• キング・アブドゥラー国際医療センター（KAIMRC）はバイオテクノロジー分野のリーダー的存在
• KAIMRCの研究室では70人の博士研究者チームが在籍

ジョージ・ダーレイ

リヤド：サウジアラビアが炭素エネルギーからより持続可能な経済へと多様化していく中で、バイオテクノロジーはビジョン2030の重要な要素として注目を集めている。

バイオテクノロジーは、分子などの生体システムや生物を利用して新製品を開発する技術である。この分野は科学と商業が融合した分野であり、画期的な医薬品、バイオ燃料、遺伝子組み換え植物などは通常、大学や病院の研究室で「構想」された後、民間企業によって市場に投入されるが、そのプロセスには10年もかかることがある。

サウジアラビアのバイオテクノロジーのリーダー的存在は、国家警備隊健康局の研究部門であるキング・アブドゥラー国際医療センター（KAIMRC、発音は「ケイ・マーク」）だ。

「バイオテクノロジーは、健康と経済に大きな影響を与える重要で活気のある分野です」と、KAIMRCのエグゼクティブ・ディレクターであるアフマド・アラスカー博士は語る。「王国は石油経済に代わるものを開発しており、バイオテクノロジーは新たな主要供給源となります。さらに、バイオテクノロジーは知識経済の重要な部分を占めています。私たちの戦略は、私たちの研究から革新的な製品を開発することであり、それは治療薬や診断薬、医療機器であるかもしれません」

このような製品は、KAIMRCの研究室で、70人の博士研究者のチームと、国家警備隊の6つの主要病院と健康科学を専門とする大学の2万人のスタッフの支援を受けて生まれる。その目的は、潜在的な製品を一連の実験や臨床試験を経て民間企業に引き渡し、その企業が製品を改良、最終的に消費者市場に投入するところまで持っていくことだ。例えば、KAIMRCが開発した、サソリに刺されたときや蛇に噛まれたときの解毒剤は、限定的ではあるが既に世界に流通している。

KAIMRCは、世界の主要な学術機関と協力している。「オックスフォード大学、ハーバード大学、ジョンズ・ホプキンス大学など、数え上げればきりがありません」とアラスカー博士。「その内容は、ワクチン、遺伝子研究、治療薬、薬剤スクリーニングなど、医療研究に関するものばかりです。また、当社の学術論文は毎年20〜30％増加しており、今年だけで査読付き学術記事への掲載件数は1600件を超えました」

また、アストラゼネカ、ロシュ、ノバルティスなどの大手ヘルスケア企業との密接な協力関係もあり、その多くはリヤド南東部の広大な国家警備隊の敷地内にあるKAIMRCのメディカル・バイオテクノロジー・パークに拠点を置いている。

これは好循環である。王国内に施設を設置する企業が増えれば、それだけ多くの投資家が集まり、バイオテクノロジーのエコシステムが形成される。今後5～10年のうちに王国はヘルスケア製品の主要な輸出国になると予測されている。

KAIMRCの活動は、2つの健康危機が原動力となっている。MERSと新型コロナウイルス感染症（COVID-19）だ。2015年、KAIMRCの科学者チームはオックスフォードに行き、そこの科学者たちと協力してMERSウイルスのワクチン開発を研究、王国内でも、最初はラクダ、次に人間での試験と実験を続けている。この研究は現在、国際的な査読付き学術雑誌に投稿されており、近いうちに市場での製品化につながるはずだ。

COVID-19のパンデミックは、KAIMRCの活動を一気に加速させた。「2020年3月にCOVID-19がイギリスで流行したとき、KAIMRCは3日以内にウイルスの全ゲノム配列を明らかにしました」とアラスカー博士は言う。「そして、そのデータをAIで処理、ウイルスの微細なターゲットを特定し、その微細なポイントに有効な化学分子を特定し、ウイルスを死滅させたのです。私たちはこの研究結果を臨床試験に持ち込み、この研究は査読付き学術雑誌に投稿されました」。その目的は、COVID-19を防ぐのではなく、その影響を軽減する薬を作ることである。

KAIMRCは、9月中旬にリヤドで開催される予定のメディカル・バイオテクノロジー国際サミットで、サウジアラビアをバイオテクノロジーの最前線に位置づけるための支援を行っている。

「私たちは国際的な製薬業界と協力して、バイオテクノロジーの国家戦略を策定し、サウジアラビアや世界中で直面しているヘルスケアの課題に対する解決策を見つけたいと考えています」。アラスカー博士は言う「ビジョン2030は、まさにその機会を与えてくれているのです」