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欧州はイランの核装備による反抗姿勢に対処する必要がある

イランの非公表の場所で弾道ミサイルが発射されテストされている。 (ロイター)
イランの非公表の場所で弾道ミサイルが発射されテストされている。 (ロイター)
13 Dec 2019 11:12:54 GMT9

欧州諸国はイランに対する立場を変えつつあるようだ。先週、イランが核兵器を搭載可能な弾道ミサイルを開発していると警告したことからも分かる。英、独、仏(欧州3国)— 3国とも2015年包括的共同行動計画(JCPOA)核合意の署名国 — は、国連に宛てた書簡のなかで、イランが4月に「シャハブ3」ミサイル異型をテストし、同ミサイルは「新型の終末誘導機動弾頭(MaRV)を搭載」し、核兵器を運搬することができると指摘した。

イラン政府は、欧州3国のスタンスの潜在的な変化を、自国の国家安全保障と神権体制の存続に対する脅威とみなしている。イランのモハンマド・ジャヴァード・ザリーフ外相は、書簡は「#JCPOAの最低限の義務すら果たすことができない、自らの惨めな無能さを隠すために」欧州大国が作り上げた「必死の虚言」であると、激しい反論の言葉を吐いた。だがザリーフ外相は、イラン政府が「核兵器を運搬できるように設計された弾道ミサイルに関連する活動を発射を含めて実施しない」ようイランに求めた国連安全保障理事会決議第2231号に違反しているとの言及を怠った。

EUは「貿易取引支援機関(INSTEX)」と呼ばれるメカニズムを通じて核合意を救おうとしている。イランと欧州諸国が米国の制裁を回避することを目的としたものだが、イラン政権は完全に満足しているわけではない。このEUの緩和政策にもかかわらず、歳入と石油輸出の減少が続いているからだ。

より根本的なこととして、イランの指導者たちは、核およびミサイル活動を徐々に拡大したのは米国が核合意から撤退したからだと主張している。この主張はばかげている。なぜならイラン政府はこれまでも決議第2231号に違反して弾道ミサイル活動を行ってきたからだ。トランプ大統領が米国をJCPOAから撤退させた以前からだ。

2015年に核合意が締結された後、イラン政権は莫大な追加収入を受け取り、これによって弾道ミサイルプログラムをさらに前進させ、より多くのミサイルをテスト発射することができた。たとえば、合意締結直後の2015年10月と11月にも、イランは精密弾道ミサイル「Emad」と「Ghadr-110」のテストを行っている。2016年3月には「Qiam 1」を含む数種類のミサイルをテスト発射した。2017年の1月、そしておそらく9月にも、中距離「ホッラムシャフル」弾道ミサイルのテストを行った。そして2017年6月には、イラン政府は初めて他国に弾道ミサイルを発射した。発射先はシリアで、同国デリゾール州にQiamミサイル6基が発射された。

2017年6月の攻撃の数時間後、イラン国民抵抗評議会(NCRI)の米国事務所は、イラン政府が核合意の結果としてミサイル活動を加速させ、それが最高指導者アリ・ハメネイ師の命令によるものであることを明らかにした。イランの神権体制から得られた詳細な情報、特に国防省とイスラム革命防衛隊(IRGC)から得た詳細な情報に基づいて、NCRIはハメネイ師がIRGCの航空宇宙部隊にこの任務を遂行したことを示した。

イランの在外反政府派組織であるNCRIは、ミサイルの製造、テスト、発射に関わるIRGCの42か所のセンターの位置情報も明らかにした。42か所のうち、15か所がイラン政権のミサイル製造ネットワークに関わる施設だった。

イランのミサイル開発計画が同政権の核開発計画と関連していないと主張するのは非現実的だ。たとえば、セムナンのミサイルセンターはSPNDに積極的に協力してきた。SPNDは核爆弾の建設を任されていると伝えられている機関であり、SPNDとは、「防衛開発研究機関」と呼ばれるイラン政府内の核兵器プログラムのエンジニアリングユニットのペルシャ語名の頭文字を取ったものだ。NCRIが最初にSPNDの存在を明らかにしたのは2011年。その3年後には、SPNDは米国務省の制裁リストに加えられた。

イランでは政治的スペクトルを問わず政界全体の指導者たちが弾道ミサイル開発計画への投資に関して一致団結しているようだ。ハッサン・ロウハニ大統領は、イランのミサイル活動は衰えることなく続くと繰り返し強調してきた。核合意が締結されて間もなく大統領が「近い将来、我が国は新型弾道ミサイルをテストし、敵国にとって心配の種となるだろう」と述べたことは今では広く知られている。

政治的スペクトルを問わず、イラン政界全体の指導者たちが弾道ミサイル開発計画への投資に関して一致団結しているようだ。

マジッド・ラフィザデ博士

 

イラン政権はまた、自国のミサイルをイラクやイエメンなど他国で活動する代理組織に密輸することも行っている。これは米海軍が先週「武器や先進ミサイルの部品の隠し場所」を発見したことにより確認された。

英、独、仏はイランの弾道ミサイル活動に懸念を表明しているが、EUはまだイラン政権に説明責任を果たさせるための具体的な行動をとっていない。これは、EUが現在でも核合意維持を望み、特にエネルギー部門においてイラン政府との経済・貿易関係を守りたいと考えているためである。

国際社会は、イランのミサイル開発計画およびそのすべての関連組織、機関、個人に対して効果的かつ広範な制裁規定を制定し、執行する必要がある。これには、IRGCの国際テロ組織指定、IRGCとその関連民兵および代理組織の他国からの追放が含まれる。

  • マジッド・ラフィザデ博士は、ハーバード大学で学んだイラン系アメリカ人の政治学者です。イランと米国の対外政策に関する第一人者で、ビジネスマンでもあり、International American Councilの議長を務めています。Twitter:@Dr_Rafizadeh
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