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インタビュー:エネルギー界に対するシャルジャの石油マンの視点

イラスト:ルイス・グラニェーナ
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26 Jul 2020 11:07:14 GMT9
26 Jul 2020 11:07:14 GMT9
  • シャルジャ・ナショナル・オイル・コーポレーション(SNOC)のCEOは、価格戦争により米国のシェールがいかに大きな敗者となるかについて語る

フランク・ケイン

シャルジャ・ナショナル・オイル・コーポレーション(SNOC)は、近隣諸国のサウジアラムコやアブダビ国営石油会社(ADNOC)などの巨大な各社に比べれば、確かに世界の石油業界の大物ではない。

SNOCのハテム・アル・モサ最高経営責任者(CEO)も自ら認める通り、同社の生産量は石油輸出国機構(OPEC)におけるアラブ首長国連邦の割り当て量の切り上げ端数にも満たない量だ。

しかし、アル・モサは生涯の石油マンであり、アモコで、またアモコがBPと合併してからはBPで働いた経験を有し、石油ビジネスの豊富な経験と洞察力を持っている。

モサとの対話は、エネルギー業界で何が起こっているかについて専門家の見解を求めている人にとって大きな価値がある。

世界のエネルギービジネスにおけるこの5カ月間の前代未聞の乱高下に関する火急の課題について尋ねるのに、同氏より適した人はいないだろう。価格戦争はあったのか?そして、誰が勝ったのか?

後者について、モサには断固たる主張がある。「誰も勝っていない。誰もがひどい負け方をした」と、氏はアラブニュースに語った。「私の認識は、ロシアが減産の交渉を続けたくなかったということ。サウジアラビアはその瞬間に『なるほど、ロシアはやりたくないのか。ならば我々もやめて、止まったところから再開しよう』というふうに決めてもよかった」と氏は述べた。

「そうすれば、サウジアラビアが減産を完全に放棄して完全な増産に戻ろうと決めたその瞬間に起こった暴落は起きなかっただろう」

しかし、これは4月の原油価格暴落の主な理由ではなかった。「ロシアは間違いなく協力したくなかっただろうが、そこまで極端に行く必要はなかった」とアル・モサは言う。

「しかし、全員が予期していなかったのは(コロナウイルス病)COVID-19だった。COVID-19は影響を及ぼしていたものの、まだ需要を殺すまでのものとは見られていなかった」

しかし、大負けしたのは米国のシェールだと氏は考えている。アメリカのベンチマークであるウェスト・テキサス・インターミディエートが4月のブラックマンデーにマイナス領域に入った石油価格の暴落は、多くの米国シェール企業がもはや財政的に発展できないことを意味し、それ以降倒産と閉鎖が続いた。アル・モサはそれを予想していた。

「それが始まった瞬間から、シェールオイルが価格戦争の最大の犠牲者になると思っていたが、COVID-19による破滅がこれほど深刻なものになるとは私を含め誰も思っていなかった。最悪の事態となり、コロナがすべてを破壊した」と、氏は述べた。

いくつかの点で、シェールにもその兆しはあった。「歴史を見れば、シェールオイル以前はほとんどOPECが価格をコントロールしていた。OPECにとって快適で、需要に一致する価格になるよう供給を増減しようとした」と、氏は語る。

「21世紀初頭にシェールオイルが登場すると、その公式は実質的に消えてしまった。なぜなら、OPECが価格をコントロールするために生産を抑えるたびに、シェールオイルがそのシェアを奪ったからだ」

4月の価格暴落は報いだった。「シェールオイルは非常に無責任な振る舞いをした。完全にお金のためだけに動き、機会があるごとに別の市場シェアを奪い、OPECはさらに生産を失った」と、アル・モサは言う。

氏は、一部の専門家が言うように、サウジアラビアがシェールを市場から追い出そうとしていたと考えているだろうか?

「私が言うことはすべて、私の憶測に過ぎない。あれが意図的だったならば非常に賢い動きだと思うが、サウジがそれを認めればアメリカの政治家を怒らせることになるので認められない。COVID-19とロシアのせいにするのが簡単な方法だっただろう」と、氏は言う。

一部のアナリストは、サウジアラビアはできるだけ早く原油価格を上げる必要があると言うが、アル・モサはより慎重なアプローチが必要だと考えている。

「原油価格を回復させるべきだと言われ続けているが、それはOPECの優先事項であるべきではないと考える。35~45 ドルの価格を維持し、代わりに市場シェアを取り戻すことを優先すべきだ」と、氏は語る。

「価格が45ドルに向かって上昇し始めるたびに、生産を増やして減産を減らすべきで、減産が100%回復するまで45ドルを超えないようにそれを続けるべきだ」

石油市場の将来の道は、OPEC+合意で中心的な役割を果たすサウジアラビアとロシアの関係に依存する。OPEC+はすべてのOPEC+参加国が新たな生産量レベルを遵守することを非常に重視している。

「もしサウジアラビアが50ドルを狙って減産を拡大しすぎているというふうにロシアが見れば、ロシアは『いや、うちは50ドルはいらない、それより市場シェアを取り戻したい』と言う可能性がある」と、アル・モサは述べた。

「ロシア・サウジ間の合意が少しでも弱まれば、減産で苦しむ他の小国の撤退を促進することになるだろう」と氏は付け加えた。

「そのため、OPEC+の団結はこれからの段階において、市場と原油価格の安定を維持するためだけでなく、原油価格の回復とともに減産を削減できるよう十分な柔軟性を持つうえで、非常に重要であると考える」

OPEC+合意以外では、独立系石油会社や国家企業が設備投資を削減する中、投資ギャップが生まれつつあるとアル・モサは見ている。

「設備予算は、すべてのNOC(国営石油会社)およびIOCS(国際石油会社)全体において大幅に削減されており、生産がCOVID-19以前の水準に戻っても、OPEC+はそれを満たす生産を持たなくなる」と氏は語る。

「今お金を使わなければ、これから1年後には悪化し、2年後にはさらに悪い状況になるだろう。来年末までに原油価格が急騰する可能性があると見ている」

世界のエネルギー産業にとって見極められない大きな要素は需要だ―パンデミックのロックダウン後に世界の各経済大国はどのくらい早く再開し、パンデミック以前の約1億日量バレルの水準を回復できるのか。その点について、アル・モサは特に楽観的ではない。

「長期的な回復はすぐには見えない。途中で浮き沈みがあるだろうが、本当の回復からはほど遠いと思う」と、氏は言う。

「COVID-19はすぐにはなくならず、むしろ悪化している…インド、米国、ブラジル、ロシアのような経済大国を含む、世界中のあらゆる場所で。アフリカのように、実情が伝わりづらい他の場所にも広がっている」

アル・モサは、地域の政策立案者はウイルスと戦うために経済刺激策について微妙なバランスを見出す必要があると考えており、付加価値税(VAT)を3倍にするというサウジアラビアの決定には批判的だ。

「付加価値税の引き上げにより政府には早くお金が入るかもしれないが、これはビジネスに害をもたらし、収入源が下がるため、長期的にはむしろ悪化させると考える」と氏は語る。

アル・モサは、ウイルスの影響を矮小化する一部のグローバルリーダーの考えに同意しない。

「一部の人々は経済の再開を見て、COVID-19のリスクが以前より減っている、あるいはウイルスが弱くなっていることを示すものと誤って捉えている。それらはすべて嘘のプロパガンダであり、間違った情報だ。ウイルスは弱くなっていない。最初に現れたときからその致死力はなんら変わっていない」と、氏は述べた。

しかしアル・モサは、中東の指導者たちは良い模範を示したと考えている。「再開を通じて、人々には常にマスクの着用をお願いしており、指導者もマスクを着用しているのが見られる」と、氏は言う。

「COVID-19は決して安全ではなく、致死力が極めて強いパンデミックであるが、簡単な予防措置により対抗することができる、という一貫したメッセージを出し続けている」と、氏は付け加えた。

「我々の指導者たちがこの役割を果たさず、これは単にインフルエンザのようなものだと言ってしまったら、人々の悪い行動を助長することになる」

SNOCはより広範なアラブ首長国連邦経済の一部であり、その石油支配的な構造においてシャルジャは大きな役割を果たしてはいないが、世界の石油価格の下落とそれに伴う世界的な景気低迷の影響を必然的に受けている。

しかし、SNOCはパンデミックによる打撃の前から実行していた拡張戦略を維持できている。

「パンデミックの間、我々は人員を削減していない。むしろ、新たに数人雇っている」と、アル・モサは言う。

「我々はパンデミックの前から拡大モードに入っており、ADNOCの規模では大きくはないかもしれないが、我々の基準では大規模ないくつかのプロジェクトを開始していた。我々はすでに前進していた」と氏は付け加えた。

「唯一受けた影響は、それらの実行が多少遅くなったことと、従業員を守るための非常に厳格な措置を実施したことだ。オペレーション関係を除くすべての従業員が基本的に自宅勤務を始めている。しかし、オペレーションは24時間、ノンストップで稼働している」

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