
トム・グラウス・ロンドン
日・サウジ・ビジョン2030のパートナーシップを通じてサウジアラビアと日本の関係が発展するにつれ、両国はアニメの開発や観光の促進等を含む計画において、文化的なつながりを強化する方法をますます模索している。
王国と日本の文化交流を深める手段として、アニメは、最初は意外なものに見えるかもしれない。しかし、ジェッダに拠点を置くアニメオンラインストア、「コイ・マーケット」の創業者アフマド・ホーサ氏によると、若いサウジアラビア人の40%がアニメのファンであると考えられており、アニメは若いアラブ人に愛されている。
MENA(中東・北アフリカ諸国)地域の住民に対し、日本に関する様々な質問を行ったアラブニュースとYouGovによる世論調査では、若いアラブ人は年上の世代よりも日本に関する知識が著しく少ないことがわかった。
しかし、この調査では若いアラブ人の日本との関わりにおける前向きな兆候が示された。日本に最も強く連想されるものを3つ選ぶよう求めた設問では、若いアラブ人の62%がアニメを選んだが、40歳以上では16%であった。これは、若いアラブ人の全体的な知識レベルは低いものの、年上の層とは違う形で日本の文化と親しみ続けていることを示唆している。
したがってアニメは、若いサウジアラビア人を今後、王国にとって重要な戦略的同盟国となる国とつなげるための理想的な方法を呈示するものといえる。
また、交流が一方向のみとなる可能性は低い。サウジアラビアは独自のアニメの輸出についてますます盛んに語っており、そうなれば日本を含む国際的な観客に、アラブ世界への窓がもたらされることになる。
この方向性における重要な一歩がサウジアラビアのアニメ映画、「ジャーニー(The Journey)」である。ミスク財団の関連会社であるマンガ・プロダクションズと日本のスタジオ、東映アニメーションによる長編コラボレーションだ。
ミスク財団は青少年のリーダーシップスキルを伸ばし、教育、技術、メディア、文化に焦点を当てることを目的として、2011年にムハンマド・ビン・サルマン皇太子によって設立された。
「ジャーニー(The Journey)」ははるか昔のアラビア半島が舞台となり、王国の歴史の本格的なディテールが取り入れられる。
5月にアラブニュースのインタビューを受けた東映の常務取締役清水慎治氏は、日本・アラブ関係の醸成におけるこの映画の意義を強調した。「ただの映画ではない。文化交流であり、両国間の絆をつくることだ」と彼は述べた。
マンガ・プロダクションズのCEOブカーリ・イサム氏は、2030年までにアニメーション自体を制作する意向で、それによりサウジアラビアが日本およびより広い世界に向けて独自の文化やキャラクターを提示することが可能となると述べる。
しかしアニメは、王国と日本の文化的なつながりを強化する唯一の手段ではない。もう一つは観光である。
観光業は日本の大きな産業であり、あらゆる年齢層の多くのアラブ人が日本を訪れてみたいと強く願っている。アラブニュースとYouGovの調査によると、日本を訪れたことのあるアラブ人はわずか4%だが、87%が行ってみたいと思っており、日本観光振興協会がこの地域からの訪日客を増やす大きな機会が示された。
「サウジアラビアのレジャー観光セクターに起こっている最近の変化は画期的だ」、と VisitSaudi.travel の創業者ジェレミー・アルストンはアラブ・ニュースに語った。「日本とサウジアラビアには今、知識の転移やインフラ整備におけるコラボレーションの機会、また日本が王国への旅行客を排出する重要な市場となる機会が存在する」
サウジアラビアは近年、自国の観光産業で躍進しており、日本人の潜在的訪問者を引き付けるものは食べ物から自然の驚異まで、数多くある。
観光の拡大は、両国がパートナーシップの未来を描き出す中で、両国間の知識と文化的理解を強化するのに役立つだろう。