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水耕栽培がサウジアラビアの持続可能な農業の未来を拓く

中東は世界でも特に水不足が深刻な地域であり、とりわけアラビア半島では、資源を最大限に活かせるスマートな方法が求められている。(提供)
中東は世界でも特に水不足が深刻な地域であり、とりわけアラビア半島では、資源を最大限に活かせるスマートな方法が求められている。(提供)
サウジアラビアの有望なスタートアップ、レッドシー・ファームを共同創設したライアン・レファース氏(左)とマーク・テスター氏。(提供)
サウジアラビアの有望なスタートアップ、レッドシー・ファームを共同創設したライアン・レファース氏(左)とマーク・テスター氏。(提供)
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19 Jan 2022 11:01:49 GMT9
19 Jan 2022 11:01:49 GMT9
  • 設定次第で温度、pHバランス、栄養素や水の供給などの条件を細かく管理できる
  • 世界でも特に水不足が深刻なサウジアラビアで再生水を利用した手法は理想的だ

ラワン・ラドワン

ジェッダ:水耕栽培とは、土を使わず、限られた水量で植物を栽培する科学だ。農法としては多くの利点がある。繊維状の根を発育させて養分の吸収を良くし、根腐れのリスクを軽らし、植物の成熟を早める効果がある。

水耕栽培の庭園は、最小限のスペースで栽培できる革新的な設計になっており、従来の農業の半分の時間で果物、野菜、花を育てることができる。水も90%少ない使用量で済む。

半島の80%を占めるサウジアラビアは、水耕栽培などの持続可能な農業技術を使用して、2030年までに廃水を50%削減することを目指している。(提供)

史書で分かる範囲で、水耕栽培システムが使われた記録が最初に出てくるのは バビロンの空中庭園、アステカの水上庭園、古代中国の庭園である。

現代では、1997年にNASAがミール宇宙ステーションで行った無重力環境におけるマメの栽培実験がきっかけで、宇宙での持続可能な農業が期待されている。エアロポニックスは水耕栽培の一種で、水に浮かべるのではなく、植物の根に霧を吹き付けて栄養を与える手法だ。

近年は水耕栽培を使う人が飛躍的に増えた。既存の農業従事者と伝統的も農業の経験を全く持たない人たちも、技術の進歩とそれがもたらすメリットの可能性を活かそうとしているからだ。

降雨量が少なく、利用できる河川や湖の淡水が限られており、再生不可能な地下水の埋蔵量が減少している中東は、地球上で最も水不足が深刻な地域だ。一方で、地域の水の需要は急増し、結果として、一人当たりの水消費率は世界最大級になっている。しかも人口増加と経済発展の状況からさらに需要が増え続ける可能性がある。

地球上で特に乾燥した地域であるアラビア半島の大部分では、雨は滅多に降らず、降水の多くが砂漠の砂に流れ込むか、瞬く間に蒸発する。100万平方マイル以上に広がるエリアには、永続的に流れている川や小川がほとんどない上、その南部は世界最大級の砂漠に覆われている。

サウジアラビアはアラビア半島の約8割を占め、地域内でも有数の乾燥した国である。水資源は乏しく、気候条件は厳しい。その環境のために地下水が塩類化する。これはサウジアラビアの農業セクターに常に影響を及ぼしている問題だ。

昨年10月、サウジアラビアの代表は、開発途上国の77カ国グループと中国と共に、第76回国連総会の第2委員会(経済・金融関連)に出席し、サウジアラビアが持続可能な農業を構築するための措置を講じていることについて話した。2030年までの廃棄物50%削減を目指して消費習慣を改善し、イノベーションを奨励し、農業分野で働く女性や若者を後押ししていくと語った。

サウジアラビアの環境・水・農業省(MEWA)は、将来の食糧問題を見据え、土地に合わせた垂直農法という選択肢を模索しており、その開発のために2,700万ドルを割り当てた。

サウジアラビアの政策立案者が直面している課題は、中東や北アフリカなどの多くの国で政策立案者が向き合っている問題と変わらない。状況を悪化させないためにどうするか、具体的に言えば、農業従事者が直面する問題を解決するために何を備えていくべきかということだ。

農業科学者によると、現在の農業収穫量を維持し、需要に見合う生産量と食品の質の向上を実現するためには、適応策への大規模な投資が必要だという。とりわけ乾燥気候やステップ気候の国では、水耕栽培を利用した垂直型農業設備による課題解決はひとつの可能性である。

UAEのドバイにあるアル・バディア・ファームは革新的な水耕栽培技術を用いた屋内垂直農場で、年間を通して果物や野菜を栽培している。(カリム・サヒブ / AFP)

近年、サウジアラビアのいくつかの農業関連事業が、集中的な調査を実施し、データを収集し、適切なメカニズムを工夫した上で水耕栽培システムを使い始めている。サウジアラビアの人口と食糧需要の急増に対応できるようにするのが目的だ。

水耕栽培の大きな特徴は再生水を利用することだが、それ自体にも課題が伴う。水のリサイクルは比較的単純なプロセスではあるものの、初期投資から毎年のメンテナンスにいたるまで、必要なコストは決して小さくない。植物を育てるのに十分な高い水質を保たなければならないからだ、とリヤドの農業関連事業グリーンマストのトゥルキ・アルドゥヤンCEOは説明した。

水のリサイクルは水耕栽培の一番の特徴だが、そのプロセスにも独特の課題が伴う。(提供)

「当社では毎週、オランダの研究所に水のサンプルを送り、分析報告書で植物が吸収した水の性質を確認しています」とアルドゥヤン氏はアラブニュースに語った。

「こうして水の使用量を制御することでかなり節約できますが、高い水質の確保は簡単なことではありません。当社は水のリサイクルとコスト削減を実現していますが、その状態を一貫して保つために多くの管理と評価が欠かせません」

アルドゥヤン氏は、温室で使用する土の種類から水耕栽培で植物の耐久性や生存能力をテストすることまで、試行錯誤をしながら判断と比較を繰り返し、有効な策を見極めてきたと語った。特定の種類のトマトでテストしたところ、最長9カ月間実をつけ、14メートルの高さに成長したこともあるという。

自身の経験から、アルドゥヤン氏は、水耕栽培システムはサウジアラビアの多くの農業従事者にとってさまざまな理由から魅力的な選択肢だと述べた。

ファームから食卓へ農産物を届けることは言うほど簡単ではないという。貨物を適切な温度に保ち、新鮮な状態のまま、適切な時間内にサプライヤーに配達できるようにするなど、流通と輸送の課題があるからだとアルドゥヤン氏は説明した。

「これは、水耕栽培の企業が直面している大きな障害であり課題です」とアルドゥヤン氏は言った。「サウジアラビアの国土はヨーロッパと同じ広さなので、産地から一番遠い地域に農産物を輸送するには高額の費用がかかります。作物を育てて収穫するだけのビジネスではないのです。それでも、サウジアラビアはわずか数年のうちにかなり前進しました」

中東は世界でも特に水不足が深刻な地域であり、とりわけアラビア半島では、資源を最大限に活かせるスマートな方法が求められている。(提供)

「MEWAはサウジアラビアの水耕栽培を支援していますが、適切な手続きに沿って行われるように今よりも厳しい規制が必要です。MEWAやバイヤー、輸送業者からの支援がさらに手厚くなれば、長期的には農業従事者の助けになりますし、実際にそうなるはずです。当社設立から3年がたち、経費は最初のころの何分の1かまで減りました」

「例えば、水耕栽培でできたプチトマトを購入すれば、通常のトマトよりも鮮度が長持ちするので安心です」

レッドシー・ファームも環境に配慮した持続可能な塩水の農業システムを採用しているサウジの企業だ。この技術で、農業従事者は従来の農業システムよりも大量に品質レベルの高い塩水を使用して栽培と温室の冷却ができるので、農産物を供給できる栽培期間を大幅に長くできる。

レッドシー・ファームの共同創設者であるマーク・テスター氏は、環境に配慮した持続可能な塩水の農業システムを採用していると述べた。(提供)

レッドシー・ファームの共同創設者でキング・アブドゥッラー科学技術大学砂漠農業センターの副所長も務めるマーク・テスター氏は、水耕栽培システムは小麦など大容量の商品作物には適さないが、レッドシー・ファームの手法ならさまざまな作物で迅速な投資回収が可能だと述べた。

「政府の立場からすると、温室は(何より持続可能性のない)地下水の採水で生み出す価値を最大化し、その貴重な資源を最も効率的に活かす絶好の選択肢です」とテスター氏はアラブニュースに語った。

「レッドシー・ファームのテクノロジーを使えば、生産に伴う環境負荷がさらに軽減されます。水の使用量や二酸化炭素の排出量が減り、コストが下がり、農業従事者の収入も増えることを考えるとそれは環境にも良い選択です」

水耕栽培の別の利点として、農薬や除草剤を大量使用する必要がないことも証明されている。

水耕栽培で作られたトマトは、従来の農法で作られたトマトよりも鮮度が長持ちすると言われている。(提供)

「温室の水耕栽培は、空気と水の両方を適切に管理できるため、病害虫の被害を最小限に抑えられます。そのため農薬の使用も最低限で済みます」とテスター氏は説明した。「これは、農業従事者にとっては経費節減になり、環境にも良く、消費者はより健康的な食品が食べられるということです。誰もが得をするのです」

「革新的な農業システムのメリットの評価も価値もますます高まっています。西ヨーロッパのように農業向きの条件が揃っている地域でも同様です」

「温室の利用は広く拡大しています。ましてやサウジアラビア南部は、農業や健康的で持続可能な食料生産の面で温室が非常に重要な役割を担っていることは明らかです」

サウジアラビアで近代的で革新的な方法を採用する農業関連事業が増えるにつれ、多くの利点を持つ水耕栽培の訴求力は急速に強まることが予想される。

より広い意味では、水耕栽培と温室を使用した作物栽培は、特に乾燥気候とステップ気候の国の将来世代にとってはさらに賢明な方策であるように見える。その地域は、気候変動、土地の劣化、異常気象の影響に対して極めて脆弱だからだ。

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