
オリンピックが中止された場合、日本は1.8兆円(160億ドル)を失うことになる。しかしそれは、夏季オリンピックというイベント自体がウィルスを拡散するスーパースプレッダーとなった場合の経済的打撃と比較すれば、小さなものになるだろう。第一線のエコノミストがこのように推測した。
野村総合研究所のエグゼクティブ・エコノミストで、日本銀行の元理事でもある木内登英氏によれば、昨年春に発出された1回目の非常事態宣言では推定6.4兆円の損失が生じており、2回目および現在発出中の3回目の非常事態宣言からは更に大きな損失が生じた。
「(オリンピックが)感染の拡大を引き起こし、更なる緊急事態宣言が必要となった場合、経済的損失ははるかに大きくなるだろう」。木内氏は火曜日に発表された報告書でこのように述べた。彼はまた、大会中止による直接的な損失は2020年度の名目国内総生産(GDP)の1%の1/3に相当するだろうと、付け加えた。
「これらの計算は、大会を開催するか中止するかの決断は経済的損失よりもむしろ感染リスクの観点から行われるべきであることを示唆している」と、彼は結論付けた。
オリンピックの主催者たちは、昨年から延期された大会は参加選手たちが一般の日本人たちと交わらないようにするなど厳格な安全対策を講じることで開催されるだろうと述べた。オリンピックは7月23日に始まる。
世論調査では、パンデミックの中でオリンピックを開催することに国民の大多数が反対していることが繰り返し示されている。
日本ビジネス界の大物でソフトバンクグループCEOの孫正義氏は週末に一連のツイートをして、オリンピックが感染者急増につながった場合、日本が「失うものは大きい」と主張したが、木内氏の推測はこの見解を支持する内容となっている。
日本では約719,000件の新型コロナウイルス感染が報告されている。この数は他の国に比べて少ないが、日本の多くの地域が医療体制逼迫による緊急事態宣言の制限下にあり、またワクチン接種の進捗も遅く、現在までに接種を済ませたのはわずか5%だ。
(1ドル = 108.7500円)
ロイター