

著者 八木沢 里志
八木沢 里志の世界的ベストセラー小説『森崎書店の日々』は、第二の人生を歩む古本屋を描いている。
八木沢のデビュー作は2009年に出版され、2022年にエリック・オザワによって英訳された。
日本では千代田文学賞を受賞し、今でも「必読書」リストに頻繁に取り上げられている。
物語は、突然の裏切りによって幸せだった人生を根こそぎ奪われた、メランコリックな25歳の女性、貴子の姿を描いている。
自称 「読書家ではない 」貴子は、しぶしぶ意外な場所に避難する。
「夏の終わりから翌年の春先まで、私は森崎書店で暮らした。森崎書店の2階にある空き部屋で、本に埋もれるように過ごした」と小説は始まる。
「狭い部屋にはほとんど光が入らず、すべてが湿っぽく感じられた。カビ臭い古本の臭いが絶えなかった」
その間に、貴子は徐々に自分自身とつながり直し、本とコミュニティが持つ癒しの力を発見する。しかし、彼女が本屋を出ていくにつれ、物語はより複雑で重層的なものになっていく。
本屋のように、この小説には宝物がぎっしりと詰まっている。そして、貴子と同じように、この本は私の最近の隠れ家的読書になっている。
豊かな文学文化で「本の街」として知られる東京・神保町を舞台に、温かく内省的な語り口は、ページをめくるたびに私を飽きさせない。
八木沢のミニマルでありながら喚起力のある散文は、喪失、成長、そして書かれた言葉に見出される慰めといったテーマを見事に捉えている。その普遍的なメッセージは、砕け散った人生の破片を拾い上げること、そして本を表紙で判断してはいけないということだ。
文章は短いが、簡潔ではない。イメージは鮮明だが過剰ではない。伝えられる感情は、退屈することなく親しみやすい。ストーリーは、恩着せがましくなく、率直に痛烈だ。
2024年の続編である『森崎書店の日々』では、店や登場人物を再訪し、貴子の旅と、彼女が築いた人間関係やつながりをさらに掘り下げている。