
三菱重工業は30日、国産初の小型ジェット旅客機「スペースジェット」(旧MRJ)の開発を凍結すると発表した。開発が遅れていた上、新型コロナウイルスの流行で旅客需要が急減。世界的に航空業界が苦境に陥る中、当分の間は需要が見込めないと判断した。「日の丸ジェット」の実現は一段と遠のき、撤退の危機に直面している。
三菱重工の泉沢清次社長は同日、2021~23年度の事業計画を発表し、スペースジェットの開発について「いったん立ち止まる」と表明した。
運航に必要な国土交通省からの型式証明取得に向けた作業は継続するが、開発費は3カ年で約200億円に大幅圧縮し、新たな飛行試験を見合わせる。量産も先送りとなる。再開のめどについて泉沢氏は「需要の回復状況次第だ」と説明した。需要次第では撤退に追い込まれる可能性もある。
08年に始まった開発は、1960年代に国主導で行われた小型旅客機「YS11」以来、日本が半世紀ぶりに旅客機を一から手掛けるプロジェクトだった。
ただ、旅客機開発に関する経験やノウハウの不足から開発が難航。量産初号機の納入時期は6度の延期を経て当初目標の「13年」から既に8年遅れ、開発費も1兆円規模に膨張していた。
納入時期は今年2月に公表した「21年度以降」のままだが、事実上24年度以降になる。
JIJI Press