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世界の株式市場の雄牛(そして天罰)の年

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11 Jan 2021 04:01:42 GMT9
11 Jan 2021 04:01:42 GMT9

アンソニー・ローリー

東京:多くの金融評論家たちの目から見ると、2021年は世界がCovid-19 危機を乗り越え、世界経済が上向いて回復し、株の投資家たちが再び真剣に金儲けを再開する、といった年になる。しかし本当にそう思っているとしたら、おめでたい人間だ。

この儚く脆い楽園の門の外には悪魔が待ち構えており、中の住人は引きずり降ろされるか、そうでなければ地獄の猛火の中へ投げ込まれ、その時になって初めて冷水を浴びせられたような痛みを伴う現実に戻ることになる。それが元米国連邦準備制度理事会のアラン・グリーンスパン会長が「根拠なき熱狂」状態と呼んだものの終末となる。

この悪魔の一つは、「借金」という名前だ。政治家たちが別の方を向いている間に、そして政府、企業、一般家庭が好き放題に金を借りまくり、株式投資家たちも同じく一生懸命借り入れに奔走している間に、おぞましいばかりの巨大な規模へと成長した悪魔である。

国際金融学会が言うように、「世界経済は記録的な額の債務を抱えて2021年に突入し、その債務は経済回復見通しに重くのしかかってくるだろう。世界の債務の急増は、パンデミックの発生以降史上類を見ないレベルに達し、昨年は17兆ドル以上の増加により275兆ドルに至った」

もう一つの悪魔である「誘惑」は、この楽園に住むおめでたい住人たちを誘惑して安心させ、自己陶酔に浸らせた。この悪魔は安心の女王QE(Queen of Ease)、同時に量的金融緩和政策(Quantitative Easing:簡単に手に入るお金で世界中を満たすための中央銀行の手段)の女王とも呼ばれる。

三つ目の悪魔もさりげなく巧妙な手段によって、力づくでも再び世界金融恐慌を引き起こそうという意図をもつ破壊的目的を隠している。この悪魔は「MMT」つまり現代貨幣理論と呼ばれ、同時に「架空の貨幣理論」とも呼ばれていることを多くの人は認識していない。

しかしさらにもう一つ悪魔がいる。多くの批評家たち(一般大衆よりは知識があるはずの人々)にその存在を気付かれていないか、少なくとも認められていないことは確かだ。それらの批評家たちは、お金というものは中央銀行から乳と蜜のごとく流れ込んでやまないものなのだと主張し、その報いを恐れることもない。

この不吉な悪魔の名は「天罰」といい、ギリシャ神話の中の神聖なる因果応報と報復の女神にちなんで名付けられている。もっと普通の言い方をすると、「逃れようのない仲介者に よってもたらされる没落」を意味する。しかしどちらにしても、「天罰」という言葉は傲慢または不用意な行動に対する罰という意味合いを含んでいる。

これら全てが金融市場、特に株式市場と何の関係があるのか?いわゆる先進国の株式市場は、現実の世界の社会経済問題を無視した場合にのみ、つまり「おめでたい人間たちの楽園」シンドロームによってのみ、長期にわたるどんちゃん騒ぎを楽しむことができる。

今年はこの嘆かわしい事実が戻ってくる年となる。市場が成長を強いられる年、つまり気候変動が引き金となる洪水・山火事・干ばつ・疫病から地球とその住人を救うには膨大な金がかかるということにようやく気づかされる年となるはずだ。

どのくらいの金を誰が払うのかという問いへの答えは、金融市場に大ショックを与えることだろう。何兆ドルという金額が、金融市場から二酸化炭素を低減させる新プロジェクトや古い資産の減価償却へ投資される必要がある。それに新たなパンデミックも予防しなくてはならないし、その他無数の社会経済分野への投資も必要となってくる。

パンデミック後の世界が直面する金融上の大きな課題を認識するのに難しく考える必要はない。生産と雇用が激減し、何百万人という市民が貧困生活に逆戻りし、不均衡が増大し、民間資本と公共資本の投資が継続的に減少していくことになる。

復讐に燃える「furies」(古代ギリシャ神話の中の復讐の女神)のありとあらゆる悪質さをもって Covid-19が世界に襲いかかった以前でさえ、経済学者や開発スペシャリストのうちの比較的知性派たちが、不均等の増大や潜在的な社会不安の危険性を警告していた。

しかし株式市場の方は、一部の後進国でさえ、そうした警告には耳を貸さずに嬉々として取引が行われ、金融緩和に酔いしれた。金融緩和は富裕層と貧困層双方の経済活動を支援するはずであったが、実際にはそうではなく、労働者よりもむしろ資産家に有利に働いた。

そうした経済不均衡と、それを軽減または消滅させるための財政支出を軽視した結果のツケが回ってこようとしている。しかも疫病対策、基本的インフラ、医療、教育、その他のもろもろの社会経済プロジェクトのために、既に財政支出へのニーズが膨大に存在しているところへ、パンデミックが輪をかけているこの時期に。

これらは政府の問題だ、と投資家たちは言う。こうした無数の問題から地球と人類とを救うために、いったいどのくらいの費用がかかるのか、正確な計算結果は出ていない。しかし、国連持続可能な開発目標(SDGs)は、今から2030年までの間に年間5兆ドルかかると推定している。

また2015年に国連は、必要経費の半分以上を政府が支払うことは期待できないため、残りの半分は民間部門が払う必要があり、それはむこう10年間毎年約2.5兆ドルの計算になると述べた。

これはつまり、気候変動に貢献する新たな投資のみならず、炭鉱から発電所までのいわゆる「座礁資産」(イングランド銀行が見積もったコストは20兆ドルにのぼる)のための資金調達をするには、既存及び新規企業株主たちに出資を呼びかけるしかないということに  なる。

そのために株主たちは、企業が設備投資できるよう配当を放棄する必要が出てくる。中央銀行の流動資産の投入によって食いつなぎながら過去数年間行ってきたように、「テックブーム」に乗じるのと同じくらい彼らにとっては何の魅力ももたない展望なのだ。

米国連邦準備制度の指導により、これらの銀行は2008年の世界金融恐慌以来、市場をまかない金融制度が疲弊するのを回避するために、驚くほど「バランスシートを膨らませている。」その方法は功を奏したが、そのかわりに過剰な資産インフレを招くことになった。

連邦銀行と欧州中央銀行だけは、2010年以来そのバランスシートの規模を約6倍に増大させた。しかしそれは、一部の専門家が認めるように、インフレ、金融不安、金融市場の歪み、そして政府の債務管理の問題を生みだすリスクをとった上でのことだった。

各国政府は現在非常に深刻な債務を抱えている。IIFが言うように、「それは主に世界の政府債務対GDP比を2019年の90%から2020の105%近くまで引き上げた政府の借入金が著しく蓄積したことが原因となっている。

株や債券市場への投資家たちは経済回復と持続可能な未来のための融資負担をもっと背負う必要がある。より早くこの事実に直面し、長期投資のニーズの真価を短期利益への渇望と置き換えるほど、未来はより明るいものとなる。

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