
タラト・ザキ・ハフィズ
サウジアラビアは、コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックや 2008 年の世界金融危機などの世界的な危機に対処する優れた能力を証明してきた。
そして、サウジアラビアの経済回復力は無視できない。国際通貨基金(IMF)が発表した最近のレポートでは、サウジアラビア経済の継続的な回復と、消費者物価指数(CPI)のインフレ鈍化が再確認され、非石油部門の国内総生産(GDP)成長率は今年4.3%、2022年には3.6%に達すると予測されている。
IMFは、民間部門が5.8%と今年の成長を牽引し、中長期的には平均4.8%で推移すると予測した。
さらに、格付け機関最大手のS&P、ムーディーズ、フィッチによる最近のレビューとアップデートの結果、サウジアラビアはそれぞれA-(マイナス)、A1、Aと高い評価を受けた。
7月15日のフィッチによる最新のレビューでは、サウジアラビアの長期外貨建発行体デフォルト格付(IDR)の見通しがネガティブから安定的に変更され、IDRはAに据え置かれた。
なお、フィッチは今年に入って97カ国の格付けを行っているが、そのうちのサウジアラビアを含む約11%はポジティブに修正され、約8%は格付けが引き下げられている。
また、昨年3月にパンデミックが始まって以来、各格付け機関は215件以上のマイナス評価を付けており、そのうちの40%がG20諸国となっている。
我が国にとって最大の課題は、格付けを維持することである。
タラト・ザキ・ハフィズ
フィッチがサウジアラビアの信用力の高さを評価し、格付けを改訂した主な要因は、世界的な健康危機を受けて政府が責任を持って真剣に経済改革と健康対策を行ったからだ。
このような対策は、世界の原油価格が大幅に改善したことや、政府が財政再建と経済改革に継続的に取り組んだことにより、財政赤字が前回の見直し時よりも減少したことからも明らかなように、国民経済やサウジアラビアの財政状態にもプラスに作用している。
フィッチは、サウジアラビアの実質GDPが、2020年にはマイナス4.1%に縮小するのに対し、今年は2.1%へと改善し、経常収支も黒字回復すると予測している。このポジティブな見通しは、原油価格が今年中に1バレル63ドルに達するという同機関の予想によるものである。
フィッチは、財政赤字は今年、対GDP比でマイナス8.4%(前回予想)からマイナス3.3%に縮小し、2022年にはマイナス3.8%に達すると予想している。また、経常赤字は、前回評価の対GDP比マイナス5.5%を、2020年にはマイナス2.8%に修正し、2021年には2.7%の経常黒字になるとしている。
フィッチによると、近年は減少傾向にあるものの、サウジアラビアは強固なソブリン資産と外部財源を維持している。これは、現在の対外支払額の20カ月分以上という高いリザーブカバレッジレシオに支えられており、フィッチのソブリン格付けの中でも高い水準にある。
最後にはなるが、フィッチは、今年の政府債務残高の対GDP比を、12月の前回予測の39.4%から31.1%に引き下げ、2023年には33.1%となると予測している。
サウジアラビアは高い信用格付けを得ているものの、パンデミックがいつまで続くかという世界経済の不確実性が続く中にあっては、原油価格の変動を考慮すると、おそらく今後の最大の課題は格付けを維持することであろう。