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GOZ:アニメに革命を起こす情熱を持った日本人アニメーター

GOZは、「鬼滅の刃」など数多くの大作アニメに携わってきた国際的に活躍する日本のアニメ監督兼アニメーター。(提供画像)
GOZは、「鬼滅の刃」など数多くの大作アニメに携わってきた国際的に活躍する日本のアニメ監督兼アニメーター。(提供画像)
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06 Dec 2023 03:12:16 GMT9
06 Dec 2023 03:12:16 GMT9

アミン・アッバス

「GOZ」こと郷津春奈は、国際的に活躍する日本のアニメ監督兼アニメーターである。GOZは、「鬼滅の刃」や「FAIRY TAIL」、「シティハンター <新宿プライベート・アイズ> (2019)」、「名探偵コナン 紺青の拳」といった数多くの大作アニメに携わってきた。

GOZは、アラブニュース・ジャパンの独占インタビューに応じ、アニメ製作における自身の創作の原点について語ってくれた。「アートやインテリアデザイン、そしてアニメに、子供の頃から興味を持っていました。もちろんジブリの映画も大好きです、子供の頃、ある夏の日に、母と一緒に映画館で、ジブリの『平成狸合戦ぽんぽこ』とディズニーの『ライオン・キング』を観ました。この2作品にとても感動して、アニメーターになろうと決めました」

「日本の文化で好きなことがいくつかあります。浮世絵や書道、茶道などです、浮世絵はアニメのルーツと言えますね。こうしたこと全てに共通しているのは、職人技の積み重ねです。書道は美しい筆遣いの繊細な線のニュアンスを形にしたもので、鉛筆で引く線のニュアンスにも同じ美が宿っています。茶道は疲れた心身を静かに癒してくれます」

GOZの作品。(GOZ)

アニメ業界での自身のキャリアの確立そして挑戦について、GOZは次のように語った。「私は2011年からアニメーターとして働いています。アニメには、多くの人々の心を掴む力と、国や文化、言語を超えて人を結びつける力があります。子供の頃から、私の心には常に『繋ぐ』という言葉がありました。私は、人々や文化そして考えを繋ぐような何かの役割を果たしたいという思いからアニメの仕事を選びました」

「基礎的な仕事から始め、徐々に色々な作品製作に関わっていくようになりました。私は、1つのプロジェクトだけではなく、多様な作品や製作スタジオ、アニメに関わる人たちを見聞したいと思っていたのです。そのようにして、技術を身につけ、経験を積みました。私は、『ワンピース』や『NARUTO -ナルト-』といった欧米の人々にもよく知られているような作品に出来るだけ関わりたいと思っていました」

「私はフリーランスとして働いています。それなので、自分で仕事を選択し、自ら資金管理をしなければなりません。しかし、それは、クリエイターとしての交渉力や思考力を強化するための試練でもあります。私は、クリエイターとしての強い意志とプライドを持つよう務めています。それなので、アニメ製作の賃金が低い日本で活動していても、あまり苦労したことがありません。何事にも突破する強さが必要なのです」と、GOZは付け加えた。

GOZの作品。(GOZ)

GOZのアニメの師匠の1人は、日本の伝説的なアニメーターで監督の板野一郎氏だった。GOZは板野監督に師事していた時代のことを次のように語った。「板野監督は、当時は、グラフィニカという会社の2Dアドバイザーでした。私は、外部委託を受けて作業を行う2Dアニメーターとしてそのグラフィニカの業務に参加しました。板野監督が3Dと2Dのアニメを教えるコースを開いていたので、そのコースに参加してみました。私が板野監督から受けた第1印象は、強い目つきに後ろで束ねた長い髪の経験豊富で信頼できる『仙人』というものでした」

「板野監督は素晴らしい情熱と愛と存在感にあふれた人です。私たちに対しては、優しくかつ厳格でした。ホットサンドを買って、急いでバイクで私たちの所に届けてくれたこともありました。時には、勉強のためにに、私たちを科学博物館やプラネタリウムに連れて行ってくれたこともありました。ウルトラマンやその他の映画を見せてくれたこともありました。板野監督も私も熱いタイプなので喧嘩をしたこともありました。もちろん私が未熟だったのですが、板野監督はとても熱心に教えてくれたのです。板野監督から学んだ事で一番大切なことは、ベルトコンベヤーの上を流れて行く何かや機械のようになって、考える力を失ってしまったらつまらないのだということです。一番大切なことは感情で、キャラクターに命を吹き込むこと、そしてアニメーターとして創造的であることなのだということです」

GOZは、日本と欧米のアニメのスタイルや労働環境の違いについて、「日本はどの業界でも伝統的なものを大切にしています。日本は新しいことに挑戦するのが遅いのです。これは、日本の文化の問題点でもあると同時に長所でもあると考えています。そのため、アニメ業界も新しいことへの取り組みが遅く、デジタル化への移行に長い時間がかかっています」と語った。

「多くの人は、アナログな方法で紙に絵を描きます。日本人は、職人肌で真面目で忍耐強いのです。紙を使って作業をして、曖昧さを許容して、互いに助け合う能力を持っています。自己主張が苦手という人も多いのです。紙に手描きで迫力のある作品を創作できると貴方もお考えになりますか?コンピューターで送られたメールと手書きの手紙では受け取った時に感じる熱量に違いがあるように、アナログな方法には強力なエネルギーがあるのです。欧米諸国では、アーティストであること、さらには『個性』を持つことがさらに重要なのだと私は思います。欧米に比べて日本の賃金が非常に低いことは、長年の問題です」と、GOZは付け加えた。

GOZの作品。(GOZ)

GOZは、「アニメーションを、飾る」をコンセプトとした初めての個展を東京の銀座で2021年の秋に開催した。「その冬にはNFTも発表しました。これは、日本のアニメーターとしては最初期の取り組みになりました」と、GOZは語った。「個展のコンセプトは『アニメーションを、飾る』で、絵画作品のテーマは『呼吸』でした。日本の商業アニメの世界からアートの方向に進んだ人は皆無に近いです。私は、日本のアニメーターとして、アートやインテリアデザイン、テキスタイル、音楽の業界に参入したいと考えています。私はGOZとして新しい道を進み始めているのです。生き物の根源的な意味を表現する、そして、最もシンプルで奥深いアニメとして『呼吸』をテーマに創作を行ってきました。私は、このテーマとその根源的な意味をライフワークにしたいと考えています」

「個展の開催を通じて、新たな出会いや学びを得ることが出来ました。NFTの可能性や課題、懸念について知識を深め、アニメ業界で活かしていきたいと考えています。また、アニメの鑑賞者の方たちは、与えられた映像だけからではなく、自ら考え、創作することに長けていることにも気づかされました。一層国際化とデジタル化が進んだ将来の世界では、自ら考えて創造する能力を持ったクリエイターが生き残っていくことになるでしょう」と、GOZは付け加えた。

GOZの作品。(GOZ)

GOZはアラブ首長国連邦やカタールなどの中東諸国をトランジット旅行の形で歴訪した。この地域には日本のアニメが好きな人が多いと聞いていたGOZは、さらに多くの中東諸国を訪れることを楽しみにしている。GOZにとって中東は非常に興味深い地域であり、彼女はこの地域から多くを学びたいと考えている。

GOZ は、近い将来のプロジェクトについて、「過程に価値を付加するという新しい取り組みを行います。作画担当者が描いた紙は廃棄され、描くという工程も後に顧みられることはありませんが、そうした紙や工程に価値を付加したいのです。私たちは、ブロックチェーンとNFTを用いて、日本のアニメを勢いづかせたいと考えています」と語った。

アニメ製作者やアニメ作品の製作プロジェクトに携わりたい人たちへの助言として、GOZは、「アニメはとても面白い仕事ですが、忍耐と根気を要します。また、他の人たちと協力することも必要です。他の創作者や製作関係者の方たちと意思疎通することが重要なのです。特に作画担当を目指す人たちは、少し失敗してもあきらめずに続けていくこと、そして、様々なことを観察することを重要視してください。物事に気づく能力を備え、敏感であること、柔軟であることが必要です。柔らかい線でクロッキーを練習して、ニュアンスや形、線のバランスの美しさを捉えられるようにしましょう。皆さん、是非アニメの世界に飛び込んでみてください。最高に素晴らしい経験になります」と述べている。

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