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サウジで人気急増:映画の年

28 Dec 2019
中東での映画観賞文化がかつてなく高まっており、サウジアラビアの国民ほどその潮流を盛り上げている国民は他にいない。 (他社供給)
中東での映画観賞文化がかつてなく高まっており、サウジアラビアの国民ほどその潮流を盛り上げている国民は他にいない。 (他社供給)
サウジアラビアの最も賞賛されている映画監督Haifaa Al-Mansourが彼女の最新作『The Perfect Candidate』をベニス映画祭で発表した。 (AFP)
サウジアラビアの最も賞賛されている映画監督Haifaa Al-Mansourが彼女の最新作『The Perfect Candidate』をベニス映画祭で発表した。 (AFP)
『Capernaum』と『Of Fathers and Sons』は共に2019年に中東の映画館で公開され、アラブの子供たちの並外れた力を描いた。(他社供給)
『Capernaum』と『Of Fathers and Sons』は共に2019年に中東の映画館で公開され、アラブの子供たちの並外れた力を描いた。(他社供給)
『Capernaum』はレバノンの極貧生活にある人々や移民たちの世界を赤裸々に描いている。この映画ではZain Al Rafeeaという名の若いシリア移民が主役を務め、必死で生きぬこうとするレバノン人の少年を演じている。(他社供給)
『Capernaum』はレバノンの極貧生活にある人々や移民たちの世界を赤裸々に描いている。この映画ではZain Al Rafeeaという名の若いシリア移民が主役を務め、必死で生きぬこうとするレバノン人の少年を演じている。(他社供給)
サウジアラビアの映画監督Shahad Ameenのフィクション映画「Scales」もやはり女の子を描いている。 (他社供給)
サウジアラビアの映画監督Shahad Ameenのフィクション映画「Scales」もやはり女の子を描いている。 (他社供給)
マーベルは、『スパイダーマン:ファー・フローム・ホーム』を始め、連続的にヒットを重ねた。 (他社供給)
マーベルは、『スパイダーマン:ファー・フローム・ホーム』を始め、連続的にヒットを重ねた。 (他社供給)
『アラジン』は、アラブの映画スターによるエンターテイメント作品の中で他をはるかに凌ぐ今年の一番人気であり、エジプト系カナダ人俳優メナ・マスードが長年の間親しまれてきたアニメキャラクターに生命を吹き込んだ。(他社供給)
『アラジン』は、アラブの映画スターによるエンターテイメント作品の中で他をはるかに凌ぐ今年の一番人気であり、エジプト系カナダ人俳優メナ・マスードが長年の間親しまれてきたアニメキャラクターに生命を吹き込んだ。(他社供給)
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Updated 28 Dec 2019
28 Dec 2019
  • 2019年はアラブ映画最高の一年だったが、一方でスーパーヒーローとディズニーが引き続きボックスオフィスを制覇

William Mullally、ドバイ

今年はビジネス的にも芸術的にも映画というものが変遷をとげた一年となった。世界的にストリーミングサービスが事実伝達手段として一般化しつつある一方、中東地域においては、ストリーミングが唯一の主流トレンドであるというわけではない。中東では、映画鑑賞の文化がかつてなく高まっており、さらにサウジアラビア国民ほどその潮流を盛り上げている国民は他にない。

歴史の本には必ず2018年がサウジアラビアの映画解禁の年としてとりあげられているが、2019年についてはほとんど触れられていない。しかし2019年は驚くほど映画文化が成長を遂げた年としてより重要な意味を持つ。VOX シネマやAMCなどの大手映画館チェーンはその需要に応ずるべく、国中に次々と世界レベルの映画館を開設し、さらに多くの人々が映画館へ足を運ぶようになっている。現在サウジアラビアには113の映画スクリーンが存在し、アラブ首長国連邦(598スクリーン)とエジプト(238スクリーン)にはまだ及ばないが、バーレーンやクウェートの103スクリーンをすでにしのいでいる。最も驚くべきことは、サウジアラビアのボックスオフィスが昨年を1,000%上回る売上高を達成しており、アラブ首長国連邦だけには及ばずとも、映画解禁から2年目にして今や同地域で二番目に大きな映画市場に成長したと言う事  実だ。

西洋諸国のブロックバスターがやはり映画鑑賞客を動員する主な理由ではあるのだが、アラブ諸国の映画、とくにサウジアラビアの映画界は、アラブ地域の映画監督や俳優たちにとって、輝かしい一年に続く新たな黄金時代を迎えようとしている感がある。

2月にラミ・マレックが、映画『ボヘミアンラプソディー』のフレディ・マーキュリー役でアカデミーの最優秀主役男優賞をアラブ人として初めて獲得した。一方レバノンの映画監督ナ ディーン・ラバキーが、アラブ人女性として初めて彼女の映画『存在のない子供たち(Capernaum)』で最優秀外国語映画にノミネートされた。この映画はまた、世界中のボックスオフィスでアラブ映画としての売り上げ記録を更新させた。さらに、シリアの映画監督、プロデューサー、かつ映画脚本家であるタラル・デルキが彼の実に見事な映画『父から息子へ(Of Fathers and Sons)』で最優秀長編ドキュメンタリー映画にノミネートされた。

我々の地域の時事を世界が見守る現在、中東映画は我々の本当の魂を、そして最も極端な状況から日常的な困難まで、この地域における日々の苦難にあえいでいる本物の人々を目にするための最高のメディアなのだ。サウジアラビアとその近隣地域で製作された映画は、フィクションであれドキュメンタリーであれ、果敢に見開かれた目と大きな心と批判的な手によって、アラブ世界の人々の心を捉えた。

芸術作品として、『Capernaum』と『Of Fathers and Sons 』は共に2019年に中東の映画館で公開され、アラブの子供たちの並外れた力を描いた。現実の生活に非常に密着して、『Capernaum』はレバノンの極貧生活にある人々や移民たちの世界を赤裸々に描いている。この映画ではZain Al Rafeeaという名の若いシリア移民が主役をつとめ、必死で生きぬこうとするレバノン人の少年を演じている。『Of Fathers and Sons 』はさらに恐ろしい映画で、過激派武装組織の一員とその幼い子供達を追跡して描いているのだが、その子供達が少しずつ洗脳されてテロリストになっていくというもの。両方とも観るも痛ましい映画だが、同時に共感を呼び強烈な印象を与えるものであり、アラブ映画史上最も心に響く場面の数々を映し出している。

今年も終わりに近づいているが、最も注目すべきアラブ映画の多くが子供達にスポットライトを当てている。『For Sama』というWaad al-Kataeb監督によるドキュメンタリーでは、監督自身が彼女の赤ん坊である娘サマに直接語りかける。その子はシリア崩壊当時に生まれ、アレッポでの軍事衝突勃発からWaad al-Kataeb監督とサマの父親が避難を余儀なくされるまでのストーリーを振り返っている。この映画の最も忘れがたい場面は、頭上で爆弾が投下される中で出産をする彼女の意を決した表情、そして無反応の新生児が突然奇跡的に力一杯産声をあげるまでの様子である。

サウジアラビアの映画監督Shahad Ameenのフィクション映画『Scales』もやはり女の子を描いているが、現地の軍事衝突や極貧状態に焦点を当てるかわりに、Ameenの映画はアラブ社会の女性たちの直面する困難を描いた比喩的なダークファンタジーだ。美しく撮影された彼女の映画はサウジアラビアとアラブ首長国連邦とで共同製作され、ある漁村に暮らす女の子が、彼女を育てたハンターたちとの生活と、ハンターたちの獲物となる生き物、つまりその漁村沖の暗い海に住む人魚たち、を哀れに思う気持ちとの間で悶々とするというもの。この作品は、そのスタイルと内容の両方によって、Ameen がすでにサウジアラビアの最も才気あふれるアーティストの一人であることを間違いなく証明するものだ。

サウジアラビアの最も賞賛されている映画監督Haifaa Al-Mansourが、彼女の最新作『The Perfect Candidate 』をベニス映画祭で発表した(中東の映画館ではまだ上映されていない)。この作品でもサウジアラビアにおける女性の地位のことが扱われている。野心的な女性政治家が地元の市議会選挙に立候補して男性優位の社会で渡り歩こうとする中で、彼女の直面する試練とかん難を描いている。また、Raed Alsemariによる優れた短編映画『Dunya’s Day』はサンダンス映画祭で大きな賞を受賞した。その映画は、あまり人に好かれるタイプではないが何か同情したくなるような若いサウジアラビア女性を果敢に描いており、アラブ映画で脚光を浴びるのは女性ということばかりではなく、女性たちが描いているその登場人物たちも様々に移り変わりつつあるということを示している。

アラブ映画産業にとって間違いなく素晴らしい一年ではあったが、もちろんハリウッドやボリウッドと対等に勝負するにはまだまだ先は長い。同じリーグで勝負しようとするなら尚更だ。

2019年に映画館で大人気を博したもの、映画をめぐって沸騰した話題といえば、ブロックバスターのフランチャイズ、特にスーパーヒーロもののフランチャイズだった。

マーベルは、『キャプテン・マーベル』、『アベンジャーズ/エンドゲーム』、『スパイダーマン:ファー・フローム・ホーム』と連続的にヒットを重ね、『ジョーカー』はその残忍な内容から年齢制限指定が付いて世の中を驚かせたが、10億ドルを超える興行収入をあげた。マーベルの作品数に加えて、ディズニーも映画館を制覇し、『ライオンキング』、『トイ・ストーリー4』、『アナと雪の女王2』、『アラジン』によって10億ドルを超える売り上げとなった。(封切られたばかりの『スター・ウォーズ:ザ・ライズ・オブ・スカイウォーカー』もほぼ間違いなくそれらの仲間入りをするだろう。)実際、『ジョーカー』は、ディズニー配信以外で10億ドルというひと昔前には不可能だった数字を突破した唯一の映画となった。一方、他の『チャーリーズ・エンジェル』、『メン・イン・ブラック』、『ゴジラ』といったかつての黄金フランチャイズの方はまったくの失敗に終わっている。どうやらディズニーだけは現在のところフランチャイズ疲れとは縁がないようだ。

中東および世界各地で大ヒットした『アラジン』は、アラブの映画スターによるエンターテイメント作品の中で他をはるかに凌ぐ今年の一番人気であり、エジプト系カナダ人俳優メナ・マスードが長年の間親しまれてきたアニメキャラクターに生命を吹き込んだ。 この映画は実際の現代中東の姿を描こうとしたものではまったくないが、意図的に多文化的で喜びあふれる映画に仕上げられており、中東を美しさ、芸術、伝統に富んだ世界として描いている。しかしこの映画の封切り以降、現実世界の出来事の方は良いことばかりとは言えない。マスードは、『アラジン』公開以降彼には一つもオーディションのチャンスがないと公の場で不平を述べている。ハリウッドでは、ラミ・マレックは別として、アラブ出身の若き映画スターにはその道のりが非常に険しいということを物語っている。

おそらく、今年になって気づかされた最も皮肉的(かつ大きな影響力をもつ)ことは、現役の最高峰の映画監督による最高の映画を観たいなら、家にいなけれならないということだ。マーティン・スコセッシ監督による『アイリッシュマン』、ノア・バームバック監督による『マ リッジ・ストーリー』、フェルナンド・メイレレス監督による『二人のローマ教皇』はどれ一つ中東の映画館で公開されず、直接Netfliから配信された。これらすべてはゴールデングローブの最優秀ドラマにノミネートされているのだ。

中東で映画文化が人気を保っていても、映画愛好者や映画監督たちには、今後大画面上と同じくらいオンラインでの視聴が普及していくように思われる。

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