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改革者が求めるもの:次期国連事務総長の選考過程の透明化

総会は2016年10月13日、国連の創設以来初めて事務総長に、米国とロシアの第1志望ではないアントニオ・グテレス氏を任命した。(AFP/資料写真)
総会は2016年10月13日、国連の創設以来初めて事務総長に、米国とロシアの第1志望ではないアントニオ・グテレス氏を任命した。(AFP/資料写真)
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20 Dec 2020 12:12:48 GMT9
20 Dec 2020 12:12:48 GMT9

エフレム・コサイフィ

ニューヨーク市:創設されたその日から、国連事務総長の役割と責任はいささか曖昧だった。第二次世界大戦の余波の中の、かつて「この地球上で最も不可能な仕事」と呼ばれたこの役職に対する、勝利した連合国の曖昧な態度が、75年前に開かれた最初の会議から明らかになった。

初代事務総長の任命をめぐる議論では、連合国(英国、仏国、中国、米国、ソ連)は、国連総会で直接選出された事務総長に断固反対し、安全保障理事会常任理事国として任命過程において後に持つことになる拒否権を擁護した。

事務総長の選出は、資格や名声、指導者としての資質に基づくのではなく、ただ米国とソ連が合意できるというだけで決定されることも、当初から明らかになっていた。

ニューヨークで新型コロナウイルスが流行していたため、ほぼバーチャルだった第75回国連総会が開かれていた2020年9月22日、無人になっていた国連本部(AFP/資料写真)

つまり国連憲章第97条は、「安全保障理事会の推薦に従い」、国連事務総長を選出する責任を総会に与えているが、最初の70年間における総会の役割は、ただ一人の候補者を総会に任命するよう「推薦」した、(P5として知られている)5カ国の常任理事国の決定をよく検討せずに承認することに限定されていた。

候補者らは、P5の国民に国連のハイレベルのポストを約束する代わりに、P5の支持を確保する裏取引をすることを強いられた。例えば、1996年、フランスはコフィ・アナン氏が国連平和維持活動のトップにフランス人を指名することに同意するまで、同氏に拒否権を行使した。

不透明な選考過程のせいで、国連の信頼性は数十年にわたって危機に瀕した。

しかし、5年前からこの状況は変わり始めた。

2016年10月13日、総会は、国連の創設以来初めて事務総長に、米国とロシアの第1志望ではないアントニオ・グテレス氏を任命した。

グテレス氏の選出は、よりオープンで包括的な選考過程を求める市民社会団体や国連総会の一部のメンバーによる、長年にわたる熱心なロビー活動に成功をもって報いた。ニューヨークやその他の主要な首都で行われたこのキャンペーンは、2015年9月、国連総会で決議が69/321で採択されるという画期的な出来事で終わった。この決議により、選考過程の大まかな予定表が要求され、最高水準の能力と高潔さを体現する候補者の基準が提案された。

現職のアントニオ・グテレス事務総長は2016年10月13日、国連総会でその地位に任命された。(AFP/資料写真)

総会は、全候補者の名前と履歴書、ミッション・ステートメントを公表することで合意し、各国に女性候補者を推挙するよう呼び掛けた。その後、決議は70/305で国連の上級職を特定の国家や国家集団が独占することに反対した。

「画期的とは思えないが、公に知られている候補者の名前が実際に入ることになっていた」と、「1 for 7 Billion: Find the Best UN Leader」の共同創設者であるベン・ドナルドソン氏は語った。この市民社会団体が2014年に選考過程を改革するためのキャンペーンを開始して以来、世界中の750のNGOとその関連団体が参加している。

「我々や市民社会の多くの人々には、候補者となった人が探し出された方法について、必要な資格がなく、申し込み手順もなく、最終候補者リストもなく、何も公に知られていないことは、言語道断に思えた」

「気候変動、人道主義の存続の危機といった地球規模の課題への対応の最前線にいる立場にあって、精査や透明性がほとんどないのは、ばかげているように思えた」

潘基文氏の国連総会議長としての任期が終わる前年の2015年12月15日、米国のサマンサ・パワー国連大使とモーンス・リュッケトフト国連総会議長は、選考過程を開始する共同書簡を送った。

2017年12月12日、パリで開催されたワン・プラネット・サミットの会議に出席する潘基文前事務総長。(AFP/資料写真)

リュッケトフト氏は、先を読んで行動する、第70回国連総会の議長で、「次期事務総長を選出するときに、より透明、よりオープンにすること」を優先課題にしており、候補者と彼らのビジョン記述書を掲載したウェブサイトを開設した。

討議が行われ、オンラインでストリーミング配信され、加盟国は13人の候補者(女性7人、男性6人)に対し、彼らの経歴とビジョンについて厳しく質問することを許された。数千人の市民が会議に参加し、候補者らは世界中から寄せられた質問に答えた。

「本当に革命だった。候補者やビジョン、履歴書が公にされるとすぐに、全ての開放性が解き放たれ、GAホールでは国連の未来について開放的な議論が行われた。我々はどのような組織であるべきなのか。人類が直面している惨禍に対処するために、より健全で、よりオープンな組織に変わるにはどうすればよいのか」。ドナルドソン氏はアラブニュースに話した。

国連総会では2つのグループが、オープンで包括的な過程を最も強く支持するようになり、すぐに「1 for 7 Billion」との取り組みに加わった。ヨルダンやサウジアラビアなど25カ国が参加している「説明責任、一貫性、透明性(ACT)」グループと、アルジェリアが調整役を務める、非同盟運動(NAM)を形成する120カ国だ。

アントニオ・グテレス国連事務総長は2018年4月22日、スウェーデンのウプサラで、1953年から死去するまで国連事務総長を務めたダグ・ハマーショルド氏の墓前に花輪を置き、敬意を表した。(AFP/資料写真)

彼らは長年にわたり、選考における総会の役割を強化し、より透明で、より包括的にすることを求めてきた。

「だが、改革はそこまでだった」とドナルドソン氏は述べた。「2016年の選考で包括性と透明性が確保された後、過程は安保理に戻り、常任理事国が拒否権を持つ非公開の場で、次期事務総長になる人物が決められたからだ。その後、安保理は、総会の任命を受ける、ただ一人の候補者を推薦した。

「改革は国連憲章に忠実であり続けたが、重要なことに、総会の意思はP5の意思を弱めることができた。それは大成功を意味する。「1 for 7」で我々は、P5が長年にわたってしがみついてきた権力と特権の一部を崩すことができたことを喜んでいる」

アントニオ・グテレス国連事務総長(左)は2018年4月22日、スウェーデンのウプサラにあるダグ・ハマーショルド財団でスウェーデンのビクトリア皇太子妃と会談する。(AFP/資料写真)

グテレス氏の最初の任期が1年後に終わるため、ドナルドソン氏は第75回国連総会議長に対し、安保理議長と協力し、次期事務総長の任命に向け、しっかり構成された計画の概要を示し、選考過程を開始するよう要請した。

COVID-19のパンデミックのため、選考過程の改善を目的とした国連総会は開かれなかった。現職の2期目への立候補に関係する可能性があるため、今回は特に重要だった。

「この激変のせいで、我々は気が付くと、うっかり2015~16年に行われた素晴らしい改革を強固なものにする機会を逃してしまうかもしれない」とドナルドソン氏は述べた。「ひいては、国連は次の指導者を任命するための透明で包括的な過程を実行することで、自らの正当性を強める機会を逃しているかもしれない」

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Twitter: @EphremKossaify

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