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意見を違えつつもシリアで協力関係にある米露

01 Dec 2019
シリア北東、ハサカ県のアイン・ディワルの村をパトロールするアメリカ兵を見つめるシリアの少年(AFP)
シリア北東、ハサカ県のアイン・ディワルの村をパトロールするアメリカ兵を見つめるシリアの少年(AFP)

シリア内戦にロシアが介入したことで、アメリカ側は枠組みをいくつか変えることになったかもしれない。しかし、少しの間を置いて、アメリカ政府はロシア政府をパートナーとは呼ばないまでも、紛争の関係国になることを黙認した。

シリア内戦への対応について、アメリカ政府とロシア政府にはひとつ大きな違いがあった。アメリカ側はアサド政権を打倒することが目的だった一方、ロシア側はアサド政権を存続させ、アメリカの目論見をくじこうとしていたのだ。

この状況はISILとの戦いによって変わった。ISILとの戦いと、アルカイダやアル=ヌスラ戦線の関連組織との戦いのどちらを優先するかについて、オバマ政権内で長期にわたる審議が行われた。そして2014年秋以降、アメリカ政府はISILの打倒を最優先としてきた。

アメリカがISILとの戦いを継続する一方で、ロシアはアメリカ軍の手の届かないパルミラやデリゾールといった地域での戦闘ができた。そのためアメリカ軍は、ロシア軍をシリアの西側、いわゆる「有益なシリア」と呼ばれる地域からロシア軍を遠ざけることができていた。これらの地域では穏健派の武装反政府組織の勢力が強かったため、アメリカは反政府勢力の戦闘を支援することができた。

その当時、ヨルダンに共同作戦センターを設立することをロシアが提案したが、アメリカはそれを拒絶した。振り返ってみると、アメリカがアサド政権への働きかけを拡大して政府の力を弱めていったのには、この提案を拒否したことが一因となったのかもしれない。ただ一方で、反政府武装勢力の排除を長引かせ、民間人の死傷者増加につながったかもしれない。

現在では、特にシリア北東部にて、アメリカとロシアは協力している。しかしアメリカ側は態度を曖昧にしており、そのことが両国の協調を困難にしている。その曖昧さの原因は、アメリカ政府内の主要な勢力、特にホワイトハウスとペンタゴンで意見が完全に一致していないことにある。

トルコが10月に「平和の泉」という名の作戦を開始したため、アメリカは同地域から兵士を引き揚げた。アイン・アル=アラブの南30kmにあるメトラス基地も放棄された基地のひとつだ。11月1日にアメリカ軍はメトラス基地に戻り、アメリカの指導者は、この地域に新しい軍事基地を設立する上で必要な物資の輸送にこの基地を使うと述べた。ロシア軍警察が11月15日に基地に到着したが、アメリカ軍兵士はその前に再び基地を去った。

両国がクルド人というカードを求めるのは、リスクに満ちた動乱地域における重要な交渉材料になるからだ。

ヤサル・ヤキス

米国とロシアの間には暗黙の合意、もしかすると明示的な合意があるかもしれない。戦地においては両国とも一致あるいは相反するさまざまな利害があり、不要な対立を避けるため最善を尽くすのは自然なことだ。

シリア内戦について、アメリカとロシアは2つの点で意見を違えている。ひとつは対立をどう終わらせるかという点。アメリカはバッシャール・アサドをシリアの舵取りから一切閉め出すことを望んでいる一方、ロシアはアサド政権を支持している。

もうひとつは、シリアにおけるクルド人の将来的な立場に関するものだ。この問題について両国の政策は似ているものの、全く同じというわけではない。両国がクルド人というカードを求めるのは、リスクに満ちた動乱地域における重要な交渉材料になるからだ。アメリカはクルド人の身分保障を推進し、それによってシリア政府へ圧力をかけることを望んでいる。そうすれば望む形で内戦を終わらせられるからだ。アメリカとしては、クルド人側が自らの領土と宣言したジャジーラ、コバニ、アフリンをそのままクルド人に領有させ、ちょうどイラク北部と同じように、彼らの目標を地域の自治権獲得へと向けさせることを望んでいる。より長期的な視点ではクルディスタン地域を独立させ、それをイスラエルの安全保障に役立てたいというねらいがある。

ロシアは、シリアの領土保全においてクルド人の身分を認めることに賛成している。これは、クルド人人口が大多数を占める自治体への権限移譲という形で実施されるかもしれない。この問題に関して、ロシアは長期的な先行きについて強い姿勢を取ってはおらず、自国のダイナミクスの中で成り行きに任せるつもりであるようだ。

クルド人問題についてはトルコも関係してくる。トルコがシリアで展開したさまざまな軍事作戦は、南部国境でクルド人の居住地帯が発生することを防ぐねらいがあった。トルコのメヴリュット・チャヴシュオール外相は、この地域からクルド人民防衛隊(YGP)の戦闘員を一掃できないのであれば、トルコ政府がさらなる軍事作戦を展開する可能性があると述べた。この挑発的な声明は後に、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相の「トルコ政府、はシリアでこれ以上の軍事作戦を望んではいないとロシア政府に対して保証した」という発言によって否定された。これを受けて、トルコ政府はチャヴシュオール外相の声明を否定した。

トルコのシリア政策は、アメリカやロシアとは大きく異なる。こうした多様な立ち位置を考慮すると、シリア内戦の早期解決を期待することは難しい。残念ながら、関係する諸国が現実的かつ共通の立場を取ることに同意しない限り、シリアの人々の苦難は続くだろう。

ヤサル・ヤキスはトルコの元外務大臣で、与党・公正発展党の創設メンバーである。Twitter: @yakis_yasar

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