Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter

中国とロシアはドルのない世界を夢想する

Short Url:
20 Aug 2020 08:08:33 GMT9
20 Aug 2020 08:08:33 GMT9

今度の米大統領選でなにが起ころうとも、トランプ時代のひとつの揺るぎない遺産は、世界が取引に使う通貨としてのドルの衰退であることは間違いないだろう。

もし民主党候補のジョー・バイデン氏が当選すれば(世論調査が示す通り、徐々にその可能性は増している)、かつて強力であったドルの衰退に多少はブレーキがかかるかも知れないが、ドナルド・トランプ大統領が当選すれば加速することになる。いずれにしても世界のお気に入り通貨はダメージを受けている。

これは、もはやドルが非公式な準備通貨ではなくなるだろうと言っているのはなく、湾岸諸国のほとんどを含む多くの国々にとって今後も自国通貨をドルに連動させるほうが都合がよいだろうと言っているのでもない。

またこれは、ドル通貨のいかなる価値判断をしているわけでもない。ドルは警告を要するほど急速ではないながらも、過去何カ月かにわたり他通貨に対して緩やかな下落を見せてはいるが。

しかし、特に中国、日本、インド、ロシアといった世界の貿易大国は、ビジネス取引に使う金融経路を徐々にドル以外で模索していくことにはなるだろう。その変化はすでに始まっている。

日本の権威ある経済紙『日経アジアンレビュー』が最近、ロシアの中央銀行と税関当局の記録を分析した研究結果を発表したが、それによると今年度第1四半期に初めてドル決済のロシア中国間貿易が50%を下回ったことがわかった。

米国通貨で決済された取引はわずか46%ある一方で、ユーロ決済は過去最高の30%に上り、ロシア通貨や中国通貨も過去最高の24%であった。2015年には両国間取引の90%が米ドルで決済されていたとの結果を同紙は出している。

この低下動向は、トランプ氏が選出される前の2014年に始まった。クリミア併合に対する西側諸国の反応にロシアが失望し、中国との経済連携協定に調印したのだ。

この年に両国は通貨スワップ協定に調印し、互いの通貨を外国為替市場でドルに変えることなく使えるようにした。

しかし2016年からは中国が、トランプ大統領が貿易戦争の一環として課してくる関税が重荷となるに連れ、ロシアとの共通利害を強く感じるようになった。スワップ協定は2017年に延長されて今年が更新の年となっている。額を増大しての更新は必至であろうとみられる。

2019年に中国の習近平主席はモスクワを訪れた際、米ドルを使わずにロシアとの取引を実行する合意を調印し、国際銀行間通信協会(SWIFT)の決済システムを回避する方法として、ドルが支配する同ネットワークに取って代わる自分たち独自のシステムの共同開発を開始した。

中国が苛つきを増しているのは、単に米国が関税や経済制裁を課してくるからだけではない。中国はロシアと同様、米国がドル市場における自らの指揮権を使い、政治的理由と考えられる事柄に関して個人や企業を罰してくるという事実に憤然としているのだ。

世界でドルが優位的立場にあることから、ある程度の段階の国際取引はすべて米国の金融当局を通さなければならない。米国はこの事実を利用して、金融口座を凍結したり気に入らない実業家や企業をブラックリストに載せたりしていたのだ。

ロシアと中国は、シベリアにおける商品輸送の金融業務に米連邦準備制度が関わる必要はないと決めたのだが、そこに道理があることは誰にもわかる。

ロシアと中国に敬遠されつつも、ドルは当面持ちこたえるだろう。ロシア中国間貿易は伸びてはいるが、世界的なマクロの視点ではドルの立ち位置に大きな影響を及ぼすほどの規模ではない。

しかし他の諸国が加わればその効果は雪だるま式に増大する。多くの欧州諸国政府はトランプ大統領と多くの時間を共有してはおらず、ユーロの国際的地位を増大させるためであればドルの困窮を利用する道を模索するかも知れない。

中東諸国の間では、国際原油市場が米ドル建てであることに時として不満の声が上がることもあるが、かといって、中東のいかなる政策決定者にとっても真剣に代替市場を検討ことはあまりにも問題が大きく、米国との同盟関係にひびが入りかねない。

ロシア中国間の金融協定は存在しても、ドルからの解放を試みる国際的に団結した動きはまだない。通貨を武器として使う予測不能な大統領への対処に警戒が増すばかりだ。

  • フランク・ケイン氏はドバイを拠点として活躍する受賞歴のあるビジネスジャーナリスト。ツイッター:@frankkanedubaiUS
特に人気
オススメ

return to top