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イスラエル社会の新たな分断がパレスチナ人にもたらし得る利益

イスラエルによるパレスチナの土地の収奪に対する抗議行動後のイスラエル軍との衝突中に国旗を掲げる高齢のパレスチナ人男性。(AFP)
イスラエルによるパレスチナの土地の収奪に対する抗議行動後のイスラエル軍との衝突中に国旗を掲げる高齢のパレスチナ人男性。(AFP)
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04 Jan 2023 09:01:11 GMT9
04 Jan 2023 09:01:11 GMT9

オサマ・アル=シャリフ

イスラエル史上最も極端で国粋主義的で宗教至上主義的な政府の就任宣誓式から2日後、何十万人ものパレスチナ人たちが、パレスチナで最古かつ最も人気のある民族解放運動であるファタハの設立58周年を祝った。ヨルダン川西岸地区やレバノンの難民キャンプに加えて、ハマスが支配するガザ地区においてすらパレスチナ人たちは、このファタハの記念日を祝ったのだ。あえて言えば、60年近くが経過しても、占領地とディアスポラ先のいずれにおいても、この草の根運動が依然としてパレスチナ人たちの強い支持と敬意の対象となっている事実を、この祝賀の様は明確に示している。

しかし、パレスチナ人たちの植民地化への抵抗運動はずっと古く、英国の委任統治下の旧パレスチナ時代の1930年代初頭、数万人のユダヤ系ヨーロッパ人が入植者として流入し始めた頃にまでさかのぼることが出来る。他方、イスラエルは5月に建国75周年となり、多数の壮麗な式典が予定されている。

記念日を制定することや記念日にまつわる象徴性を別として、パレスチナの国家としての自主性、解放、独立、自決権を求める1世紀にも及ぶ苦闘は、第一次世界大戦直後も現在も同様に激しいままである。そして、建国75周年記念を迎えるイスラエルも、現実には、その激動の歴史を通じて直面し続けて来た課題に今日も依然直面している。目の前に聳え立つかのように挑戦的なパレスチナのアイデンティティだ。

植民地主義英国と国際的なシオニズム運動の共謀、米国と西側諸国の共犯関係、土地の強奪、パレスチナの歴史とアイデンティティを抹殺しようとする試み、民族浄化、村落の徹底破壊、民間人の略式処刑、あからさまな戦争犯罪、強制移住、虐殺、何千人もの投獄が前世紀の特徴的な出来事だった。しかし、これら全てをもってしても、イスラエルの建国の父たちの期待は実現されなかった。その後の世代のパレスチナ人たちがやがて忘却されてしまうことはなかったのだ。

数十年後、イスラエルとパレスチナ人たちは、占領という切っても切れない絆によって結ばれている。一方が占領し、他方が占領される関係によってである。イスラエルが自らをこの束縛から解放しようと何をしても、皮肉にも、占領という関係の泥沼にイスラエル自身が深く沈み込んでしまっていることに気づかされるばかりなのだ。

そして、現在、国粋主義的で宗教至上主義的で、公然と人種差別的な政府によって、イスラエルは自らを解放する最後の試みを行っている。勝ち誇ったベンヤミン・ネタニヤフは、イランの核開発計画を失敗させることに加えて、ヨルダン川西海岸地区とゴラン高原への入植地建設が彼の政権の最大目標だと明言した。前者の目標について出来ることは地政学的な制約によりネタニヤフ首相にはあまり無いものの、同首相の寄せ集めの連立パートナーたちは不法な入植地の建設を増強することをこれまで以上に待ちきれない様子だ。

イスラエルにおける極右勢力の隆盛とその拡大路線は、長期的にはパレスチナの大義の役に立ち得る。

オサマ・アル=シャリフ

イスラエルによるパレスチナの領土の占領について法的原則に照らした意見を国際司法裁判所に求める決議が国連総会で採択されたことに対して、ネタニヤフ首相は、ユダヤの人々を自身の故郷の占領者と見なすことは不可能だという開き直ったコメントを述べた。同首相は、こうした発言により、パレスチナ人のアイデンティティを完全に打ち消し、パレスチナ人がその先祖の土地に対して持つ歴史的な絆を破断したいと思っている。

国連総会での動議に反対票を投じた欧米諸国の偽善にも関わらず、この投票と国際司法裁判所の回答は、パレスチナの自決権と国家としての自主性を求める主張は一層勢いづかせるだろう。

パレスチナの国民運動を分断する政治的分裂は措くとして、イスラエルにおける極右勢力の隆盛とその拡大路線は、長期的にはパレスチナの大義の役に立ち得る。無論、数日間や数週間は、パレスチナ人に対する圧迫が前例の無いレベルにまで激しさを増すだろう。すくなくともC地区を対象とした公式な併合は言うまでもなく、さらなる脱法的な殺害や家屋の破壊、不法な入植地建設、宗教施設への冒涜、民族浄化が拡大するのだ。しかし、イスラエル社会の遺伝子構造を変更しようとする極右の試みにより、イスラエル社会と国家内の分断は深まり、やがて崩壊する見込みが強い。

建国75周年となるイスラエルが、若く前向きな国家と見なされ得るのか、老い、内向的で、偏執性の国家と受け止められるのかは分からない。現在、イスラエル社会内部の修正主義の潮流が、帰還法に関連する法律の改正によりユダヤ人の移民を制限しようとし、他方、2030年にはイスラエル人口の16%を占めることになる超正統派のハレディーム派はネタニヤフ首相の連立政権の一角を占め、生活様式、生活水準、教育、女性などに関連した法律の改正を欲している。

その一方で、国粋主義者たちは、イスラエル国内の非ユダヤ市民に対して制約を課したいと考えている。人口の20%以上を占めるパレスチナ人を含めると、地中海とヨルダン川の間でユダヤ人はたった47%に過ぎない。イスラエルがその目標である独占的なユダヤ人国家の実現を計るにあたって最大の脅威は人口統計学なのである。

それぞれに陰影と複雑さを持った2つの国民意識がついに紛争に突入しかけている。これは、イスラエルが銃や砲では勝つことが出来ない戦争である。他方、占領地でも火災の拡大は避けられないと考えられる。イスラエル史上最も極右の政権が、過去数十年間想像も出来なかったような方法で、今まさにパレスチナの大義の軌道を変更しようとしているのだ。

  • オサマ・アル=シャリフはアンマンに拠点を置くジャーナリスト、政治コメンテーター。Twitter: @plato010
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