
ロジエン・ベン・ガッセム
リヤド:エンプティクォーターと呼ばれるサウジアラビアのルブアルハリ砂漠を横断することそのものが偉業になるが、21世紀にラクダの背に乗って横断するとなると桁外れの偉業だ。この方法でサウジアラビア王国、UAE、イエメン、シルクロードを横断して旅する写真家のアンナ愛子氏にはあらゆる体験が待ち受けている。
「私の夢はラクダの背に乗ってこの地域を探検することでした。問題は『どうやって?』でした」と語るのは愛子さんだ。
自分を何者だと表現するかについて問われた愛子さんは、「ラクダの背に乗って旅することに情熱を燃やすiPhone写真家です」とアラブニュースに回答した。
愛子さんは2つの文化の間で生まれ育った。
「生まれは東京で、日本とフランスで育ちました。その後パリに移って20年間ファッション業界やラグジュアリー業界でアートディレクターとして働きました」
1970年代半ばに愛子さんの両親はサウジアラビアで暮らしていた。子供時代を通してこの地域の物語を聞き、好きになった。
「アラブ世界はおとぎ話の世界のようになりました。この文化のミックスのおかげで、あるビジョンをもって世界を眺めることができるようになりました」
愛子さんは生涯にわたって旅に情熱を抱いており、大きな経験になった旅としては、2015年に古代のシルクロードを辿った。その旅ではiPhoneで写真を撮影し、iPhone Photography Awardsなどの賞を受賞した。
アラビア語では「ルブアルハリ」と呼ばれる砂漠地帯のエンプティクォーターを2019年に横断したことは、人生の転機になった。
「友人から、ラクダの背に乗ってエンプティクォーターを横断する人を探していると言われました。その時私はラクダの乗り方を知りませんでしたが、私がやりたい、とその友人に告げて、72時間後にはサウジアラビア行きのフライトに乗って、広大な砂漠を横断するラカイブ・キャメル・キャラバンに加わりました」
この旅の始まりは砂嵐だったが、感動で身震いし、その瞬間にアラビア半島とのラブストーリーが始まった。
「不可能なことが実現しようとしていたので、喜びで涙が溢れてきました。夢が実現しようとしていました」
ラクダの背に乗って旅をすることへの情熱は高まる一方で、今では2頭の美しいラクダを所有している。
「このような方法でアラビア半島の美を探求していると、驚きの連続でした」
この時の旅は総延長2,400キロに及んだ。UAEではハムダン・ビン・ムハンマド・ヘリテージセンターと一緒に旅し、イエメンのソコトラ島に向かう際は、ハリーファ・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン財団の支援を受けた。
最近、愛子さんはサウジアラビアの第91回建国記念式典に招待された。古代の街道であるダルブ・ズバイダをラクダの背に乗って91キロ移動する人物として選ばれた。
ダルブ・ズバイダ(ズバイダ街道)は、イスラム文明の最も重要な人道・社会プロジェクトの一つだ。イラクのクーファからメッカまでサウジアラビア王国内だけでも420キロに及ぶこの街道は、かつては巡礼と交易の道として知られた。
この街道の名称は、街道を建設して隊商と通行人を復活させることに貢献したカリフ・ハールーン・アッラシードの妻、ズバイダ・ビント・ジャアファルにちなんでいる。
「ハーイル地域は古代以来、旅行者の心のオアシスになっていて、この地の人々の寛大さは有名です。サウジの新たな一面を発見して、目に涙を浮かべました。この地域の風景、砂丘、砂漠、山岳地帯、岩絵には特筆すべきものがあります」
愛子さんはいくつかの旅を計画中だという。「人生というものが私自身を次なるステップに導いてくれることに信頼を置いています。それはパズルのように歴史と歴史の間に新たな結び付きを生み出します」
愛子さんの目標の一つは、旅を通してアラビア半島の美しさを伝えることだ。
「物心ついたときからアラブ世界の美に情熱を抱いていました。ラクダで旅しながら、古代の隊商路で本物の生活を映像に収めるのが大好きです」
愛子さんはこの地域の国々の「秘められた美しさ」にたいへん驚いたと語っている。
「ラクダで旅する女性である私はいつも家族のように歓迎されました。そのおかげで文化の中に入っていくことができましたが、それらの文化はもっとよく知られるべきものです。アートディレクターとしての経験を活かして、それらの物語を写真を通して翻訳し、21世紀という時代が進展していくなかでこの地域の美しさを保存していきたいと願っています」