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ニース:私たちムスリムの名において行われたのではない

ニースのノートルダム教会で刃物による襲撃があり、3人が死亡した。(AFP)
ニースのノートルダム教会で刃物による襲撃があり、3人が死亡した。(AFP)
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30 Oct 2020 07:10:37 GMT9
30 Oct 2020 07:10:37 GMT9

ファイサル・ J・アッバス

ニースのノートルダム教会で起きた恐ろしい襲撃事件、そしてジッダのフランス領事館で起きた刺傷事件は、どんなに厳しい言葉でも非難し尽くせない。確かに、預言者ムハンマドをあざ笑うことは、どんな宗教的象徴であろうと許されない。だが、罪のない人々に対する暴力も同様であり、私たちムスリムの名において絶対に行われてはならない。

イスラム教を守っていると主張するが、実際には政治的利益のみを追求している人々の手は血で染まっている。トルコとカタールの、害悪を及ぼす影響力のために、フランスに対する最近の運動は政治の範囲を超え、今や命を犠牲にしている。

点数を稼ぐための宗教の悪用は常に、悪意のある政権が好んで使う手段だった。イランはその名人だ。イランのいわゆるコッズ部隊は「アル・コッズ以外のどこか」部隊に改名されるべきだ。なぜなら、イランはエルサレムの解放よりも、アラブの首都であるサヌアやバグダッド、ベイルート、ダマスカスの占領に熱心なようだからだ。サダム・フセイン氏が窮地に追い込まれたとき、そのイラクの独裁者は宗教に救いを求めるふりをして、国旗に「アラー・アクバル(神は偉大なり)」という言葉を入れた(バース党政権は世俗主義的な要素が強いことで知られていたので、それは皮肉であった。)

よって、フランスを排斥する運動の先頭に立つことは、レジェプ・タイップ・エルドアン氏にはしっくりくる。トルコのエルドアン大統領は、リビアやアルメニア、ギリシャ、キプロスに積極的に干渉した結果、非常に苦しんでおり、エジプトやUAE、サウジアラビア、ロシア、EU、米国との間で問題を引き起こしている。それゆえ、いくつかの国でトルコ製品をボイコットする草の根運動が起きていることは理解できるが、フランス製品をボイコットする運動は理解できない。エマニュエル・マクロン大統領も仏政府の誰も、これほど多くの人を怒らせた、発想の良くない風刺画に対して責任はないが、エルドアン氏とトルコ政府は、トルコが干渉した国々で起きた、流血の惨事に直接責任がある。

エルドアン政権下のトルコは、近隣諸国との問題をゼロにするという政策から、友人をほぼゼロにする政策へと移行した。

ファイサル・J・アッバス

今週のアラブニュースの分析で明らかになったように、エルドアン政権下のトルコは、近隣諸国との問題をゼロにするという政策から、友人をほぼゼロにする政策へと移行した。ゼロとは言うが、カタールは別だ。カタールはトルコを財政的に支援し、テロに資金を提供し、ドーハを拠点とする過激派宗教指導者ユスフ・アル・カラダウィ氏にキリスト教徒とユダヤ人に対して危険な毒舌を振るわせるため、アルジャジーラ・アラビックにプライムタイムの時間帯を提供している。「ああ神よ、裏切り者のユダヤ人の侵略者を捕まえてください……ああ神よ、彼らの数を数え、一人一人を殺して、誰も助けないでください」とカラダウィ氏は言っている。

トルコとカタールによって広まっている、現在の反フランスのレトリックで特にばかげているのは、フランス国民全員を標的にしているだけでなく、フランスのイスラム教徒や彼らの会社の個人や財政を危険にさらしていることだ。

政治的利益のために宗教を利用し、憎悪をあおり、復しゅうをあおる人々は、自分が信仰していると主張している教義について少し学んだほうがいい。イスラム教のハディースには次のように書かれている。預言者ムハンマドがターイフの人々にイスラム教を広めようとしたとき、彼らはムハンマドが血を流すまで石を投げつけることで対応した。天使ガブリエルと「山の天使」は、山を崩し、ムハンマドを傷つけた者たちを押し潰すと申し出たが、ムハンマドは断り、その代わり許すことを選んだ。

そのような寛容はキリスト教の本質でもある。山上の説教で、イエスは「目には目を歯には歯を」という考え方をはっきりと否定した。彼は信者たちに言った。「右の頬を打たれたら、左の頬を出しなさい」

私たちは、容易ならざる危険な時代に生きている。これらの寛容の教訓が必要とされるならば、それは今だ。

  • ファイサル・J・アッバスはアラブニュースの編集長
    Twitter: @FaisalJAbbas
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