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イラン政権、抵抗勢力に恐怖感

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14 Sep 2020 08:09:56 GMT9
14 Sep 2020 08:09:56 GMT9

マジッド・ラフィザデ博士

イランの最新動向は、同国が歴史的転換点にある可能性を示唆している。経済的状況は非常に悪く、政府は破産に瀕し、新型コロナウイルス禍の第2派に見舞われ、蔓延する社会的な混乱の今後や国家崩壊の可能性について政権の高官たちが高まる懸念を口にするに至っている。こうした状況を背景として、政権は組織化された対抗勢力に対して過敏となり、そうした勢力を悪魔呼ばわりする政治運動を展開し、国内不安の原因として非難している。残念ながら、米国のメディアの一部は、イラン政権側の談話を無批判に受け入れてしまっている。

事実のそのような誤認は、公的な言説と政策形成を深刻な危険にさらしている。例えば、暴動や政権交代の渦中にあるイランに対応する用意が米国にはあるのだろうか?潜在的な代替案や対抗勢力について米国は正しく理解しているのだろうか?ほぼ間違いなく、イラン政権についての誤解の大部分はイラン国内の反対勢力、特にイラン抵抗国民会議(NCRI)にまつわるものである。NCRIは国内で「大衆の支持」を得ておらず深刻に受け止める必要はまったくないとうのが、政権側のお気に入りの主張である。

そこから導き出される論理的な結論は、例えば、「ほとんどの有用だと認識され得る代替案はイラン国民によって却下されてしまっているので、『ムッラー』の政権は今しばらく存続を認められるべきだ」といったものなのかもしれない。

しかし、こうした主張に反する事実や根拠は豊富に存在している。政策アナリスト、学者、政治家、欧米のジャーナリスト、報道機関が故意に、あるいは、うっかりと、そうした事実や根拠を見逃してしまっている事は驚異である。例を挙げれば、アルバニアで先週開催されたNCRIのバーチャル会合には極々平均的なイラン人数千人が世界中から出席した。300以上のイランの団体がこのオンライン会議に参加したと主催者は述べている。各種の専門家、技術者、大学教員、医師、運動選手などイラン人コミュニティの著名人を含む多数の人々がこのイベントで発言し、NCRIを称賛した。NCRIは、何万人もの支援者や高官を世界中から集めるフリー・イラン大会も毎年開催している。

こうした動勢を無視することは、世界の戦略的ホットスポットの1つに対応する包括的な方策の立案に向けての責任ある取り組み方ではない。私の研究の及ぶ範囲では、イラン国内、欧州、米国、カナダ、オーストラリア、その他多数の国からこれほどの支援を得られる抵抗グループはNCRIのみである。さらには、設立以来56周年を経て、NCRIが世界最長の主要な抵抗運動の1つになっている点も付言に値する。

原理主義政権による処刑の嵐(1988年の受刑者の虐殺など)やテロ攻撃(2018年のパリでのフリー・イラン大会への爆弾テロ計画など)に耐え忍びこれほどまで長く政治運動を続けることは、国内の真の支持なしには有り得ないことである。秘密裏に進められていたイランの核開発計画のNCRIによる2002年の暴露も、NCRIを信頼し情報を提供したイラン国内の協力者無しには起こり得なかった。

ジャーナリストの一部が個人的にどのように夢想しようとも、NCRIが政治の舞台で重要な意味を持つ抵抗勢力であることは証明されている。

マジッド・ラフィザデ博士

NCRIの使命の重要な特性は、イランにおける歴史的な独裁体制を拒絶し、広く信奉されている国際的な自由主義的秩序の一角を担うことを企図している点である。NCRIの大会で頻繁に取り上げられるテーマの1つは、今日のイスラーム法学者たちによる独裁体制とそれ以前のシャーたちによる独裁体制両方への同等に強い非難である。

先週、NCRIの次期代表者であるマルヤム・ラジャヴィーは、イラン人は「過去に目を向けてはいない。未来を見つめているのだ」とまさにその点を強調した。

5月、イランの最高権威であるアリー・ハーメネイー最高指導者はNCRIの名望とそのイラン国内での影響力の増加に対して懸念を示し、「注意を払うべきことは、彼ら(国外に拠点を持つNCRI)がイラン国内の若年層に働きかけていることだ。イランの若者たちを利用しようと企んでいる」と述べた。つまり、ジャーナリストの一部が個人的にどのように夢想しようとも、信頼の置ける政治的理想と利用可能な政治的手段を備えたNCRIが政治の舞台で重要な意味を持つ抵抗勢力であることは証明されているのである。NCRI事務局長のザラ・メリキーが同組織の人気について発言した内容については、一般に検証可能な根拠に基づいても相応の信憑性があると考えられる。収監されている反体制派や「レジスタンス部隊」は実在しており、活動の範囲を拡大しながら、より多くの政権に対する抗議行動を組織化しようと全力を尽くしているのだ。

事実を無視したり、外国のプロパガンダをただ受け入れてしまうことは、オブザーバーの私には出来ない。上記のような事実は、抵抗勢力がイラン内外で受けている支援の程度についての政権側の談話を危険なまでに受け売りしている人々に、公正で先入感の無い内省を促し得る。イラン内部で抗議行動を行っている人々と同様、NCRIの会合への参加者もイラン政権の地域的な冒険主義を非難した。これは、NCRIに立脚した他の多くの見解よりも、米国とアラブ諸国の政府の利益に一致し、さらなる議論に値する。

イラン政治の現実は複雑であり、重複する政策的立場の概観に役立つ重要情報へのアクセスは厳しく制限されている。それでも、アクセス可能な事実については精査と議論をしなければならない。根拠に基づく(プロパガンダに基づくのではない)取り組みによって多様な構想についての意見交換は生産的なものとなり、将来の政治的手順にも資する。そうしなければ、押し寄せる変化の津波が米国を初めとする地域に関係する各国政府に不意打ちを与え、イランの進歩の実現に積極的に参画しようとするそれら政府の能力を大幅に低減させてしまい得る。

  • マジッド・ラフィザデ博士はハーバード大学で教育を受けたイラン‐アメリカの政治家学者。Twitter: @Dr_Rafizadeh
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