
失業率が書類上は低いため、日本経済がコロナ危機にある程度うまく対応できているように見える。しかし完全失業率とは裏腹に、非正規労働者に関する見通しは悪化しつつある。非正規労働者は雇用市場全体の約4割を占めている。
失業率が増加すると、安倍晋三首相の数少ない成功例の1つが台無しになるだろう。経済を復活させることを狙った「アベノミクス」と呼ばれる経済政策だ。
6月の日本の失業率は2.8%で、米国の10.2%とユーロ圏19カ国の7.8%と比較してはるかに低かった。しかしデータを詳しく見ると、求職を断念する人の数が増加していることがわかる。そのため完全失業率(求職者の割合)はあまり上昇していない。
自宅待機労働者約240万人が国からの補助金により給与を得ている。政府は9月末で終了予定の補助金支給を延長する方向で動いている。
「自宅待機労働者が膨大に存在するというのは、企業側は人手が余っており、今後雇用を削減せざるを得なくなるということです」と日本総研のシニアエコノミスト山田久氏は語った。
さらに「失業は今後数年間でより幅広い分野にまで波及し、家計の購買力が損なわれるため、日本の景気回復に悪影響を与えるでしょう」と述べた。コロナ危機が消費と輸出に打撃を与えたため、日本経済は第2四半期に記録的なペースで失速した。
雇用市場では、日本国内の全従業員の38%を占める「非正規労働者」に分類される低賃金アルバイトを含めた人々が痛みを最も感じている。
厚労省によると、非正規労働者はレストランやホテルで働く従業員の約4分の3を占めており、その多くがコロナ危機の犠牲となったという。
政府の調査によると、2月以降解雇された労働者は4万人を超え、そのうち1万5千人は非正規労働者だったという。神奈川県のコールセンターで派遣社員として働いていた20代の女性は6月に仕事を辞めた。
「会社は派遣社員が自宅で働くのを許可してくれませんでした」と匿名を条件にロイターに語った。「休みは取れるけど給料は出ないと言われ、失業保険で暮らしたほうがマシだと思って辞めました」とのことだ。
自宅待機中の労働者を表向きの数字に加えると失業率は4%近くになると予測する経済学者もいる。さらに広く見ると、景気悪化により就職活動中の若者も定年間近のシニア層も影響を受けている。
100名を超える大学生と高校生が内定を取り消された。2019年の数値と比較して約3倍になる。上場企業50社以上が早期退職を募集し、約9,300名の従業員を解雇した。これは様々なデータを照らし合わせると8年間で最速のペースとなる。
一部のアナリストは、日本の完全失業率が2009年の世界金融危機で記録した5.5%まで上昇すると予想している。この数値は日本としては高いものだ。労働組合は昔から雇用と引き換えに賃下げを受け入れている。このため諸外国と比較して失業率は低い水準にある。
しかし、山形県にある日本旅館の佐藤信行社長は、政府の助成金が打ち切られると、雇用削減を余儀なくされる可能性があると語った。
「人件費は我々のような日本旅館にとって、総コストの3割を占めるため大きな負担です」と佐藤社長はロイターに語った。
ロイター通信