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電子書籍というライバルに対抗する印刷業界の舌戦

大勢の熱心な読書家たちは、電子書籍よりも印刷書籍を好む。本のページから読むときの匂いや心地よさを楽しんでいるようだ。(SPA)
大勢の熱心な読書家たちは、電子書籍よりも印刷書籍を好む。本のページから読むときの匂いや心地よさを楽しんでいるようだ。(SPA)
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18 Oct 2021 06:10:50 GMT9
18 Oct 2021 06:10:50 GMT9
  • サウジアラビアでは伝統がテクノロジーを凌いでおり、読者と出版社が同じ側にいる。

タレク・アル・タカフィ

メッカ:アラブ生活のあらゆる分野でテクノロジーの進化は加速しているが、読書の楽しみに関しては、昔からの習慣がしぶとく生き抜いているようだ。

近年聞かれる、紙媒体の終わりが近いとの警鐘にもかかわらず、昔ながらの本は電子書籍というライバルによく対抗しており、サウジアラビア人は引き続き、指でページをめくる感覚を楽しんでいる。

中東の多くの出版社は印刷された言葉の力に気づいている。本の優位性が保たれており、とりわけブックフェアでこの傾向が見られるのだ。購入者は今も、印刷された名作の優雅さと感覚を好んでいる。

とはいえ、出版社は電子書籍の脅威に対抗すべく早くから行動を起こしてもいる。自社の出版物を保護するための慎重な戦略を採用し、増え続ける海賊版問題と戦っている。

ダル・アル・サキ社のコミッショニングエディターであるラニア・アル・モレム氏はアラブニュース・ジャパンに対し、電子書籍の需要はまだ比較的少ないと語った。主な理由は、デジタル機器の使用が限定的で、多くの人にとって今も贅沢品だからだ。

「誰もがオンラインで電子書籍を購入できるわけではありませんし、読者は紙媒体に愛着を感じてもいます。理解できることですが、電子書籍を購入できる読者でさえ印刷書籍の方を好んでいます」と彼女は述べている。

電子書籍とは書籍の保護された電子コピーで、海賊版の製作や違法出版を困難にする。こうしたコピーはネット上に出回っているPDFやWordなどの形式の偽の電子コピーとは異なり、主に作家の著作権を保護しつつ、出版社をも保護している。

「ダル・アル・サキの出版物の長年にわたる特徴は、形式と高品質な内容です。テーマ、スタイル、言葉遣いに細心の注意を払い、読者が関心を持つ論題を扱って、その嗜好を満足させることに主眼を置いています」とアル・モレム氏は言う。

さらに、「提供の仕方、ページレイアウト、フォントや文字の大きさ、紙の種類、表紙のデザイン、サイズなど、書籍の最終的な形にもこだわっています。こうした点はすべて、出版業界の進歩に伴う変化と発展の影響を受けています」と付け加えた。

高品質の印刷書籍だけでなく、同社はいくつかのプラットフォームを通じて電子書籍の読者たちにも注意を向け、アル・サキ・デジタルライブラリーを立ち上げた。

「私たちは、電子書籍市場がまだ十分に確立しておらず、紙媒体が依然好まれていることを理解しています。とはいえ、電子書籍の読者にアプローチすることの重要性も認識しており、そうした読者とは競争関係ではなく、補完関係にあると考えています」とアル・モレム氏は語った。

押し寄せるテクノロジーの波にもかかわらず、サウジアラビアの熱心な読書家たちは絶えず完璧な一冊を探し求めている。それはリヤド国際ブックフェアで見られた、老若を問わず多くの人々が本を手にして帰っていく光景からも明らかだった。

ロンドンのアル・ワラック出版社のマネージャーであるマジッド・シェブル氏は、湾岸地域では電子書籍はまだ初期段階にあると言う。

出版社は、海賊版やPDF書籍をオンラインに無料でアップロードされてしまうという問題に直面しており、こうした行為を抑制するべく、Googleに苦情を申し立てている。 

アラブ諸国には無料の海賊版書籍を対象としたプラットフォームがなく、出版社が直接影響を被るため、大きな課題となっている。

シェブル氏によると、電子書籍は広く普及しているとはいえ、目が疲れるとよく言われる。ヨーロッパやアラブ諸国では、ブックフェアにおいて紙の書籍が優位性を保っている。

「ロンドンのウォーターストーンズ書店で最新作をチェックしていた時ですが、大勢の人が今でも紙の本を選んでいるのを見ました」と彼は述べている。

同氏によると、紙媒体と電子媒体の競争は、読者のスタイルや言語の利便性に左右される。

エジプトの作家で小説家のラシャ・サミール氏は、自らも熱心な読書家として、電子書籍が印刷書籍を読む喜びに並ぶ日が来ることはないだろうと述べている。

彼女は、「紙の本を読む習慣が抜けず、電子書籍は全く読めません。本の手触り、匂い、そして文学者が書いた献辞が、この種の読書へ私が抱く愛着の秘密です」と語った。

「大きな書庫の棚に置かれた紙の本は、いつまでも私の宝物です」と彼女は言う。

電子出版なら迅速に販売でき、オンライン広告は紙の出版物に比べて簡単で、低コストだと考える出版社もある。

電子出版によって紙の本がなくなってしまう、紙媒体は出版業界の原点なのだから、この傾向に対抗すべきだ、と考える人々もいる。

サミール氏はさらに、「アラブの図書館から遠く離れた場所に住んでいる国外在住者やアラブ人など、いくつかのグループが簡単にアクセスできますから、文学作品を電子的に読むことには何の問題もありません。電子書籍は今や、出版を支援し、作家の作品を宣伝する手段となっています。紙の本では埋められない距離を縮める良い方法です」と付け加えた。

同氏は、印刷書籍と電子書籍に対する反応は読者の年齢に依存することが多く、年配者が紙の本を捨て去ることに抵抗感を持つ一方、若い世代はテクノロジーが席巻する現代に紙の本は実用的ではないと考えるかもしれないと述べた。

新しい世代の生活の中心はテクノロジーとインターネットなので、出版物もそれに対応する必要があるとサミール氏は言う。

「この世代はソーシャルメディアで学び、もはや紙媒体を情報源として使いません。彼らが最も信頼する情報源はグーグルであり、それは問題です。ですから私たちが歩み寄り、彼らが自分たちのやり方で読書し、学ぶのを励ましつつ、導きを与えなければなりません。また、本の価値を理解するよう、その内容を評価して、価値ある本と安っぽい本を見分けるように働きかけるべきです」

たとえ紙媒体の読書がKindleその他のデバイスでの読書に移行したとしても、教育を受けた人間として、紙の本とその地位の保護を主張し続けるべきだろう。

サウジアラビアの詩人で小説家のアデル・フーシャン氏は、アラブ世界や世界各地で印刷出版業界という王国が崩壊したとしても、電子書籍やオーディオブックといったデジタルプロジェクトは、2つの理由で苦境に立たされるだろうと言う。

「1つ目の理由は広告に関係していて、それが紙の本の力とその豊かな歴史を打ち破ることのできない組織や小さなプロジェクトに依存していること。2つ目の理由は、ソーシャルメディアを通じて人気が高まっているアラブのブックフェスティバルです」と彼は述べた。

「何年も前に、私たちは紙媒体の活躍は長くは続かないだろうと言っていましたが、昔からの習慣はなかなか消えません」

 

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