
マジド・ラフィザデ
イラン政府による軍用無人機(ドローン)プログラムについて調査し対応することは必要不可欠だ。このプログラムはイランのテロ活動や、外国におけるかく乱行動の柱となっている。
イランの無人機プログラムは、イスラム革命防衛隊(IRGC)の重要な1部門だ。その歴史は1980年代にさかのぼるが、イランの技術が大きな進歩を遂げたのは、アメリカの無人機を捕獲しリバースエンジニアリングを行うことができた2010年以降だ。
イラン政府は民兵組織やテロ組織に無人機を供給していることが知られている。そのいい例がイランの支援を受けているイエメンの反政府勢力フーシ派だ。
フーシ派は過去数回、無人機による攻撃について犯行声明を出している。2021年には爆発物を搭載したドローンをサウジアラビア南部の都市ハミースムシャイトにある空軍基地に向けて飛ばしたし、2019年にサウジアラビアの石油産業の中心地にあるサウジアラムコのプラント2基を攻撃したことも認めている。
後者で標的になったのはアブカイクにある世界最大の石油処理施設と、フライスにあるサウジで2番目に大きなダンマン油田だった。2021年のある1カ月間だけを取っても、フーシ派は40を超える無人機とミサイルをサウジアラビアに向けて発射したとされる。
フーシ派はアラブ首長国連邦(UAE)に対しても無人機攻撃を行っており、昨年、アブダビでタンクローリー3台を吹き飛ばし、3人を死亡させている。
イラン政府の軍用無人機産業への関心はこの10年、大いに高まっているが、その理由は無線機のコストパフォーマンスのよさや(攻撃を行う際の)匿名性、スパイ行為や情報収集にも活用できる点、そして標的に大きなダメージを与えられる点だ。
イスラム革命防衛隊のドローン部隊を率いるアクバル・カリムル司令官は2020年のタスニム通信の取材に対し、こう答えている。「無人機は将来、世界の軍隊の活動にとっても、われらが愛する祖国の軍隊にとっても、最良の武器そしてシステムになるだろうと見られる。コストと損害を最少レベルに抑えつつ、作戦区域から最短の時間で価値ある情報を得ることができる」
イラン政権の軍用無人機産業への関心はこの10年、大いに高まっている
マジッド・ラフィザデ
非国家的な組織に加え、イラン政府は外国政府の軍隊への無人機の提供を増やしている。
例えばイラン政府は、ロシアに対し、いわゆる「カミカゼ・ドローン」を供給してきた。
その結果、ウクライナ外務省はキーウ駐在のイラン大使の承認を取り消すとともに、イラン大使館の外交要員の人数を減らす措置を取った。
欧州連合(EU)も、イラン政府が「無人機の開発およびロシアへの引き渡し」を通して「ロシアのウクライナに対するいわれなき不当な侵略を軍事的に支援」しているとの立場を取っている。イギリスのジェームズ・クレバリー外相は「これらの攻撃を可能にすることによって、こうした(制裁対象になったイランの)個人および製造業者は、ウクライナの人々に言葉にならないほどの苦しみを与えている」と述べている。
イランの指導者たちは自国の力を誇示するとともに、自分たちが戦争や紛争における力のバランスを特定の方向に動かすに足る軍事的能力を備えていることを示そうとしている。またイランは、中国が自国製ドローンの次の得意先になりそうだと吹聴してもいる。
情報省の高官は先週、こう述べている。「わが国の力は、中国が1万5000機の無人機を購入するために列に並ぶくらいのレベルまで成長した」。
この高官はこうも述べている。「わが国が東を向くようになったその日から、西側はそれを許容できなかった。(その結果の)1つの例がウクライナの戦争だ」
無人機の危険な進歩と拡散の次の段階として、イラン政府は無人機の生産プロセスを早めて効率化を図ることを目的に、組み立てラインを外国に作ろうとしている。また、「世界有数の無人機製造国イラン」の売り込みにも余念がない。
米国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー戦略広報調整官によれば、イランは現在、ロシアに無人機の組み立てラインを設置する計画を進めているという。
ウォールストリート・ジャーナルは今月、イランとロシアが「ウクライナでの戦争のために、イランが設計した無人機を少なくとも6000機、製造できる新工場をロシアに」建設する計画を着々と進めていると報じた。
「これは両国が協力を深めていることを示すさらなるサインだ」と同紙は伝えている。また同紙は「両国の軍事的同盟関係が生まれつつあるがその一端として……1月初めにイランのハイレベルの代表団がロシアに飛び、工場の予定地を訪れるとともに、プロジェクトを軌道に乗せるために細部を詰めた」とも報じている。
イラン政府の無人機プログラムは明らかに平和目的ではなく、情勢の不安定化や紛争を扇動することを意図したものだ。イランの保有する軍用無人機の例としては「シャヘド」などがある。シャヘド129は8基のミサイルを搭載可能で滞空可能時間は24時間、航続距離は1700キロメートルに及ぶとみられている。
モハジェル6はイラン国防軍需省によれば「攻撃作戦を実行するため、レーザー誘導ミサイルやさまざまな種類の爆弾を搭載できる」という。
まとめて言えば、イラン政府の無人機プログラムはIRGCによって推進され、中東および世界のテロや不安定化の要因となっている。
軍用無人機の進歩や拡散、テロ組織や民兵組織を含む同盟相手への輸出を阻止するために、イランの現体制に対する適切な制裁を科すことは国際社会にとって責務だ。
・マジド・ラフィザデ博士はハーバード大学で教育を受けたイラン系アメリカ人の政治学者。ツイッターのアカウントは@Dr_Rafizadeh