
ロンドン:世界経済のコロナ禍からの回復に同調して、2021年には石油需要も過去最大の700万バレル/日(BPD)まで急増するものの、2019年の水準には届かないとOPECが月次リポートで述べている。
これは、OPECが来年の石油市場についての見通しに触れた初のリポートとなった。同リポートでは、米中間の貿易摩擦や高い債務水準、コロナ禍の第2波といった現状以上の下振れリスクが2021年に現実化しないと想定した場合の予想とされている。
「特に主要な経済圏でのCOVID-19の感染拡大が抑え込まれ、パンデミック対策として実施される大規模な経済対策に支えられて、民間の家計消費と投資の回復が可能となることを前提としています」とOPECは述べる。
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐためのロックダウンを各国政府が課したことにより、石油の世界的需要は3分の1にまで落ち込み、石油価格は今年崩壊した。
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OPECは2020年の石油需要については895万BPDの減少を予想している。これは先月のリポートよりも若干少ない数値となっている。
2021年の石油需要は、効率化とリモートワークが伸びを抑え、2019年の最高水準を下回るとOPECは予想している。
予想されている2021年の需要の大幅な増加の大部分をまかなうことをOPECは期待している。OPECは特に600万BPD増の2,980万BPDとなる原油需要増を見込んでいる。
2020年5月以来、OPECとロシア主導の産油同盟国は、石油価格の下支えのために、世界の需要の10分の1に相当する1,000万BPD近くの減算を行っている。
OPEC+の減算合意には応じていない米国やノルウェー、カナダも生産高を減少させている。
OPECは、OPEC非加盟国の2020年の石油供給量は326万BPDの減少、2021年は92万BPD増加の予想と述べている。
ロシア、カザフスタン、アゼルバイジャンがOPECと歩調を合わせて減産しているものの2021年にこれら旧ソ連圏各国が生産高を増加することはないとOPECは予見している。
「石油貯留層の損傷によりOPEC非加盟国の閉鎖された油井のいくつかは復旧しないとOPECは確信しているのだと思います。しかし、OPECも無傷で済むということはありません」と、シンクタンクのエナジー・アスペクツの共同創業者アムリタ・セン氏は言う。
セン氏によれば、OPECの需要回復見通しは楽観的なものであるかもしれないとのことである。エナジー・アスペクツは、来年の需要の回復は500万BPD程度と予想している。
米国の生産高は2019年に170万BPD増加した後2020年に137万BPD減少したが、2021年には24万BPD増加に留まるとOPECは見ている。
OPECは、その生産高を管理するために用いている2次的情報ソースに基づいて、6月に供給量をさらに189万BPD減じて2,227BPDとしたと発表している。ロイターの計算では、合意の遵守率が5月の推計84%から110%超に増えたことになる。
OPECは今年の原油需要を、先月の予想よりも20万BPD引き上げた2,380万BPDと推量している。また、この値は、6月の産油量を150万BPD上回っている。これは、現状の生産高が維持された場合、2020年は供給不足となることを示している。
減産にも関わらず、先進国の石油備蓄量は増加し続けている。5月には2,990万バレル増加し31億6,700万バレルとなり、5年間の平均値を約2億1000万バレル上回っている。
ロイター