

アメーラ・アビド
ジェッダ:カリグラフィーは数千年前から実践されている古い芸術技法だが、人々は現在でもこの技法を用い続けている。単にアラビア語を美的に伝えるための手法から、書く者自身の創造性を表現する方法へと進化してきたのだ。
カリグラフィーを実践するアーティストは皆、オリジナリティーを付加する。サウジ人カリグラファーのモハメド・バジュバイル氏(34歳)もその一人だ。彼はアラビア語の詩を取り上げて、それを人々の肖像画になるような形に書き換えている。
文字を使って絵を作るタイポグラフィーアートは、アラビア語の文字を歪め、美化し、曲げることで流れるように調和させるのに非常に適したアートだ。
バジュバイル氏の作品は強烈で、息を呑むような美しさがある。サウジ王室の人々を描いたものが有名で、離れて見ると正確な肖像画に見えるのだが、近づいて見ると文字が見えてくる。
バジュバイル氏は、「私が使うフレーズ、単語、詩は、描く人物に関係があるものです。使うテキストと描く人物との間には必ずつながりがあるのです」と語り、彼の作品はアートと文学を結びつけるものだと説明する。
このドローイングスタイルを見出したのは「カリグラフィーをきちんと学んだ後でした。タイポグラフィーのルールをカリグラフィーに当てはめて、リアルな肖像画に見えるようにカリグラフィーをアレンジし始めたのです。他のアーティストの作品と並べても見分けがつくように、自分流に編み出しました」と彼は語る。
非常に創造的な人々の中で抜きん出ること、多くの人に自分の作品を届けること、未来の世代に良い影響を残すことが望みだという。
私が使うフレーズ、単語、詩は、描く人物に関係があるものです。使うテキストと描く人物との間には必ずつながりがあるのです
モハメド・バジュバイル
アラビア語カリグラフィーの黄金時代を画すると通常言われる3人の偉大なカリグラファーがいる。イブン・ムクラ(886~940)は、カリグラフィーのスルス体の考案者として知られる。イブン・バッワーブ(961~1022)は、丸みを帯びたアラビア語書体を用いた。アマシャのヤークート・アル・ムスタウスィミー(?~1298)は、アラビア語カリグラフィーの6書体を洗練させた。
アラビア語カリグラフィーの6つの主要な書体は、スルス体、ナスフ体、ムハッカク体、ライハーニ体、タウキーウ体、リカーウ体だ。
カリグラファーのマゼン・バサケル氏は、これらの書体を「私にとって聖域のようなものだ」と表現する。
カリグラフィーは歴史において非常に重要な部分を占めているため聖なる芸術になっていると彼は語る。それを自分流にアレンジする前にまず伝統的な規則を練習したという。「カリグラフィーをマスターして、規則を理解していると確信できるようになってから、自分のスタイルを作り始めました」
バサケル氏は、大きな壁に描く壁画から、トートバッグ、さらには香水瓶への彫刻まで、あらゆる種類の媒体を使用してカリグラフィーを描いてきた。全てを美しくし、あらゆる物を価値あるアート作品に変えてきたのだ。
カリグラフィーは物理的な世界からソーシャルメディアへも移行していると彼は語る。それによってアラブ人は古来のアートとのつながりを取り戻すことができ、それに馴染みのない人々も発見することができるのだという。
「アラビア語カリグラフィーというアートは古い芸術(というだけ)ではなく、現在の私たちの生活に(も)常に存在しています。私たちが生きる時代だって黄金時代と考えることができます。指先一つで人々に作品を届けることができるからです」とバサケル氏は語る。