ドバイ:観客は、また新たな悪役誕生物語に目を丸くしても仕方ないだろう。しかし、コリン・ファレルの「ペンギン」のおかげで、久しぶりに、テレビを見終わった後に、少しの不満も感じず、また、遠い昔のスーパーヒーロー物語の黄金時代が懐かしくなることもないだろう。
HBOの8エピソードの限定シリーズ(脚本・制作はLauren LeFranc(「エージェント・オブ・シールド」および「チャック」)は、裏社会の犯罪者からマフィアのボスへと成り上がったオズワルド・「ペンギン」・コブ、通称「オズ」の物語を描いている。その描き方は非常にリアルで、テレビドラマの傑作である「ザ・ソプラノズ」と比較されるほどだ。
この番組は、マット・リーヴス監督の『ザ・バットマン』(2022年)の事件から1週間後から始まる。リドラーが放った致命的な洪水により、ゴッサムの住民たちは、何千人もの死者と、近隣地域の全壊という被害に見舞われたが、徐々に復興しつつあった。オズ(ファレル)は、劇的な変化をもたらす特殊メイクと長年培ってきた演技の勘のおかげで、再び役柄に没入する。オズは、洪水による混乱と、マフィアのボス、カーマイン・ファルコーネ(マーク・ストロング)の死後に生じた権力の空白を悪用しようと企てる。
彼の努力を助けるのは、犯罪者志望の青年ビクター(Rhenzy Feliz)である。ビクターは洪水で全てを失った。オズとビクターの疑似的な親子関係が、腐敗、強欲、暴力を描く悲劇の物語の中心となっている。そして、怪物は生まれつきのものではなく、病んだ社会によって作り出されるものであることを的確に描いている。
さらに、クリスティン・ミリオティ演じるソフィア・ファルコーネが、10年の刑期を終えてアーカム精神病院から出所し、父の帝国の支配権を握ろうとする。
ファレルが画面に登場すると、「ペンギン」が歌い出す。アイルランド人俳優は役作りに全力を尽くしており、衝動的で怒りに満ちた暴力から、静かな脆弱性、そして気取りのない魅力、そして傷ついた子犬のような姿へと変化していく様は、見る者を魅了する。
しかし、それは常に楽な視聴体験というわけではない。ソフィアの過去を描いたエピソードでは、アーカム精神病院での収監前、収監中、収監直後の彼女の人生が検証され、興味をそそるが、非常に陰惨で辛い内容となっている。ミリオティは、ソフィアの正当な怒りと支配欲、権力欲を魅惑的な魅力とブラックユーモアで表現している。
「ザ・ペンギン」で、ルフランは真に変革的な作品を作り上げた。スーパーヒーローものに飽き飽きしている人でも、この作品を見る価値がある。