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イスラエルの入植に関するアメリカの新方針では何も変わらない

占領されているヨルダン川西岸ギヴァット・ゼエヴのイスラエル入植地(ロイター通信)
占領されているヨルダン川西岸ギヴァット・ゼエヴのイスラエル入植地(ロイター通信)
21 Nov 2019 09:11:58 GMT9

国際的な法の支配と人権の世界には今週、ホワイトハウスがイスラエルの人種主義的な入植をこれ以上違法だと見なさないことにより、アメリカが長く採用してきたスタンスを覆すとマイク・ポンペオ国務長官が発表したことにより、衝撃が走った。

ヨルダン川西岸地区におけるイスラエル民間人の入植地の建設は、それ自体は国際法に違反するものではない」と、月曜日、ポンペオが発表した。

ポンペオは、様々な政権が入植問題についていかにちぐはぐな対応をしてきたのか、ありとあらゆる手を尽くして説明しようとした。民主党大統領のジミー・カーター、ビル・クリントン、バラック・オバマは違法だとし、一方の共和党のロナルド・レーガン、ジョージ・W・ブッシュ、そして現在のドナルド・トランプは違法ではないと表明した。しかし、政治的な堂々巡りの状況が続いても、これらの言葉は全く地に足が付いていないというのが現実だ。

イスラエルが東エルサレム、ヨルダン川西岸、ガザ地区を占領した1967年以降、イスラエルは一定のペースで入植地を建設・拡張し、このペースは現在かなり加速している。アメリカの後ろ盾で、国連総会や安保理のあらゆる関連決議を含め、イスラエルはその入植地拡大に対するあらゆる非難を無視している。

これには、1979年3月22日に全会一致で採択され、入植を「法的な妥当性はなく、中東における包括的、公正かつ永続的平和の達成に対する深刻な妨害となる」と宣言した安保理決議第446号も含まれる。

国連の宣言も実際には本当に何も変えてこなかった。空虚な言葉である。

イスラエルの入植地は、トランプが大統領になり、ポンペオが国務長官に指名されるずっと前からあった。アラブ社会から民主党の大統領、平和活動家に至るまで、入植地に関して批判をする人々は、その建設阻止のために何もできずにきた。

入植に関するアメリカの考え方は、イスラエルの人種主義的な入植拡大政策の現実とは無関係だ。

レイ・ハナニア

入植地は拡大し、イスラエルが占領地を占領した日から、パレスチナの民間人から奪った土地の中で大きくなっている。今日の壮絶な拡大のペースは、アメリカが入植は違法であると言いながらもまるで違法ではなかったかのように振る舞ってきた昔の政策下と同じように、この「新しい」政策の下でも揺るぎない。

しかし、ポンペオの発言は、ついに実際の変化を起こす火付け役になるかもしれない。アラブ社会はこれで、入植地の容認で目を覚まし、これに対して何かをし始めるかもしれない。あるいは、入植に関する政策変更は間違っていると主張するアメリカの政治家は、ポンペオの発言を利用して、その拡大に関して何かをするかもしれない。

エリザベス・ウォーレン、ピート・ブーテジェッジ、バーニー・サンダースを含む複数の民主党大統領候補者は、この変更を非難した。さらに多くの人がこれに同調している。しかし、それだけでは十分ではない。彼らは二国家解決に基づく和平に反対せず、同時にイスラエルの違法行為を標的にした道徳的なボイコット、投資撤収、制裁(BDS)運動に力を注ぐ必要がある。アメリカの立法府の議員は現在、入植をボイコットする人を罰しており、これはトランプのずっと前に始まったものだ。

反入植運動は、政府ではなく、BDSの活動家が主導している。この運動は正当かつ合法的にイスラエルによる占領された民間の土地の違法収奪や、ここで作られたことが確認された商品に対して異議を申し立ててきた。BDS運動は、奪われた土地や資産は、イスラエルのような占領軍が利用してはならないという法的かつ道徳的な前提に依拠している。しかし、あまりにも多くのBDSの活動家が、イスラエルの違法行為だけを標的にするのではなく、イスラエルのあらゆるものにまでボイコットを拡大したことによって、運動を批判に晒してしまっている。アメリカの50の州の半数以上が現在、反BDS法を採用している。連邦議会も同様の対応を取っている。

アメリカは、イスラエルに対する年間40億ドル近くの軍事支援を通じて、入植地拡大の費用を間接的に支払い続けており、この支援金はいわゆる「反入植大統領」のオバマ政権下で劇的に増加した。

ヨルダン川西岸と東エルサレムの400の入植地には、60万人を超える違法入植者が住んでいる。入植者の数は、どの大統領政権下でも、アメリカが入植は「違法」と宣言した時でさえも、着実に一貫して伸びてきた。

ポンペオの発言は、入植の現実を変えるものにはならなかった一方で、イスラエル政府の人種主義的なアパルトヘイト政策や弾圧に反対すると主張しながらも、それを阻止できるくらい十分な行動を取ってこなかったアラブ社会やアラブ各国政府に対する挑戦を生じさせた。

アメリカの政策変更は、違法な入植地という奪われた土地に住む人々に、ある種の間違った安心感を与えるかもしれない。しかし、これは1つの重要な点を変えられるものではない:国際法の下では、入植は違法なのだ。例え、ポンペオがそうではないと考えていたとしても。

入植住民と入植制度はこれで、世界中でより一層のけ者扱されるようになるだろう。たとえ、その違法性に一貫して目をつむってきたとある国はそうでないとしても:アメリカだ。

では、ポンペオの宣言の真相は何だろうか?入植に関するアメリカの考え方は、イスラエルの人種主義的な入植拡大政策の現実とは無関係だ。入植は、人種主義的で違法だと言われようが言われまいが、拡大し続けるだろう。そして、イスラエルはアメリカからの支援で、何十億ドルもの資金を受け続けるだろう。その金を利用して、入植拡大計画の費用を賄うための資金は際限なくつぎ込めるようになっているのだ。

言葉は虚しい。重要なのは、国際法を執行するために、国家が何をするかだ。今のところ、BDS運動以外には誰も人種主義的で違法なイスラエルの入植に終止符を打とうとはしていない。

レイ・ハナニアは、受賞経験を有する元シカゴ市役所担当政治記者でコラムニスト、問い合わせは個人ウェブサイトwww.Hanania.comまで。ツイッター:@RayHanania

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