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悲観と楽観の狭間で、準備が最大の武器となる

国家および組織の崩壊を防ぐには、あらゆる人を保護するために優先順位を決定することが不可欠だ。(資料/AFP)
国家および組織の崩壊を防ぐには、あらゆる人を保護するために優先順位を決定することが不可欠だ。(資料/AFP)
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21 Feb 2023 02:02:52 GMT9

世界において急速に事態が展開し、リスクが顕著となり、既に不安定な軍事、安全保障、経済、生活状況のさらなる悪化を招く中、多くの疑問が生じている。我々はこういったリスクを認識しているだろうか。それに対処する準備はできているのだろうか。

1929年に始まった世界恐慌以来最悪のものと考えられた、2008年9月に発生した世界的経済危機について振り返ってみよう。世界経済に大打撃を与えたこの危機は、米国から始まり、世界中に波及し、世界最大級の金融機関を揺るがした。2008年に米国内だけで19の銀行が破綻し、私が当時「終末の日」のようだと表現した一連のパニックを引き起こした。

3年前、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが世界を席巻し、深刻な長期的影響をもたらした。馴染みの生活は一変した。空港、学校、施設が閉鎖され、新型コロナウイルス感染症が世界中に蔓延して、死者数は増加し、失業率は危険な水準に達した。世界の経済損失は推計14兆ドルで、企業の倒産による長期的損失については言うまでもない。

現在の経済状況および生活状態の悪化の原因は、新型コロナウイルス感染症の発生だけではない。世界が安堵のため息をつくとすぐに、新たな戦争が始まった。形を変えた世界戦争に近いような、間もなく開始から1年を迎えるロシアとウクライナの戦争だ。この戦争の影響は直接交戦する両国の人的、軍事的損失にとどまらず、はるかに広範に及び、西欧だけでなくあらゆる国々に大きな影響を及ぼす経済戦争が始まった。

この戦争がいつ終わるのかは誰にも分からない。その重荷はヨーロッパおよび世界の経済を蝕み、これ以上長期化もしくは拡大化すれば、崩壊し、壊滅しかねないほどだ。戦争を原因とする英国などの一部の主要国の国民の生活状況悪化は実に恐ろしい。急騰する物価、貧困、失業、倒産だけではない。最大の脅威は、ウクライナ国土で米国および西洋がロシアと対立することで、収拾がつかない事態になることだ。

我々の経済、社会、組織の強化を最優先すべきだ

ハラフ・アル・ハブトゥール

最近の世界情勢を綿密かつ客観的に観察すれば、世界大戦の太鼓の響きが大きく明確に聴こえてくる。米国と方針を同じくする勢力と、中国や北朝鮮をはじめとする親ロシア派国際体系の間で、世界的な分断と不一致が再発している。

軍と核の武力誇示、宇宙諜報活動、最新の弾道ミサイルおよび極超音速ミサイルのテスト、偵察・交戦ドローンの普及、紛争当事者間の脅し合いが見られる中、各国は嵐を乗り切り、こういった潜在的リスクの影響を克服するために、経済・食料・社会の安全保障面での対応と準備について再考しなくてはならない。

それゆえ、重要度に基づいた対応を行い、自国の経済、社会、組織の強化を最優先すべきだ。悲観からではなく、楽観と自衛への関心から、このことを強調したい。この非常に不安定で危険な世界的ムードの中では、優先順位をつけ、最重要事項に注力することが不可欠だ。我々は最近、新型コロナウイルス感染症による危機に驚かされたばかりだ。経済サイクルを妨げる突然の急速な状況展開によって全てが崩壊するのをなす術もなく見ているつもりだろうか。

経済は生活の柱であり、組織的取り組みは経済の土台である。それゆえ、今日の世界につきまとうリスクによって公的・私的組織が崩壊することを防ぐことで、経済を保護しなくてはならない。

経済サイクルを進め続けなくてはならないが、慎重にすべきであり、組織的取り組みを再構築しなくてはならない。実際、楽観的見通しは企業と地域社会を守り、生活に啓発をもたらす。あらゆる状況において、組織的取り組みの継続は、組織を動かす人々、管理を担う人々の責任であり、この切迫した世界情勢の中で国家および組織の崩壊を防ぐには、あらゆる人を保護し、仕事を継続できるように優先順位を決定することが不可欠だ。

当面の保留が可能な費用がかさむプロジェクトの停止、対外支出の削減、重要プロジェクトだけの完遂に注力することから始めなくてはならない。突然の経済ショックや、今日最も恐れられている破滅的な世界核戦争につながる過ちの影響から、私的・公的組織と投資を保護するために、キャッシュフローを維持し、できる限り支出を抑えることが目標だ。

要するに、現在のところ、悲観論か楽観論かの問題である。楽観論をとるならば、組織的取り組みの継続を保証し、それを担う人々と受益者を保護するためのロードマップ作成に努めるべきだ。また、このロードマップは、いかに厳しい状況下でも前に進む手段を確保するものでなくてはならない。世界情勢が悪化し、戦争が拡大・激化した場合、利用可能なキャッシュフローが自己防衛、生き残り、継続を保証するのに重要な役割を果たすだろう。

ロシアとウクライナの戦争と軍拡競争による損失は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックがもたらした損失よりはるかに大きい。最近トルコとシリアを襲い、何万人もの犠牲者を出し、甚大な物的損失をもたらした地震の壊滅的影響から、我々は何も学んでいないのだろうか。

常に警戒を怠らず、周囲で起こっていることに気を配る必要がある。楽観主義には、迫り来るリスクに対処する準備をし、最悪を回避する措置を講じることが欠かせない。流動資産とキャッシュフローが、最重的な決定権を有し、先へ行けるか置き去りにされるかを決める時がやってくる。今こそ適切な行動をとるべき時だ。

  • ハラフ・アル・ハブトゥール氏はアラブ首長国連邦の優秀な実業家 であり著名人。国際政治関係への洞察、慈善活動、平和を促進する取り組みで知られている。外国で長年にわたって自国の非公式アンバサダーとして活動してきた。
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