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ロシアの石油・ガスがEUに流れ込まなくなったときに起きるかもしれないこと

ガスショックが起きれば、物流やサプライチェーンが混乱し、価格はあっという間に上昇するだろう。(AFP)
ガスショックが起きれば、物流やサプライチェーンが混乱し、価格はあっという間に上昇するだろう。(AFP)
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25 Mar 2022 05:03:06 GMT9
25 Mar 2022 05:03:06 GMT9

ロシアとEUは、世界のエネルギー市場において非常に重要なプレーヤーである。両者の間で起こることは、湾岸協力会議(GCC)を含む、世界中の多くの地域に影響を与える可能性がある。

ロシアは1日600万バレル以上の石油と石油製品を輸出しており、そのうち約400万バレルがEUに向けたものとなる。

もしロシアがEUへの石油の輸出を止めたり、EUがロシアの石油の輸入を禁止したりすれば、EUは他の石油供給国に大きな要請をすることになる。そうなると、原油価格はかつてない水準になる可能性がある。1バレルあたり300〜350ドル、あるいはそれ以上の価格もあり得るかもしれない。ガソリンなどの石油製品の価格は、今の何倍にもなるだろう。世界は大不況、あるいは恐慌に陥るだろう。しかし、そのような事態は避けることが可能かもしれない。

EUや国際エネルギー機関(IEA)は最近、石油需要を大幅に削減する計画を発表している。この計画が実現しても、ロシア以外の代替供給源の必要性は高いが、その程度は低くなる。その代替石油源はどこから来るのだろうか。多くの人が、GCCが不足分を補うのに必要な石油の供給源になると提案している。しかし、GCCや石油輸出国機構の余剰生産能力は、それに見合うものではなさそうだ。また、石油輸出国の多くは、余剰生産能力を使い切ることにはかなり慎重である。米国、カナダ、その他の国々は、そのための能力を開発できれば、EUへの輸出を増やすことができる。

一方、イランとの取引が成立すれば、EUは失われたロシアの石油をイランからの輸入で補うという誘惑に駆られるかもしれない。しかし、それは大きな間違いだ。なぜテロ国家に何十億ドルもの資金を与えるのか。ベネズエラからの輸入にも同様の誘惑があるだろう。しかし、同国は麻薬国家だ。

そして、供給側、消費側ともに、港湾のキャパシティ、パイプライン、貯蔵、タンカーのキャパシティに問題がある。重要なのは生産能力だけではないのだ。輸送、貯蔵、精油などの能力も、オイルショック・石油製品ショックの解決には欠かせない。海から運ばれてくる石油の場合、製油所近くのパイプラインに沿って流れてくる石油に比べれば、インフラの変化は少ないだろう。石油が発見されてから生産されるまでには、何年もかかる。原油を輸送し、貯蔵し、製油するためのインフラや施設を建設するには、長い時間がかかる場合がある。石油ビジネスには時間がかかるのだ。タイトオイルとして知られるシェールオイルは、沖合や陸上に存在する在来型石油よりも動きは早いが、米国以外ではタイトオイルに十分な目を向けているところはほとんどない。そして、生産能力の増強は一朝一夕にできるものではない。

EUの石油生産量は長年減少を続けている。米国のように、シェール油田を一気に増強することはできない。EUはシェールオイルの開発にはほとんど反対しており、そのためのインフラを整えるには長い時間がかかるだろう。

ロシアから石油を輸入している他の国々、例えばインド、中国、韓国、日本、そしてEU以外のヨーロッパ諸国は、EUによる供給の引き下げによって影響を受ける可能性がある。石油は世の中に豊富に存在しているわけではない。タンカー、港湾、エネルギー取引所などは、さまざまな方法でその努力の方向を変えなければならないだろう。インドと中国は、EUの需要減退により供給が過剰になったロシアの石油をより多く輸入するかもしれない。日本や韓国はそうではないだろう。

ロシアの石油および石油製品の60%以上がEUに供給されている。ロシアの輸出収入の約60%、政府予算の30%はエネルギー輸出によるものであり、石油収入はその大きな部分を占めている。石油の輸出が禁輸になれば、ロシア経済は今以上に苦しくなる。

時間が経てば経つほど、石油の消費者は石油から他の燃料に変えようと考えるだろう。また、石油を購入するための予算も少なくなる。消費者とその指導者は、このことを忘れないだろう。

GCCとOPECにとって、これは石油の終わりの始まりを意味し、多くの場所でエネルギー転換が加速されることになるかもしれない。最初は、OPECの収入は増加するかもしれない。しかし、長期的には、代替効果により、OPECの収入は、ロシアのオイルショックがなかった場合よりも急速に減少する可能性がある。また、オイルショックによる景気後退・不況は需要を破壊する可能性がある。

長期的には、EUや他の天然ガス市場は、高価なガスに代わる他のエネルギー源に移行する可能性がある。

ポール・サリバン博士

ここで、EUへの天然ガスの禁輸も想定しよう。ロシアがEUへの天然ガス輸出を禁じた場合、1750億立方メートルのガスがEUに供給されなくなる。EUは、アルジェリア、ノルウェー、アゼルバイジャン、その他ごく少数の国からパイプラインで送られてくるガスで、いくつかの代替供給源を見つけることができるだろう。また、カタール、米国、オーストラリア、さらにはトリニダード・トバゴからの液化天然ガス(LNG)の輸入を増やすことも可能だ。

しかし、ロシアの天然ガスをすべてLNGに置き換えるだけのLNG液化プロセスの余力はあるのだろうか。まだない。そのLNGをヨーロッパに運ぶLNG船は十分にあるのだろうか。まだない。

ガスショックが起きれば、物流やサプライチェーンが混乱し、価格はあっという間に上昇するだろう。中国、日本、韓国などの大口LNG輸入国、そしてインドやパキスタンなどの小口LNG輸入国もエネルギー価格と供給のショックを経験することになる。もし、IEAとEUの天然ガス需要削減計画が実際に成功すれば、世界レベルでのショックはかなり軽減されるであろう。EUは今よりもエネルギー安全保障が向上すると考えられる。

米国はシェールガス田を増強して、LNGにして輸出し、EUに出荷できるガスを増やすことができる。しかし、EUが失ったロシアのガスの量を補うには、米国がシェールガスの生産と必要となるインフラの増強に適切なインセンティブを与えたとしても、時間がかかるだろう。また率直に言って、米国には、ロシアの離脱によって生まれたギャップのほとんどを埋めることはできないだろう。しかし、EUの負担を軽減することには貢献できるといえる。

長い目で見れば、EUや他の天然ガス市場は、高価なガスに代わる他のエネルギー源に移行する可能性がある。これもまた、エネルギー転換を加速させ、最終的には天然ガス供給者を苦しめることになりかねない。米国のようなところでは、EU向けのLNGの需要が増えることで、ガスの価格が上昇する。

しかし、米国のような地域に関しては、価格が上がれば、より多くのガスが生産され、産業が成長する可能性がある。カタールも同じだ。ノルウェー、アルジェリア、アゼルバイジャン、エジプト、オーストラリアなどの天然ガス輸出国も、短中期的にはガスショックに苦しむEUに供給するために参加するかもしれない。

長期的には、消費者が他の燃料に移行することによる代替効果や、オイルショックとガスショックの組み合わせによる深刻な景気後退による所得への影響から、ガス生産者の市場は他の方法よりも急速に縮小する可能性がある。

このような状況は、より多くの消費者や国がエネルギー転換を加速させることにもなりかねない。OPECは、その主要な収入源の需要が計画よりも急速に減少するため、これらすべてから大きな損失を被る可能性がある。OPECプラスの「プラス」が、マイナスになる可能性もあるのだ。

・ポール・サリバン博士はKFCRISの上級研究教授であり、米大西洋評議会グローバル・エネルギー・センターのノンレジデント・フェローである。

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