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分析:米国禁酒法の失敗がサウジアラビアに教訓となる理由

地元のメディアで語られたり取り上げられたりすることはほとんどないが、サウジアラビアではアルコール飲料の地下市場が急成長していることは、それがもたらす健康面や社会的な部分の問題を含め、周知の事実である。(Getty Images)
地元のメディアで語られたり取り上げられたりすることはほとんどないが、サウジアラビアではアルコール飲料の地下市場が急成長していることは、それがもたらす健康面や社会的な部分の問題を含め、周知の事実である。(Getty Images)
地元のメディアで語られたり取り上げられたりすることはほとんどないが、サウジアラビアではアルコール飲料の地下市場が急成長していることは、それがもたらす健康面や社会的な部分の問題を含め、周知の事実である。(SPA)
地元のメディアで語られたり取り上げられたりすることはほとんどないが、サウジアラビアではアルコール飲料の地下市場が急成長していることは、それがもたらす健康面や社会的な部分の問題を含め、周知の事実である。(SPA)
地元のメディアで語られたり取り上げられたりすることはほとんどないが、サウジアラビアではアルコール飲料の地下市場が急成長していることは、それがもたらす健康面や社会的な部分の問題を含め、周知の事実である。(SPA)
地元のメディアで語られたり取り上げられたりすることはほとんどないが、サウジアラビアではアルコール飲料の地下市場が急成長していることは、それがもたらす健康面や社会的な部分の問題を含め、周知の事実である。(SPA)
地元のメディアで語られたり取り上げられたりすることはほとんどないが、サウジアラビアではアルコール飲料の地下市場が急成長していることは、それがもたらす健康面や社会的な部分の問題を含め、周知の事実である。(SPA)
地元のメディアで語られたり取り上げられたりすることはほとんどないが、サウジアラビアではアルコール飲料の地下市場が急成長していることは、それがもたらす健康面や社会的な部分の問題を含め、周知の事実である。(SPA)
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31 Mar 2022 02:03:55 GMT9
31 Mar 2022 02:03:55 GMT9
  • サウジアラビアのアルコール飲料の地下市場には、健康面や社会的な部分で問題がある
  • 1920年代の米国と比較して考えると、アルコールに関するサウジアラビアの現状における厄介な問題への対処も考慮していくべき

アラブニュース

リヤド:1月6日、ジッダを拠点とする日刊紙オカズ(Okaz)に、サウジアラビアの最も差し迫った課題の一つでありながらほとんど語られることのない、アルコールの問題に注目したサウジ人コラムニストによる記事が掲載された。

同国においては公の場でアルコールに関する話題が扱われるのはまずない中、大胆な内容の記事であった。

その記事の核心は、社会的、宗教的、公衆衛生的に広範な意味を持つ厳しいメッセージであった。サウジアラビアにおけるこれまでのアルコールの扱いには大きな問題があり、議論の必要があるというのだ。

「サウジアラビアのメディアが飲酒の問題を取り上げるのを見た記憶は私にはありませんし、国内で製造されたアルコール飲料を飲んだ結果アルコール中毒が広がったにもかかわらず、サウジアラビアの新聞が、アルコール乱用の問題を思い切って取り上げるのを見た記憶もありません」と記事を執筆したコラムニストのアブドゥッラー・ビン・バキートは書いている。

「私たちはこの問題に現実逃避的な態度で接しているのです。」

筆者は以下のように続けている。「私たちは、まるで酒を飲む者は私たちの息子や兄弟ではないかのような、またこの種のアルコール飲料の犠牲者は貧困層を含む中流階級以下の人々であることに気づかないかのようなふりをしています。その一方で(飲酒を)好む金持ちは、良いワインを密輸して国内で販売する悪質な連中をその金で豊かにしているのです。」

地元のメディアで語られたり取り上げられたりすることはほとんどないが、サウジアラビアではアルコール飲料の地下市場が急成長していることは、それがもたらす健康面や社会的な部分の問題を含め、周知の事実である。

サウジアラビアは若年層の人口が多い国だ。同国における薬物乱用に関する最近の研究報告によると、アルコール、アンフェタミン、ヘロインなどの薬物を使用していると答えたのはサウジアラビア人全体の7~8%で、そのうち70%が12~22歳であったという。

2020年6月に『Substance Abuse Treatment, Prevention, and Policy(薬物乱用の治療、予防、および政策)』誌に掲載された論文「Substance use disorders in Saudi Arabia: a scoping review(サウジアラビアの物質使用障害:スコーピングレビュー)」で、執筆者たちは、サウジアラビアの 「人口分布が若年層に大きく偏っており(全人口の約15%が15~24歳)、その若年層が最も物質使用による影響を受けている 」と警告しているのだ。

アル・カーシム州ブカイリアにあるスライマン・アル・ラジヒ大学医学部に在籍する執筆者たちは、「サウジアラビアにおけるSUD(物質使用障害)研究に関するこの包括的なレビューは時宜を得たものであり、政策立案者と地元の研究者の双方にとってこの問題を理解する出発点となり得る」と結論付けている。

今日のサウジアラビアでは、国民・外国人を問わず、若者たちが飲酒が楽しみの一部になってる地下パーティーに繰り返し参加していることは公然の秘密となっている。

このようなパーティーには、友人同士で集まって飲むものから、信頼できる招待客にのみ当日メッセージで公開される秘密の場所で開催されるプライベートなレイブ・パーティーまで、様々な形がある。

サウジアラビアは、より広い世界に門戸を開きながらも禁酒法を維持しなければならないため、意図せざる結果の法則の犠牲者になる危険性がある。この点で、アルコールの禁止を試みた20世紀初頭の米国に類似しているとも見ることができる。

禁酒法とその根拠となったアメリカ合衆国憲法修正第18条は、禁酒運動家と信仰復興主義者たちの持続的な圧力の産物であった。当時の大統領ハーバート・フーバーは、禁酒法は「動機は崇高で、目的は広範囲に及ぶ偉大な社会的、経済的実験」だと述べている。

しかし、この実験は失敗に終わった。

1920年に施行された禁酒法は、13年の悲惨な歳月の後に廃止された。その第一の影響は、何千もの企業を倒産させ、彼らが雇用していた無数の人々の職を失わせたことである。

第二の影響は、一夜にして新たな闇市場を生み出し、組織犯罪に莫大な利益をもたらす収入源となったことだ。

警察官や酒類取締局の捜査官の間では汚職が蔓延した。

違法な蒸留所、酒場、密造酒販売業者が至る所に出現し、密造酒を飲んで命を落とすケースが続出した。禁酒法時代には、毎年平均1000人にのぼる人々がアルコール中毒で死亡している。

しかし、最も大きな影響は政府自身の側が受けることになった ― 突然、非常に重要な税源が失われてしまったのだ。ニューヨーク州では、全収入の75%を占めていた税源が突然失われ、連邦政府には110億ドル以上の税収不足が発生したと推定されている。

1月のオカズ紙コラムのきっかけは、米国とドイツで学んだ後、2003年からサウジアラビアに戻りキング・サウード大学で教授を務めている経験豊かなサウジ社会学・人類学者、サード・アルソヤン博士のテレビインタビューに対するソーシャルメディア上の反応であった。

バクシートがコラムで書いているように、多くの深刻な問題に触れたそのインタビューの中で、アルソヤン教授は、米国のスーパーマーケットで見られる「小さなボトル」入りのアルコールについてたまたま言及したのだ。彼の同世代やその後の世代のサウジの若者の多くが留学中に日常的に目にするものである。

批判的な人々は、長いインタビューからその短いクリップだけを抜き出して、ソーシャルメディア上に否定的なニュアンスで流布させた、とバキートは書いている。

2010年に発表した『アルアタエフ通り(Al-Atayef Street)』がアラビア フィクション国際賞(International Prize for Arabic Fiction)の候補作ともなった小説家であるバキートは、アルソヤンと彼のように海外で学んだ多くの人々が、祖国に戻って何万人というサウジアラビア人を教えているというのが現実であると述べた。それにより、経済と学問の両面において世界の舞台で競争できる態勢を整えた、知識重視の社会を創るという、アブドゥラー国王奨学金制度の目的が達成されたのだとしている。

ツイッターで3万9000人のフォロワーを持つバクシートは、奨学金制度導入に激しく反対した宗教保守派を非難している。同制度は、2005年の導入後、サウジアラビア人の海外留学生の数を劇的に増加させている。

サウジアラビアの若者が欧米で飲酒の誘惑にさらされてしまうという理由で行われた「奨学金制度の是非を問う戦い」は、すんでのところで制度そのものを反古にし、「私たちを800年前に逆戻りさせる」ところだった、とバクシートは書いている。

もし、アル・ソヤン教授をはじめ、これまでに留学したサウジアラビア人が、アルコールの悪習に触れることを恐れてその機会を与えられなかったら、「サウジの巨大銀行、高度な病院、アラムコなどの巨大企業の経営、サウジ基礎産業公社(SABIC)やアルマライの設立はできていただろうか」とバキート氏は問いかける。

そう、彼は認めた。「このルネッサンスの構築に参加した誰もが、『酔わせるもの』の誘惑に惹かれたのだ。ある者はその経験をし、ある者はそれを避けた」

「しかし、彼らは皆、帰ってきて、自分たちの国の建設に貢献したのだ」

また、アルコールについて話すことさえタブー視されている状況は、王国におけるアルコール乱用の規模や性質に関する調査に影響を及ぼしている。その結果、当局の対応能力が低下し、家庭が荒廃し、医療やリハビリに多額の費用を国家が負担する医療問題が発生している。

スライマン・アル・ラジ大学の研究者たちは、アルコール依存症を含むサウジアラビアの物質使用障害というテーマで発表されたすべての文献のレビューを行った。そして、このテーマに関する同国の知識が圧倒的に不足していることを明らかにし、2020年6月、学術誌『薬物乱用の治療・予防・政策(Substance Abuse Treatment, Prevention, and Policy)』に寄稿した。

彼らが文献で見つけることができたこのテーマに関する23の論文は、すべてが「時代遅れで、方法論が弱く、質が低い」ものだった。いずれも西部、中部、東部の病院をサンプルとしており、女性を含むものは2つだけで、最新のものは2013年に発表されたものだった。最後の研究が行われてから10数年の間に、薬物乱用の問題は確実に悪化していた。

現在、サウジアラビアでは、「物質使用問題を抱える人の絶対数が多いと思われる。人口分布が若者に大きく傾いており、若者が物質使用の影響を最も受けるからだ」。

「宗教的に深く保守的な伝統を持ち、バランス、自制、慎みというイスラムの原則に支えられてきたサウジ社会の変化」を考えると、アルコールと薬物乱用の問題に対するさらなる研究が、緊急に必要であると思われる。

もちろん、こうした調査結果を否定し、王国では昔からアルコールが密かに消費されてきたと主張する人もいる。

「これは飲酒者の年齢とは関係ない。60代、70代でウイスキーやワインを消費する人はたくさんいるし、何十年もそうしてきた」と、あるサウジ国民は匿名を条件にアラブニュースに語っている。

「酒を飲む人は、闇市で、とんでもない高値で買うことができる。有名ブランドのものを買えない人は、結局、地元で作られた自家製ビールを買うことになるが、それは毒であり、あらゆる種類の健康被害を引き起こす」と、彼は続けた。

アルコールの話には、もう一つ考慮すべき点がある。

王国を観光客や外国人居住者に開かれたものにすることは、化石燃料への依存からサウジアラビア経済を多角化するための青写真『ビジョン2030』の重要な要素だ。サウジアラビアは、独自の文化的アイデンティティを維持しつつ、ポスト石油の世界で成功するために、外界への門戸を開くとともに、世界の社会規範により近づけようとしている。

NEOMやディルイーヤ・ゲートなどの新しいメガプロジェクトを立ち上げ、世界に訴求できるスポーツや文化イベントを開催することで、王国はその文化と歴史の魅力にスポットを当て、イスラム教徒や非イスラム教徒を問わず、何百万人もの訪問者を呼び寄せることができるだろう。

しかし、2030年までに達成したい1億人の訪問者を惹きつけるために、アルコールの利用は必須なのだろうか?

アラブニュースが最近行ったサウジアラビア観光相アハマド・アル・カティーブ氏のインタビューによれば、そうではない。観光客に人気のあるサウジアラビアでアルコールが許可されるかどうかという質問に対して、彼は「40〜50%の旅行者がアルコールを提供していない目的地に旅行する」という広範な調査結果を示した。

「我々はアルコール以外にも提供できるものがたくさんある。ホスピタリティ、文化、食、ラグジュアリーな体験など、改善すべき点はたくさんある。したがって、観光客が旅行で求めている他のもので競争することになる」と述べた。

「アルコールを提供しなくても、2030年までに紅海を中心とした我々の観光地は世界でも最高の観光地として位置づけられ、人々は間違いなくそれらを体験することになると信じている」

少なくとも、バキート氏がオカーズ紙の記事で結論付けたように、アルコールという厄介な問題はもはや絨毯の下に押し込めることはできない。サウジアラビアが新しい世界を受け入れるにあたって会話の一部とならなければならないのだ。

今現在、サウジアラビアのアルコールビジネスは、密輸ギャング、流通ギャング、マネーロンダリングギャングの手に渡り、そのサブカルチャーは国家の安全保障を脅かすほどの影響力を持っていると彼は書いている。

「『覚醒』論者が植え付けた恐怖症から解放されるために、無視されてきた問題を議論し始める時が来たのだ」と彼は書いている。

「治安当局、保健所、金融当局が協力して、密輸による大きな損失と、地元で作られた粗悪なアルコールによる大きな損害を推定する時が来たのだ。このような楽しみを求める人々のポケットから、巨額の資金が海外に流出していることも忘れてはならない」

「『覚醒』という枠にとらわれない発想で、重要な問題を議論し始める必要があるのだ」

そのためには、関連機関のすべての職員が自問自答することから始めるべきだとバキート氏は言う。「アルコールの持ち込みを禁止する法律は、実際にアルコールの持ち込みを防ぎ、その消費を止めることができているのだろうか?」

「この問いかけに、イデオロギー的な屁理屈なしに答えることが、長い間閉ざされていた扉を開き、科学的、実用的、経済的思考に対して閉ざされていた心を解放してくれるだろう」

*アラブニュース調査・研究ユニットのジョナサン・ゴーナルが当レポートを寄稿した。

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