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悪意に満ちたイランの代理勢力が国を引き裂く

イラクの民兵組織「​ハシュド・アル・シャアビ」は、イランの思惑にのみ合致する分割統治ゲームを行っている。(AFP/ファイル写真)
イラクの民兵組織「​ハシュド・アル・シャアビ」は、イランの思惑にのみ合致する分割統治ゲームを行っている。(AFP/ファイル写真)
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06 Jun 2022 05:06:42 GMT9
バリア・アラマディン
06 Jun 2022 05:06:42 GMT9

イランの支援を受けた準軍事組織「​ハシュド・アル・シャアビ」は、民族的に多様なイラクのニネベ州を支配するために「分割統治戦略」を採っている。

国際危機グループ(ICG)の新しい報告書は、こうしたイランの代理勢力の活動がトルコとの地域戦争を引き起こす危険性があり、トルコがシリア北部への新たな軍事侵攻を計画していることで緊張がさらに高まっている、と警告している。

2015年から2017年にかけて、ダーイシュがこの民族的に複雑な地域から排除された後、ハシュドは地元の民兵を混乱した形で支援し、市民の緊張を極限まで高めた。ヤジディ教徒、シャバク、シーア派トルクメン、スンニ派、クルド、アッシリアとカルデア派キリスト教徒など、考えられるあらゆる地域の宗派と民族が、現在、独自のハシュド派閥を持っている。彼らは地域経済と国境を越えた密輸取引を独占しようと競争しながら、地域の人々を搾取してきた。

より広い地域的な力学が働いている。トルコはイラクのクルディスタン民主党との関係を深める一方、非合法のクルディスタン労働者党であるPKKとそのイラクの系列組織であるシンジャール抵抗部隊を排除しようとしている。ハシュドは後者の一部を「第80大隊」として雇用し、ハシュドの諸派はイラク北部のトルコ軍拠点に対して挑発的な攻撃を行った。一方トルコは、第80大隊の司令官を含むハシュド系のクルド人たちを暗殺した。

この地域は深いトラウマを抱えている。2014年にダーイシュが大量殺戮作戦を繰り広げたとき、少数民族は想像しうる最悪の運命に見舞われた。ヤジディ教徒の男性は大量に虐殺された。女性は性的奴隷として、また残忍な隷属を強いるために捕らえられた。奴隷にされた女性は、時にはコミュニティに戻されることもあったが、ほとんどの場合はダーイシュのメンバーと強制結婚させられ、子供を残すという、想像を絶する行動を取らざるを得なかった。

このような壊滅的なトラウマを軽減するには、何世代もかかる。ヤジディ教徒の活動家でノーベル平和賞受賞者のナディア・ムラド氏に会うたびに、私は彼女の海のような悲しい瞳に打たれる。その瞳は、いつまでも彼女の心に残り続ける、想像を絶するほどの衝撃的な体験を雄弁に語っているのだ。

ニネベの多くのコミュニティは当初、この地域の解放に貢献したハシュドを自分たちの救世主のように思っていた。しかし市民は間もなく、ハシュドの分割統治がイランにのみ貢献していることを痛切に感じるようになった。同様に、イラク南部のシーア派社会も、自分たちを守るという口実のもとに存在するこの略奪的な運動に対して、ますます抵抗を強めている。

イランは、自らの目的のために諸派のアイデンティティーを操作している。「キリスト教」民兵はシーア派の導師を崇拝する儀式を行い、シーア派の住民は少数民族のために確保された議会の議席を占める親ハシュド派の政治家に投票するよう動員された。キリスト教地区のバルテラにあるイランの資金提供による学校には、ホメイニ師の名前までつけられているのだ。このような教育機関が、どのようなイデオロギーを子供たちに教え込むのか、頭が混乱する。

少数民族の民兵の間では、イラク国家の費用で賄われるハシュドの給与名簿に載るために激しい競争が繰り広げられている。これは、イランの積極的な拡大政策を推進するために、これらのグループが互いにしのぎを削るという、危険な力学を生み出している。ハシュド系の民兵は、違法な検問や地元企業からの「保護費」を強要して何百万ドルもの金を得ている。

貧困にあえぐキリスト教徒やヤジディ教徒の農民は土地を奪われた。モスルにはハシュドの経済的な拠点があふれ、対立する派閥が地元経済のありとあらゆる部門を支配し、復興資金を独占しようと競い合っている。

このあからさまな腐敗に対抗するため、歴代のイラク首相は、最も悪質な民兵を他の場所に移動させることを目指した。しかし、これらの派閥はバグダッドの命令に背き、混乱を引き起こすために支持者を集め、イラン大使やハシュド指導者のような有名人を後ろ盾にして、自分たちの国家に戦いを挑んだ。

ハシュド派による、イラク全土の地方レベルでの永続的な定着のための努力は、彼らが昨年10月の選挙において惨敗した影響を軽減するため、徹底的に抗った際に行われたものである。これらの寄生体は、社会のあらゆるレベルを支配すれば、自分たちは追い出されることはないと考えているのだ。彼らは、敵対する政党に自分たちの閣僚としての地位を認めさせ、イラクの統治システム全体の中で強力な地位を維持することを望んでいる。

ヒズボラがレバノンをイスラエルとの戦争に引きずり込む手段を持ち、ハシュドがイラク経済の大部分を支配しているとき、これらの国家が一貫した国家として存続する望みはほとんどないだろう。

バリア・アラマディン

レバノンのヒズボラと同様に、これらのグループは重要な国境地点を支配することで、イラクの統治システムを掌握し、地域貿易を支配し、関税収入が国家の財源に届くのを阻止しているのである。

これらの地域は、こうした過激派が売りさばく武器、麻薬、洗浄された資金、偽造品であふれかえっている。アサド・マフィア、ヒズボラ、ハシュドは、ヨルダン、GCC、その他のアラブ諸国を大量の麻薬で溺れさせようと結託している。世界が認識していないのは、これらが散発的で雑多な活動ではなく、イランとその代理勢力が地域を支配し、ライバル国家を内乱状態に陥れようとする幅広い戦略の一部であるということである。

したがって、アラブ諸国は、この地域全体の脅威に対抗するための全体的かつ強固な戦略をもって、最高レベルで対応する必要があるのだ。イラクとレバノンの選挙結果が尊重され、政府機関がこれらの国全体に権限を拡大するのに必要な能力を与えられ、制御不能な準軍事勢力がその結果生じる空白を支配することがないようにしなければならない。また、イラク政府は、準軍事勢力によって行われる文化的、社会的、思想的な洗脳計画を取り締まる必要がある。

国家は、自国領土内の武力行使を独占しなければ、真の主権者とはいえない。ヒズボラがレバノンをイスラエルとの戦争に引きずり込む手段を持ち、ハシュドがイラク経済の大部分を支配しているとき、これらの国家が一貫した国家として存続する望みはほとんどないだろう。

イランがスンニ派、クルド、シーア派を互いに対立させていることで発生している、ニネベにおける複雑な民族と宗派の間の地域レベルの激しい緊張状態は、国家レベルでも再現されている。

イラクの社会構造を破壊し、民主主義制度を弱体化させることで、いつかは必ず内戦と国家崩壊に陥ることについて、イランは気にも止めないだろう。

実際、イランはこの破滅的な結末を望んでさえいるかもしれない。このような混乱を利用すれば、イランの代理勢力が、粉々になった国家のアラブ的アイデンティティを永久に消し去り、残った瓦礫の上に覇権を確立できるかもしれないと考えているのである。

・バリア・アラマディン氏は受賞歴のあるジャーナリストで、中東および英国のニュースキャスターである。彼女は『メディア・サービス・シンジケート』の編集者であり、多くの国家元首のインタビューを行ってきた。

 

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