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イランとイスラエルの影の戦争

2022年3月11日、オーストリアのウィーンにて、エンリケ・モーラ氏との会談を終えコーブルク宮殿を後にするイランの核交渉責任者アリ・バゲリ・カーニ氏。(AFP)
2022年3月11日、オーストリアのウィーンにて、エンリケ・モーラ氏との会談を終えコーブルク宮殿を後にするイランの核交渉責任者アリ・バゲリ・カーニ氏。(AFP)
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21 Mar 2022 08:03:51 GMT9
Majid Rafizadeh
21 Mar 2022 08:03:51 GMT9

ロシアとウクライナの戦争が国際コミュニティの注目を集める中、イラン政府とイスラエルによる影の戦争は過激化し、同地域の緊張を高めている。イランとイスラエルの影の戦争が拡大することの危険性は、歯止めが掛からなくなり両国間の全面戦争に発展する可能性を秘めている点にある。

イスラエルは、イラン西部ケルマンシャー州近郊にあるイランの空軍基地を攻撃し、数百機のドローンを破壊するという前例のない動きを見せたと報じられている。イラン政府はおそらく面目を失いたくない、あるいは弱みを見せたくないという理由から、この攻撃に関する情報公開を行わなかった。報道機関『The Nour』は、「14日午前、ケルマンシャー州マヒダシュト地区にあるイスラム革命防衛隊の支援基地のひとつにて、モーターオイル等の可燃性物質が置かれていた保管室から出火し、産業用倉庫に損害が発生した」と報じている。

力を見せつけ強硬派の不満を抑え込むため、即時報復を試みるのがイラン政府の常となっている。今回イラン政府はイラク北部クルド人自治区に向けて十数発のミサイルを発射するという形で対応し、イスラエルの施設を狙ったと主張した。イスラム革命防衛隊(IRGC)は、「IRGCが放った強力かつ正確なミサイルの標的は、陰謀と悪事をたくらむシオニストの戦略施設だった」と声明を発表した。

エルビルのオメド・コシュナウ県知事は、同地区にイスラエルの施設は存在しないと述べた。狙われたのは新設された米国領事館だったという。「イスラエルの施設が存在するという話は時折耳にしてきました。それらは根拠のない主張です。同地域にイスラエルの施設はありません」。コシュナウ知事はそう述べた。

イスラエルへの報復にあたって、イラン政府は直接イスラエルの施設を狙う必要はない。イラン政府はイスラエルの強固な同盟国である米国を標的とすることで、米国政府からイスラエルに圧力を掛けざるを得ない状況を作り、米国とイスラエル両国がイランの報復の標的になり得るのだという強力なメッセージを送ることができる。

イラン政府は、イスラエルまたは米国の施設を攻撃可能な数千発のミサイルを保有している。米中央軍司令官のケネス・マッケンジー大将は米国上院軍事委員会にて次のように述べた。「軍事レベルでの私の第一の懸念は、彼らが核兵器を持っていないかどうかですが、彼らの弾道ミサイル計画の大幅な成長と効率性についても大きな懸念を持っています。彼らは様々な種類のミサイルを3,000発以上保有しており、中にはテルアビブを射程圏内に捉えているものもあります」

イランとイスラエルの影の戦争は、他国つまりシリアでも悪化している。先日はイスラエルがシリアで空爆を行い、IRGCの将校2人を含む4人が死亡した。IRGCと繋がりを持つイランの国営報道機関『Sepah News』は、イスラエルは「この犯罪の報いを受ける」ことになるだろうと警告し、殺害されたイランの2人はエーサン・カルバライプール将軍とモルテザ・サイードネジャド将軍だったと報じた。

拡大を続けるこのイラン政府とイスラエルによる影の戦争の裏には、いくつかの根本的な問題が存在する。最も重要な問題は、イランの核計画および核合意再建に関連している。イランの指導者層は核計画の目的は平和利用だと主張しているが、イスラエル政府の観点からすると、イラン政府は核兵器の保有という裏の目的の実現を目指しているということになる。

イスラエルの指導者層の懸念は、イラン政府がこれまで内密に行ってきた核活動が裏付けている。イラン政府は最初から核活動を秘匿すると決めていた。たとえばナタンズとアラークという2つの大都市で秘密裏に行われていた核活動を2000年に初めて明らかにしたのは、反体制派であるイラン国民抵抗評議会(NCRI)だった。

イスラエルはイラン核合意による重大な影響と、シリア、レバノン、イラクにおけるイラン政府の影響力増大を懸念している。

マジド・ラフィザデ博士

NCRIは2017年にも、イランが厳重警備のパーチン軍事基地にて核活動を継続していたことを示す重要情報を公表している。NCRIは、パーチン軍事基地がイランの核兵器計画継続に密かに利用されていたと声明を発表し、次のように述べている。「研究を指揮し、核兵器のトリガー開発の責任を負っているのは、『爆発及び衝撃技術研究開発センター』と呼ばれる部隊で、ペルシャ語の頭文字をとって『METFAZ』として知られている」

さらに、2018年にイスラエルが押収したイラン政府の核に関する公文書には、イランの核計画の軍事的側面が直接的に示されていた。これに続いて科学・国際安全保障研究所は、「イランは5発の核弾頭製造を意図しており、それぞれの核弾頭は10キロトンの爆発力を持ち、弾道ミサイルによる発射が可能である」と警告を発した。

イスラエルとしても、核合意によってイラン政府が財政面で余裕を取り戻すのみならず、同政府による核計画の進展を防げないのではないかと懸念している。そのうえ、核合意によってイラン政府はイラク、イエメン、レバノン、シリアの親イラン派グループを強化し勢いを煽るためになんとしても必要な資金を得ることになる。

端的に言えば、イスラエルはイラン核合意による重大な影響と、シリア、レバノン、イラクにおけるイラン政府の影響力増大を懸念しているのだ。このことがイラン政府とイスラエルの影の戦争の拡大に繋がっており、歯止めが掛からなくなって全面戦争へと発展するリスクが生まれているのである。

  • マジド・ラフィザデ博士はハーバード大学出身のイラン系米国人政治学者。ツイッター:@Dr_Rafizadeh
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