
フランク・カネ
ドバイ:エネルギー産業の2人の専門家によると、先月世界の原油市場を錐もみ状態にした石油価格戦争の勝者として、サウジアラビアが浮上するだろうという。
ニューヨーク、コロンビア大学のグローバルエネルギーポリシーセンターの教授兼創設ディレクター、ジェイソン・ボルドフ氏は次のように述べた。「2020年は産油国にとって修羅場の年として記憶されるでしょうが、済的にも地政学的にもより強い1国が、このパンデミックから浮上する可能性が最も高いでしょう。それがサウ
アメリカのニュース出版物、フォーリン・ポリシーに寄稿したボルドフ氏は、パンデミックのロックダウン下の経済で、原油の需要が劇的に減少した結果として、サウジの財政は原油価格下落の難局をうまく切り抜けることができます。しかも減少した需要が安定すれば、結局サウジの石油収入は増加し、世界の石油市場のより大きなシェアを占めることになる、と述べていた。
ボルドフ氏の見解は、マーク・ムーディー・スチュアート卿により確かなものとなった。スチュアート卿はロイヤルダッチシェルの元会長で、サウジアラムコで重役として最長任期を務めた。エネルギーコンサルタント会社、ガルフインテリジェンシーとのインタビューで、ムーディー・スチュアート卿は、サウジのような低コストの石油産出国がこのパンデミックから浮上し、市場を拡大すると述べた。
「最低コストの生産者が自らの生産を抑制することにより、高コスト生産者が恩恵を得るのを認めてきた唯一の商品が、石油なのです。今年か来年に需要が回復すれば、私たちが浮上し、最低コストの生産者が市場を拡大するでしょう」と、ムーディー・スチュアート卿は語った。
高コストなアメリカのシェールガス産業がパンデミック前の生産量まで回復するには何年か掛かるだろう、ボルドフ氏は述べていた。「原油需要が落ち込んだままの期間が続けば続くほど、アメリカの原油生産量は、1日あたりおよそ1,300万バレルというパンデミック前のピーク時の生産量から、減少することが予測されます」
「近年、シェールの目が眩むような成長(毎年、1日あたりおよそ100万バレルから150万バレルずつ増産している)もまた、金融市場での根拠なき熱狂を反映してもいた。不経済な生産に苦しむアメリカ企業の多くが、安価な金利の借金を注入して、何とか成り立っているのが実情でした。価格破壊が起きる前でさえ、アメリカでシェールオイルの4分の1は、不経済な生産をされてきたのです」と、ボルドフ氏は述べていた。
ムーディー・スチュアート卿が、原油収入下落の結果として、サウジアラビアの経費削減に関する最近の声明は、「サウジ国民から権利意識を失くさせるための重要な手段でした。これには誰もが参加することになります」と最近語っていた。
このシェルの元会長は、70有余年ぶり配当を見送るシェルの最近の決断に、他の大手石油会社も追従するだろうと語った。しかしアラムコは、今年750億ドルを配当する約束を撤回しないだろう、とムーディー・スチュアート卿は付け加えた。
「企業が自社の見通しを検討するとき、1年先を見越しています。だから今年、これ(配当)は悪くないのです」と、ムーディー・スチュアート卿は語った。
このパンデミックに対応して、原油を減産したサウジアラビアの動きは、同国の世界的な地位を向上させるだろう、とボルドフ氏は付け加えていた。
「サウジアラビアは、アメリカ政府内での地位を向上させました。ホワイトハウスと影響力のある上院からの強烈な圧力に従って、原油減産に積極的に応じた同国は、3月に生産量を急増させた後、原油暴落で責められたときに生じた打撃のうち、いくらかを取り返すでしょう」と、ボルドフ氏は述べていた。
「ほんの数週間前まで、サウジアラビアの今後の見通しは暗そうでした。しかしこの数年間の見通しで言えば、サウジアラビアの地位が強固になったという以外、考えにくいです」と、ボルドフ氏は述べていた。