
リヤド: サウジアラビアの国家債務管理センター(NDMC)は、2024年の年間借入計画書を発表し、同国の今年度の資金調達戦略の概要を明らかにした。
360億サウジリヤル(96億ドル)の負債管理取引により、NDMCの効果的な債務管理へのコミットメントを前面に出している。この戦略的な動きにより、「満期までの平均期間」が引き延ばされ、将来の満期に関するリスクが軽減された。
アラブニュースの取材に応じたエコノミストのタラト・ハフィズ氏は、同国は「投資のリスクとリターンのバランスを取る非常に専門的な方法」で公的債務を管理していると強調した。
また、「我が国が債務の決済や期限前弁済を行う際には、さまざまな要因を考慮するが、その中には将来の金利や為替レートの動向、債務の早期償還により実現可能なコスト削減が含まれる」とも付け加えた。
借入計画書では、財政の安定を維持し、今年度中にある機会を生かそうとするサウジアラビアにとって、強固な基盤となっている2023年の成果に注目している。
同国の債務ポートフォリオは、「資金調達コスト」が3.62%に達するという金利上昇の中でも回復力を示し、2023年末までの平均償還期間は約9.5年に延びた。
NDMCは、流動性、借り換え、金利、外国為替、信用格付けといった主要なリスク要因をにらみつつバランスのとれた負債増加決定を行い、確実に、慎重かつ持続可能な債務管理戦略となるようにしている。
2023年概観:戦略的借入の一年
2023年に同国の国債ポートフォリオは大幅に増加し、国内総生産の25.4%に相当する1兆500億サウジリヤルに達した。
これについてハフィズ氏は、アラブニュースに対し「我が国は常に債務残高対GDP比を保守的水準に保つことに心を砕いており、我が国の金融システムに不必要な借入コストを負担させず、将来必要な時に借りられる余裕を確保している」と語った。
サウジアラビアは債務残高対GDP比の目標を30%としており、これは「世界標準の60%を大きく下回るものだ」とも同氏は付け加えた。
NDMCは、借入のために1890億サウジリヤルを確保し、その債務管理能力の高さを実証した。
特筆すべきは、国内のスクーク(イスラム債)と債券債務管理取引を成功させたことで、戦略的に満期を迎えた証券を償還しつつ同時に新たな証券を発行した。
資金調達源をみると、国内資金が全体の47%を占め、同国の回復力を示している。
残りの53%は海外からの調達で、スクークとグローバル中期債プログラムのもとで国際的に発行された債券であり、過剰な申し込みがあった。これは、投資家の信頼が厚いことを示している。
2024年の見通しと負債調達ガイドライン
2023年の債務管理取引の成功を背景に、同国は2024年も借入れを継続する意向である。これは、財政赤字の穴埋めのためだけでなく、同財政年度に満期を迎える債務の借り換えのためでもある。
2024年に満期となる債務残高は210億サウジリヤルであり、2023年に実施された事前調達により、2024年の資金需要総額のうち140億サウジリヤルを既に確保している。
2024年の予想財政赤字は790億サウジリヤルなので、総資金需要は約860億サウジリヤルとなる。
2024年末には、債務ポートフォリオは1兆1100億サウジリヤルに達する見込みだ。
ハフィズ氏は、2024年の年間借入計画には、昨年の借入残高210億サウジリヤルの期限前返済が含まれていると強調した。また、2023年に同国は190億サウジリヤルを期限前返済したとも述べた。
2024年の投資家向け広報戦略
同国の2024年債務管理戦略の極めて重要な側面として、国内外の投資家との積極的な関わりがある。
NDMCは、アジア、ヨーロッパ、北米を含む主要地域にまたがる包括的なアウトリーチ・プログラムを通じて、強固な関係を育むことを目指している。
また、投資家層の多様化も目指している。この動きは、リスク軽減戦略であるだけでなく、有利な金利での世界の債券市場への継続的アクセスを確保するための積極的な取り組みでもある。
NDMCは、サウジアラビア経済の最新情報を投資家に提供し、環境、社会、ガバナンス、持続可能性に関する取り組みについて議論し、同国の野心的な変革アジェンダである「ビジョン2030」を紹介していこうと試みている。
さらに、海外投資家をサウジアラビアに招待して訪問してもらう計画もある。
こうした取り組みにより、投資家は政府指導者と直接交流して、国の未来を形作る超大型プロジェクトの進捗状況を目の当たりにすることができるようになるだろう。
経済の回復力
サウジアラビアが財政の安定と経済成長に向けて歩みを続ける中、計画書で概説されている積極的な施策は、世界の金融情勢における不確実性を克服するために打ち出されている。
戦略的債務管理イニシアティブ、慎重なリスク管理アプローチ、投資家向け広報戦略は、弾力的で持続可能な債務プロファイルを維持するために同国がいかに努力しているかを強調するものとなっている。
サウジアラビアは、フィッチ、ムーディーズ、S&Pの3社から『A』という高い格付けを得ており、将来の見通しもポジティブである。この高い格付けはサウジアラビアの信用力を支え、財務能力と債務不履行を起こさないという強いコミットメントをさらに強化している、とハフィズ氏は説明した。
同氏によると、「我が国は、強力な財政と、期限前に債務を償還する能力を世界に証明している」という。
借り換えリスクに積極的に対処し、投資家層を多様化することで、NDMCはサウジアラビアが引き続き世界の債券市場にアクセスでき、有利な資金調達条件を確保できるようにすることを目指している。