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サウジアラビアとギリシャ:ますます強力な関係

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26 Jul 2022 11:07:31 GMT9
26 Jul 2022 11:07:31 GMT9
  • サウジアラビアとギリシャは、共に取り組める多様な分野の開拓を目指して、新たな協力の機会を絶えず見出そうとしてきた

ラマ・アルハマウィ

リヤド:ムハンマド・ビン・サルマン皇太子殿下はギリシャの指導部との会談のために火曜日にギリシャに到着し、両国の友好と協力の関係をさらに深める予定だ。

両国の関係は政治分野に留まらず、経済、商業、投資、防衛、安全保障、文化、観光などの分野にも渡っている。

さらに、両国は共に取り組める多様な分野の開拓、両国の事業部門間の継続的な交流の促進、サウジの改革計画「ビジョン2030」の枠組み内での商業・投資提携の実現を目指して、新たな協力の機会を絶えず見出そうとしている。

過去数十年間、両国の投資家は多数の合同ベンチャーにおいて提携し、商業関係の発展においては二国間の貿易が顕著な役割を果たしてきた。

国連商品貿易統計データベースの国際貿易データによると、2020年のギリシャのサウジアラビアへの輸出額は3億3904万ドルであり、サウジアラビアからの輸入額は6億2057万ドルに上った。

歴史のプリズムを通して見ると、現在の両国を結ぶ絆は何世紀も前からのギリシャとアラブの関係の延長線上にある。

それを証明するには、リヤド歴史考古学博物館に保管された、2000年以上前のギリシャの貨幣などの遺物を見てみるだけでよい。

より広範囲に目を向けても、学術や建築における古代ギリシャの影響が、欧州、東地中海、レバントからメソポタミア、イラン、インドに至る地域の至る所に現代でも見られる。

古代の交易や征服を通して、ヘレニズム思想がアラブ思想と混ざり合い、後にはイスラム教の思想家に影響を与え、数学や医学、天文学や哲学が形作られた。

サウジアラビアとギリシャは共に豊かな文化的多様性に恵まれており、両国はそれを保全し世界に発信する取り組みを行っている。

「ビジョン2030」は、アラビア半島におけるアラブとイスラムの遺産を復活させ、文化、芸術、世界文明に対するサウジアラビアの貢献を強化するという新たな哲学に基づいている。

現在、サウジアラビアからギリシャへの最も重要な輸出品は原油だ。一方ギリシャは、綿実、金属、医薬品や、マーガリン、加工食品、ナッツ、フルーツなどの食品を長年にわたって供給している。

両国の経済を結びつけてきたもう一つの分野は建設だ。1970年代、成長著しい都市リヤドはマスタープランナーの技術を必要としたため、当局は母国ギリシャでいくつかのプロジェクトを手がけた建築家で都市計画家のコンスタンティノス・ドキシアディス氏を呼び寄せた。

石油が牽引する経済・人口成長の只中にあったリヤドにおいて、ドキシアディス氏は米国式のグリッドシステムというアイディアを実験的に導入した。これはアル・オラヤ地区で今でも見ることができる。

しかし、サウジアラビアとギリシャの関係は建設だけに留まらない。2021年4月、ギリシャはサウジアラビアにパトリオット対空砲を貸与する契約を結び、今年9月に納入された。防衛協力を前進させる大きな一歩となった。

同月、サウジの麻薬取締局がギリシャ当局に提供した支援は、同国の主要港ピレウスでの大量の加工大麻の発見につながった。

ある推定によると、押収された麻薬の末端価格は3300万ユーロ(3370万ドル)に上る可能性があるという。情報活動の共有は、両国の協力の拡大に新たな一章を記した。

翌月には、サウジの文化相であるバドル・ビン・アブドゥラー・ビン・ファルハーン王子が2日間のアテネ公式訪問を行い、文化協力の様々な面について協議した。

2021年9月には、サウジ商工会議所連盟は、二国間の貿易・投資を強化するためにサウジ・ギリシャビジネス評議会を設立する基本合意書に署名した。

同年10月には、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子殿下とギリシャのキリアコス・ミツォタキス首相がリヤドで会談し、両国関係強化の方法について話し合った。

会談後、両国は合同投資ファンド設立のための協議に入ること、また多数の主要部門における協力を強化することで合意したという共同声明を発表した。

防衛・安全保障上の協力に関しては、両国は合同軍事演習・作戦を実施すること、また専門技術を連携・交換することで合意を結んだ。また、技術や軍事産業の現地化で協力することでも合意した。

これに続き12月には、商用海運の発展、商用船舶交通の増加、貿易の促進を目的とした海上輸送分野での協力協定が結ばれた。

今年1月には、サウジの外相であるファイサル・ビン・ファルハーン王子がギリシャのニコラス・デンディアス外相とアテネで会談し、海洋法と航行の自由の保護について議論した。

また、イランによる核兵器保持を防止するための努力に関与していくことも再確認された。

3月には、サウジアラビアとギリシャは、グリーン水素・ブルー水素などの再生可能エネルギーの技術革新や、東南アジアから中欧までデータをつなぐ光ファイバーネットワークの開発に道を開く基本合意書に署名した。

3月12~14日には、ギリシャの閣僚・ビジネス代表団がサウジアラビアを訪問し、同国で最も有名なユネスコ世界遺産であり大規模な観光開発が新たに行われているアル・ウラーに立ち寄った。

3月13日に開催されたサウジ・ギリシャ投資フォーラムでは両国の投資機会が紹介され、数百の二国間ビジネス会合が行われた。

同月には、両国間の戦略的提携を拡大し投資・貿易を強化するために、サウジのハーリド・アル・ファーリハ投資相が率いる貿易代表団がギリシャを訪問した。

同投資相は訪問時にこう述べた。「今回のギリシャ訪問は、両国の提携の強化・深化のための、また経済、投資、商業、文化、観光などの分野における両国の潜在力・機会の活用のための皇太子殿下の指示の枠内で行われるものだ」

皇太子殿下のアテネ訪問中に、さらなる投資や戦略的提携が発表されることが期待される。

近現代ギリシャ史

1821年に始まったギリシャ独立戦争で誕生した近代ギリシャ国家は、1829年にオスマン帝国から、1830年に国際社会から承認された。

ギリシャの領土は1864年から1947年の間に拡大した。1981年には欧州共同体に正式加盟し、国内の民主主義の安定を強化し、バルカンおよび東地中海における重要な国としての地位を確立した。

独立戦争からわずか2世紀で、ギリシャは南欧・東地中海地域の安定と繁栄の柱と見なされ、EU加盟国となっている。

近年ギリシャは、デジタル国家や新たな労働枠組みなど、重要なインフラ改良を始めており、非常に競争力のある投資先に変わりつつある。

しかし、ギリシャは内外の危機に直面してきた。

ギリシャは近現代史の大半において、深く分極化し、外国に対し財政的に依存し負債を抱え、外部からの脅威に直面してきた。

2009年以降の債務危機により、ギリシャはユーロ圏離脱の瀬戸際に立たされた。2020年初めに新型コロナパンデミックが発生した時、ギリシャは数年の緊縮財政の後で少しずつ成長へと復帰している途中だった。

ここまでの時代は、ギリシャとトルコの関係における波乱の時代でもあった。両国には長きにわたる困難な歴史がある。実際、現代のトルコは第一次世界大戦後のギリシャ軍に対する勝利を背景として建国されたのだ。

1952年に両国がNATOに加盟して以降も関係は緩和していない。エーゲ海とキプロスに関する未解決問題をそれぞれに抱えているためだ。

両国は領海の境界について、またそれぞれの排他的経済水域の範囲についても合意に至っていない。

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