
レベッカ・アン・プロクター
ジェッダ:1976年にロンドンで開催されたイスラム芸術祭という重要な例外はあるものの、イスラム芸術のみを扱った国際的な展示会はこれまでほとんど行われてこなかった。ロンドンでのイスラム芸術祭から40年が経ち、伝統作品と現代作品が並置される第1回イスラム芸術ビエンナーレがジェッダで開催される。
1月23日から4月23日までキング・アブドルアジーズ国際空港の西ハッジ・ターミナルという象徴的な場所で開催されるこのイスラム芸術ビエンナーレには、現代作品と歴史的遺物のコレクションを比較・対比するという狙いがある。歴史的遺物の多くは各博物館からの貸出となり、舞台美術の設計は建築とアーバニズムを専門とする国際企業Omaが担当する。
スマッヤ・ヴァリー氏、ジュリアン・ラビー博士、サード・アル・ラシード博士、オムニヤ・アブデル・バー博士らをはじめとする著名キュレーターチームが率いるこのビエンナーレのテーマは、「Awwal Bait(アラビア語で「最初の家」という意味がある)」だ。
「私たちの強みのひとつはこのロケーションです」アブデル・バー氏はアラブニュースに対してそう語った。「既に歴史的な価値のある素晴らしい場所であり、巡礼や、場合によってはラマダン中に敬意を表する際に訪問者が文字通り最初に訪れる場所でもあります」
「これはこのビエンナーレの第一回のテーマである『Awwal Bait』、つまり『最初の家』というテーマとも非常に強い繋がりがあります」
ハッジ・ターミナルは1981年の開港以来、聖地メッカとマディーナへの世界の玄関口として機能し、利用されるのはハッジ期間中の6週間のみとなっている。スキッドモア・オーウィングズ・アンド・メリルが建設した同ターミナルは、1983年にアーガー・ハーン建築賞を受賞した。
この独創的なデザインは、聖地を目指して旅する巡礼者たちが何世紀にもわたって使用してきた伝統的なテントからインスピレーションを得たものとなっている。明るい半透明の屋根はテフロン加工を施したファイバーグラス製の皮膜を素材としており、自然光によるライティングと通気性の確保を実現し、感動的で印象に残る展示空間を作り出している。
テーマである「Awwal Bait」は、互いに補完関係にある二つのセクションにより表現されている。「Qiblah(聖なる目標)」はイスラムの精神性を強調する芸術作品が展示され、「Hijrah(移動)」は、ハッジ・ターミナルの天蓋の下に設置された巨大な屋外インスタレーションが目玉となっている。
今回の展示は、イスラム教徒であるとは何を意味するのかということを様々な専門分野から提示するものとなっている。そして多くの作品や展示物は、イスラム信仰において最も重要なモスクであるメッカのマスジド・アル・ハラームの中心にあり、イスラムにおいて最も重要な聖なる巡礼地であるカアバ神殿の重要性を反映している。
今回の展示がサウジアラビアの首都リヤドではなくジェッダで行われることになった背景には、紅海に面するこの港湾都市が、訪問者にとっての重要なトランジットとしてハッジと強く結びついているという理由がある。
確かに、過去も現在も長きにわたってジェッダはメッカとマディーナへ向かう巡礼者にとっての主要な玄関口であり、今回の展示において非常に象徴的なロケーションとなっている。
「それと同時に、それはイスラムにおける私たちの精神的・文化的儀式を通じて『家』を建てるということを反映しています。そうした行為は私たちを団結させ、私たちの多様性と混ざり合いを祝福するものです」キュレーターを務めるヴァリー氏はSPAに対してそう語った。
今回の展示は、2020年にサウジ文化省が設立したディルイーヤ・ビエンナーレ財団が主催する二つのビエンナーレのうちのひとつである。もうひとつは2021年12月に行われた現代アート・ビエンナーレで、こちらはディルイーヤのJAX地区で開催された。
1月は、サウジアラビアおよび中東各地の現代アーティストによるイベントなどが行われる。その中の一人がクウェートのアーティスト・デザイナーであるファラー・ベーベハニ氏で、同氏は今回のイベントのために「Path of Light」という作品を制作した。
この動的な作品は、金属とシルクの糸、さらには縄とガラスビーズをリネンに手作業で刺繍したもので、預言者ムハンマドの誕生を祝福し、イスラム信仰の中心にある光のコンセプトに焦点を当てている。
「この作品には、19世紀のエジプトの作家で、詩の王子と呼ばれたアーメッド・シャウィが預言者ムハンマドに捧げた詩を選びました」ベーベハニ氏はアラブニュースに対してそう話す。
「この詩は、どのようにして預言者の誕生という良い知らせが闇の中に光の道を作り出し、東から西へと世界を照らし出したかということを語っています」
ベーベハニ氏は、イスラムの幾何学模様に沿ってデザインされた3枚のパネルにこの詩を組み込んだ。この幾何学模様はモスクのドームからインスピレーションを得たものだという。
「この作品はすべて手作業で刺繍を行い、イスラム建築の様式で設計・建設されたモスクやその他の建物のレンガタイルを参考にしています」
カイロに拠点を置くエジプトのアーティスト、フダ・ルトフィ氏は、「Inside the Black Enclosure」というインスタレーション作品を制作した。これは巡礼の最初と最後の日に数百万人のイスラム教徒たちが行う行動からインスピレーションを得ている。
カアバ神殿に掛けられた新たな装飾的な覆いの制作は、イスラム信仰の草創期に対して畏敬の念を示す行為だ。ルトフィ氏は作品を通じ、アッバース朝の時点で、その覆いの色を黒にすることがいかにして好まれるようになったかを示している。
大きな手間と費用を掛けて生み出されたこの織物の装飾品はキスワと呼ばれるもので、アラブの職人技の鑑である。
ルトフィ氏の作品では、鑑賞者は黒い蛍光照明によって照らされた暗い立方体の部屋の内部を歩くことになる。カアバ神殿の外面を保護・装飾しつつ後援者たちの富と権威を示すキスワは、周囲を取り囲まれた構造の内部に隠されており、瞑想的な効果を与えている。
閉ざされた闇の中の黒い壁には、きらめく白いパネルに黒で文字が記されている。部屋を取り囲む刺繍のカリグラフィーはクルアーンの一節となっており、「東と西にあるアッラーに向けて、あなたがどこを向こうとも、そこにはアッラーの顔がある」と書かれている。
最終的な本ビエンナーレの目的は、イスラムの遺産と現代における妥当性を組み合わせ、芸術的対話を通じて継続性を固めていこうという試みのなかで、過去と現在のアートを通じてイスラムの意義を祝福・共有しようというものである。
「ジェッダでの初のイスラム芸術ビエンナーレは、イスラム芸術の未来に対する私たちの期待と共に、豊かで多様な過去を反映するものとなっています」イスラム芸術ビエンナーレで監督を務めるファリダ・アル・フセイニ氏はSPAに対してそう語った。
「芸術性と創造性の継続的な実践により職人技と学問の世界に橋を架けることで、今回、そして今後の本ビエンナーレが新たな観点からの声を届け、インスピレーションをもたらす予想外の繋がりや意義を生み出せるような空間を作り出していくことを願っています」