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国連気候変動枠組条約採択 各国が石炭利用に妥協

第26回気候変動枠組条約締約国会議の閉会セッションで代表団の拍手に応える英国のアロック・シャルマ議長。2021年11月13日の土曜日、スコットランドのグラスゴーで。
第26回気候変動枠組条約締約国会議の閉会セッションで代表団の拍手に応える英国のアロック・シャルマ議長。2021年11月13日の土曜日、スコットランドのグラスゴーで。
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14 Nov 2021 05:11:23 GMT9
14 Nov 2021 05:11:23 GMT9

今回のサミットは初めて石炭を課題に据え、炭素クレジットの国際取引のルールを定めた

スコットランド・グラスゴー:土曜日、約200カ国が主な地球温暖化目標を存続させることを目的に妥協案を受け入れた。ただし、その直前に石炭に関する重要な文言を弱める修正が行われた。

小さな島国などのいくつかの国は、インドの要求によって最大の温室効果ガス排出源である石炭火力の目標が「段階的廃止」ではなく「段階的削減」に変更されたことに深く落胆したと述べた。

アントニオ・グテーレス国連事務総長は声明の中で「私たちの脆い惑星は危機に瀕している」と述べた。「気候災害の扉を叩き続けている状況は変わらない」

スコットランドのグラスゴーで2週間続いた国連の気候会議の最終日、協定の内容が不十分だ、目標が悠長すぎるとの不満が各国から相次いでいた。だが、何もないよりはましであり、成功ではないにしても、少しずつ前進しているという声も聞かれた。

最終的に、今回のサミットは、炭素クレジットの国際取引のルールを定めることで微弱ながら初めて石炭を課題に据えた。大規模な汚染をしている国々には来年の会議までに排出量削減目標を改善するよう言い渡した。

しかし、各国が国内の政治経済を優先したことで、迅速かつ大規模な排出量削減の宣言は再び妨げられた。温暖化を、一部の島国を消し去るほどの異常気象と海面上昇につながる危険なレベル以下に抑えるには排出量削減は欠かせないと科学者たちは指摘している。

今回の会議に先立ち、国連は会議の成功基準を3つ設定したが、どれも実現しなかった。国連の条件には、2030年までに二酸化炭素排出量を半分に削減する公約、富裕国から貧困国への1,000億ドルの財政支援、その支援金の半分は必ず開発途上国が気候変動の最悪の影響に適応するための援助に使われるようにすることだった。

「我々はこの会議で目標を達成できなかった」とグテーレス国連事務総長は述べた。「しかし、前進するために必要なことをいくつか準備できた」

スイスとメキシコの交渉担当者は、石炭に関する文言の修正の提案が出されたのが遅すぎ、規則に反すると声を上げた。だが、鼻をつまんで受け入れるしかないと言った。

スイスのシモネッタ・ソマルガ環境担当は、この文言修正により、産業革命以前からの温暖化を摂氏1.5度(華氏2.7度)に抑えることが難しくなると述べた。この目標気温は2015年のパリ協定でさらに厳しくなった基準値である。

他にも多くの国々や気候変動運動家が合意内容を薄める要求をしたとしてインドを批判した。

「インドが合意直前になって文言を石炭の段階的廃止から段階的削減に変えたことは非常にショックだ」とオーストラリアの気候科学者ビル・ヘア氏は言った。ヘア氏は科学に基づいたクライメート・アクション・トラッカーの運用のために世界の排出量の公約を追跡している。「インドは随分以前から気候変動対策を阻んできたが、ここまであからさまにしたことはなかった」

もう少し前向きに合意をとらえた意見もある。修正された石炭の文言に加えて、グラスゴーの気候変動枠組条約には貧しい国々をほぼ納得させるだけの金銭的インセンティブが盛り込まれた。排出権取引に道を開くという長年の課題が解決した。

また、炭素排出量の大きな国々は2022年末までにより強力な排出削減の公約を提出しなければならないと定められた。

「世界にとって良い合意だ」と米国のジョン・ケリー気候変動担当特使はAP通信に語った。「多少の問題はあるが、全体としては非常に良い合意だ」

インドの修正が行われる前、交渉担当者たちは、今世紀末までに地球の温暖化を1.5度に抑えるという包括的な目標はかろうじて存続すると述べた。地球は産業革命以前と比較して、すでに摂氏1.1度(華氏2度)温暖化している。

土曜日、交渉担当者たちは20回以上「前進」という言葉を使ったが、「成功」の言葉はほとんど聞かれなかった。それも合意に達したことに対してであり、内容についてではない。アロック・シャルマ議長は、今回の合意は「石炭、自動車、現金、樹木に関する課題の前進」を後押しし、「人類と地球にとって有意義だ」と述べた。

環境活動家たちがインドの土壇場の修正の前に出した評価は決して絶賛ではなかった。

国連気候会議COPのベテランであるグリーンピースのジェニファー・モーガン国際事務局長は「大胆さがなく弱い。1.5度の目標が残ったというだけだ。ただ、石炭の時代が終わるしるしにはなった。それは非常に重要なことだ」と話した。

メアリー・ロビンソン元アイルランド大統領は、引退した指導者のグループ・エルダーズで話し、合意内容について「ある程度前進したが、気候災害を回避するには全く不十分だ。今後、歴史的に恥ずべき職務怠慢だと見られるだろう」と指摘した。

インドのブペンダー・ヤダフ環境相は、石炭の段階的廃止の条項に反対し、開発途上国は「化石燃料を責任のもとで使用する権利はある」と主張した。

ヤダフ環境相は富裕国の「サスティナブルではない生活様式と無駄の多い消費行動」が温暖化を引き起こしていると非難した。

ヤダフ環境相の発言で最初に石炭の文言修正の懸念が生じたため、EU27カ国の気候特使であるフランス・ティメルマンス上級副委員長は不満をつのらせ、未来の世代のために団結するよう交渉担当者たちに懇願した。

「どうか、このときを無にしないで」とティメルマンス上級副委員長は訴えた。「子どもたちや孫たちの心に希望をもたらすためにこの文言を受け入れてほしい」

シンクタンクである世界資源研究所のヘレン・マウントフォード副所長は、インドの需要は、経済規模が小さいために恐れるほど問題ではないかもしれない、再生可能燃料で石炭はますます時代遅れになる、と述べた。

「石炭は死んだ。いずれにしろ廃止されていく」とマウントフォード副所長は言った。「合意が骨抜きにされたのは遺憾だ」

ケリー気候変動担当特使ら数名の交渉担当者は、良い妥協は全員に多少の不満を残すものだと指摘した。

「公人であっても必ずしも生死にかかわる判断ができるわけではない。誰もが地球全体に影響を与えるようなことを決められるわけではない。今日ここにいる私たちはまさにその特権を与えられている」と彼は言った。

石炭文言の修正の前、気候変動の壊滅的な影響を最も受けやすく、グラスゴーで大胆な行動を推し進めてきた小さな島国諸国は、会議の成果はともかく、妥協の意図には納得していると語った。

「モルディブはグラスゴーで実現したわずかな前進を受け入れる」とモルディブのアミナス・シャウナ環境・気候変動・技術大臣は言った。「この前進が目前の課題の緊急性と規模に沿ったものではないことは確認しておきたい」

シャウナ大臣は、6年前にパリで各国が合意した温暖化の限界を超えないために、世界は98ヶ月で二酸化炭素排出量を根本的に半分に削減しなければならないと指摘した。そして開発途上の世界としては富裕な世界にいっそう力を入れてもらう必要があると言った。

「1.5度と2度の違いは我々にとっては死刑宣告だ」とシャウナ大臣は言った。「気候危機を引き起こしたのは我々ではない。何をしてもその事実が反転することはない」

次回の会議はエジプト紅海に面するリゾート地、シャルム・エル・シェイクで開催される予定だ。2023年の会議はドバイが主催する。

AP

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