って国ではなく、EUほど近接もしていない。しかし、この不均質にもかかわらず、アングロスフィアは我々の新しい時代においてそれ自体で大国とみなしてよいほどの一貫性がある。

なぜなら、実際的な政策の面では、米国、英国、オーストラリア、ニュージーランド、カナダが行動を一にすることが非常に多いからである。第一次世界大戦と第二次世界大戦、冷戦を含め、激動の前世紀におけるあらゆる主要な戦略的競合においてアングロスフィア諸国は同じ側にいた―まるで、いつも銃を撃ちながら怒鳴り合って一緒にケンカから出てくる「ブッチキャシディとサンダンスキッド」のように 。歴史に残るこの戦略的な緊密さは比類なきものであり、これは偶然の産物ではない。

アングロスフィアは大きな事柄について戦略地政学的に足並みを揃えて進むだけでなく、その経済も緊密に結びついている。英国が決定的にEUから目をそむける中、将来的にさらにそうなりそうだ。2017年には、米国、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの経済を合わせると世界の国内総生産(GDP)の30%を占めた。

これら5国はすでに互いの経済に非常に多額の投資を行っている。例えば、英国は米国企業の最大の投資国であり、外国直接投資(FDI)は5,400億ドルに達している。同様に、米国は英国への主要な投資国であり、累積株式は約7,500億ドルとなっている。同時に、英国はオーストラリアのFDIで第2に大きな供給源であるとともに、2019年のオーストラリアのFDIで2番目に大きな受入国でもある。

アングロスフィアは戦略地政学や経済以上に、諜報関係の面ですでに超大国となっている。「ファイブ・アイズ」は世界最大の情報共有ネットワークに相当する。全5カ国が1956年以来公然と無線諜報を共有し、ソ連、世界的テロ、そして現在では中国の台頭を標的にしてきた。

これらすべての実際的な政策上の理由から、アングロスフィアは現代世界ではほとんど語られない最重要な大国と考えられている。そして、中国の台頭に伴い、アングロスフィアは極力な共通の絆をさらに強める上での共通の敵を見出した。

英国の中国政府との決別は、中国の通信大手ファーウェイによる英国の新しい5Gネットワーク確立への参入をめぐる、政治的に厄介な撤回が発端となった。ジョンソン政府は当初、むしろ無意識に、ファーウェイがこの重要なプロジェクトで主導的な役割を果たすことを示唆したが、その後アングロスフィア諸国から猛烈な批判を浴びることになった。

ファーウェイは、すべての主要な経済プレーヤーと同様に、長い間中国政府と非常に密接な関係を持っていた(西側の基準でいえば)。2017年の中国政府の国家安全保障法では、同国の企業は「国家情報活動を支援、補助、協力しなければならない」と明確に述べている。これは、中国共産党(CCP)が中国企業に顧客の個人データの引き渡しを求めた場合、拒否しようがないことを明らかにしている。

マイク・ポンペオ米国務長官は、英国に決定の変更を促すべく先頭に立って攻撃を展開した。6月、ポンペオはファーウェイが「中国共産党による監視国家の延長」であると非難した。「アメリカの情報は信頼できるネットワークでのみ交わされるべき」であるとして、ポンペオは事実上、英国が変更しなければファイブ・アイズにおける英国の地位自体が問われる可能性があると明確に打ち出した。

遅まきながら行動を促され、ジョンソン政府は苦しい撤回を始めた。

1月には、英国の5Gネットワークにおけるファーウェイの市場シェアを35%に制限した。

5月には、英国政府は2023年までにファーウェイの技術をすべてのネットワークから段階的に完全廃止する計画を発表した。

本当に流れを変えたのは、米国の懇願以上に、香港での中国の残忍な弾圧である。

ジョン・C・ハルスマン博士

本当に流れを変えたのは、米国の懇願以上に、旧英国植民地である香港での中国の残忍な弾圧である。香港を「一国二制度」を謳う中国に引き渡した中英協定が完全に損なわれていることがまざまざと実感された今、中国の意図は英国政府にとって寒気がするほど明らかになった。現在、ジョンソン内閣は、ファーウェイを5Gネットワークに関与させないか制限するよう圧力を受けている。今回もまた、そして完全に逆効果であるが、駐英中国大使は、英国がファーウェイの件を撤回すれば英国が「そのツケを負うことになる」、と不気味な口調で脅している。しかし、最終的な結果にはもはや疑いの余地はない。自国の5Gネットワークにファーウェイの選択肢を排除していないドイツやフランスなどの他の北大西洋条約機構(NATO)同盟国と比較すると、すべてのアングロスフィア諸国は、ファーウェイが長期的に5Gネットワークへ参入することを一様に拒否していることは明らかである(オーストラリアと米国がファーウェイをあからさまに拒絶したのに対し、カナダとニュージーランドはより高価だがより安全かもしれない選択肢を選択した)。アングロスフィアの主要なパートナーの5国は今回もまた、歴史の中で同じ側に立つことになった。

  • ジョン・C・ハルスマン博士は、世界的な政治リスクコンサルティング会社であるジョン・C・ハルスマン・エンタープライズの社長兼マネージングパートナーである。また、ロンドン市の新聞、City AM紙のシニアコラムニストでもある。ハルスマン博士へはwww.chartwellspeakers.comから連絡可能。
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