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シェイク・ハリーファ氏が残した変革の遺産と寛容の精神

クウェートのバヤン宮殿で行われた、GCCサミット閉会式でのシェイク・ハリーファ・ビン・ザーイド氏。(2009年12月15日)(ロイター)
クウェートのバヤン宮殿で行われた、GCCサミット閉会式でのシェイク・ハリーファ・ビン・ザーイド氏。(2009年12月15日)(ロイター)
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21 May 2022 03:05:43 GMT9

UAE大統領であった故シェイク・ハリーファ・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン氏は、経済面でも、UAEを世界の寛容さの指標とする面でも、自国の劇的な変革を見届けた人物であり、宗教の垣根を超えて世界中の人々がその死を悼んでいる。

シェイク・ハリーファ氏は18年間にわたって国民に大きな進歩と繁栄をもたらし、在任中にGDPを172%拡大した結果、それは年間4,000億ドル以上となった。彼は、UAEの豊富なエネルギー資源を活用しながら、非石油産業への多角化を促進するだけでなく、アブダビをその地域のリーダーにし、ドバイを、自身の名を冠したブルジュ・ハリーファなどの超高層ビルで埋め尽くされた世界的大都市に成長させた。

しかし、シェイク・ハリーファ氏の在任中に行われた社会改革や、経済の近代化とともに加速した人間的価値の向上についてはあまり知られていない。そして、その中には、UAEや湾岸地域の枠を大きく超えた宗教間の多大な実績も含まれている。

2015年、首長国連邦はあらゆる形態の差別を禁止する法律を可決し、7つの首長国全体であらゆる信仰と国籍を持つ人々の身の安全を保障する基礎を作り上げた。その1年後、新たに創設された寛容省が、あらゆる信仰を持つ人々の関係の礎を強化するための活動を開始した。この省は、世界中に存在する最も新しいユダヤ人コミュニティを正式に承認したのである。

イスラム教徒とユダヤ教徒の関係や、より広範な宗教間の理解という重要な使命に長年取り組んできた私のような者にとって、2019年にUAEが宣言する「寛容の年」は、シェイク・ハリーファ氏の永遠の遺産になるかもしれない。

湾岸諸国を訪問する初のローマ法王となる、フランシスコ法王の到着に合わせて、私はアブダビに招待されるという栄誉を得た。フランシスコ法王は、UAEを「寛容性の文化、政策、法律、実践において世界をリードする存在」として支持した。この寛容性の未来像は、その後すぐにアブラハム協定の制定において表れた。

しかし、ホワイトハウスでの条約調印式の裏には、UAEの社会や文化レベルで寛容性を定着させるという困難な課題に向けて、多くの献身的な努力があった。

学校教育における平和と文化的寛容を監視する研究所(IMPACT -SE)の調査によると、UAEは反ユダヤ主義や、その他の偏見がある内容や差別的内容の教材を選別して排除することにおいて、その地域をリードしており、将来の宗教間の関係のために徹底的な取り組みを実践している。バーレーンとサウジアラビアを含めた湾岸の他の国々が、シェイク・ハリーファ氏が地域全体に及ぼした模範的な力を示すために、今やそのすぐ後ろに迫っていることは心強いことである。

私たちは、偉大な指導者の証とは、その人が亡くなった後も後世に残り続けるものであると知っている。シェイク・ハリーファ氏が残した経済的・文化的遺産は多岐にわたり、繁栄する都市部や、トップレベルのインフラやサービス分野、博物館、新しさと古さが巧みに調和した文化的景観など、国の至る所で見ることができる。

シェイク・ハリーファ氏が残した経済的・文化的遺産は多岐にわたり、国の至る所で見ることができる。

ラビ・マーク・シュナイアー

このような多様性がUAEの宗教生活に取り入れられていることは、並大抵のことではない。今年は、モーシェ・ベン・マイモーンのシナゴーグがオープンする予定である。このシナゴーグは、イスラム教徒、キリスト教徒、ユダヤ教徒のための宗教間交流施設として建設中のランドマーク「アブラハム・ファミリー・ハウス」の一部で、3つの礼拝堂は連帯の象徴として並んで配置されている。

このシナゴーグは、12世紀のラビの指導者であり、科学者でもあったサラディンの専属医を称えるものである。ユダヤ教の文化遺産であると同時に、イスラム教の歴史を代表する人物の名前をシナゴーグに冠することは、まさにふさわしいと言える。

現代では、シェイク・ハリーファ氏もまた、非常に多くの異なる文化の象徴となっている。彼は、UAEが宗教間の寛容性の中心となることを予言しただけでなく、神から与えられた時間を使って、それを実現させたのである。そのことに、イスラム教徒や、キリスト教徒、ユダヤ教徒、その他の団体は、永遠に感謝し続けるだろう。

  • ラビ・マーク・シュナイアー氏は、民族理解財団の会長である。
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