
東京:経済アナリストのオックスフォード・エコノミクス(OE)の予測によると、最良のシナリオでは、ドナルド・トランプ米大統領が課した関税は、今後2、3年の世界GDPのわずかな成長を可能にするかもしれないが、世界経済をいくぶん弱体化させるだろう。
OEは、最悪のシナリオではベースライン試算よりも大幅に成長率が低下し、最良のシナリオでは多くの国の成長率の上昇はせいぜい小幅にとどまると予測している。
OEの最悪のシナリオでは、トランプ政権が各国の相互関税引き上げを推し進め、米国内外の需要を直撃し、サプライチェーンにストレスを与えるだろう。最も打撃を受けるのは、カナダ、メキシコ、ベトナムなど、米国への輸出比率が高い国々であり、米国自身も同様の打撃を受けるとしている。OEは、「より大きな関税引き上げによる絶対的な勝者は存在しない」と結論づけている。
最悪のシナリオでは、世界の先進国で雇用が大幅に減少し、個人消費が減少する。企業は投資計画をさらに大幅に縮小する可能性が高く、その結果、投資が減少する。貿易量も大幅に減少するだろう。
OEのベースライン予測では、関税引き上げは米国外ではディスインフレの原動力となると見ているが、最悪のシナリオでは、報復関税がサプライチェーンを直撃すると想定している。インフレ率は上昇し、中央銀行が成長を支えるために利下げできる範囲は制限されるだろう。
一方OEの最良のシナリオでは、世界の大半で10%の関税が引き続き適用され、一部免除措置と普遍的な分野別関税の一部が撤廃される。この場合、世界のGDP成長率はOEの5月のベースラインと比較して、2025年に0.1ppt、2026年に0.3ppt押し上げられるものの、世界経済は関税導入前に予想されていたよりもやや弱い状態に置かれることになる。
最悪のシナリオでは、世界経済は景気後退に近づき、そのコストは不均等に分配される。「経済全体レベルでは絶対的な勝者は存在しない」とOEは述べる。
OEsの5月時点の予測では、ほとんどのエコノミーが10%前後の関税を課されることになり、その結果、今年と来年の貿易成長率は大幅に鈍化すると想定している。しかし、最良のシナリオでは、相互関税は広範な適用除外によって希釈されるであろう。
OEは次のように結論づけている。
「我々のモデリングによれば、最悪のシナリオでは、米国経済は2025年下半期に景気後退に入り、2026年末にはGDPはベースライン予測を6%程度下回ることになる。これは、世界が受けるGDPの打撃のおよそ3倍の大きさである。」
「カナダ、メキシコ、ベトナムなど、対米輸出比率が比較的高い経済も、相対的に悪化する。逆に、中国はこのシナリオではGDPへの打撃が小さい。インフレの影響は、中期的には米国とその主要貿易相手国で最も大きい。」