
ピーター・ハリソン
ラスベガス:建設界の未来はデジタルにある。それ以外のことはスクラップ置き場に行く運命だ。計画から、適切な請負業者の選択、そして購入プロセスまで、建設業界は急速にコンピューターオペレーターが支配しつつある。
事故の報告は、事故のパターンを発見できるソフトウェアを使えばさらに効率が良くなる。
しかもそれだけにとどまらない。建設業界は天然資源を大量に消費し、世界全体の廃棄物の3分の1を生み出している。
アメリカに拠点を置く多国籍技術会社のオートデスクは建設業界に特化した会社だ。そのCEOであるアンドリュー・アナグノスト氏は、アラブニュースにこの業界にはまだまだこれからだと語った。
「この業界はデジタル化する必要があります。建設業界の生産性は全般的にひどいものです。1つの社会として、もはやこのままでいられる余裕はないのです。まるでお金をトイレに流しているようなものです」と彼はラスベガスで最近開かれた、建設業界の会議の折に語ってくれた。
あらゆる業界と同様、建設業界にとってデータは価値のある商品であり、他のプロジェクトと(コストをかけて)共有することが可能で、これによってコストや廃棄物や事故を減らせる。
「実際にプロジェクトを立ち上げる前段階で、AIを使用して皆さんの役に立つことができます。これにより、プロジェクトの有効性についてもっと深い洞察が得られます」とアナグノスト氏は言う。
AIを使用することで、不十分な財務計画と不安定な資金調達によって、建築プロジェクトが未完成で終わってしまうケースが大幅に減少する可能性がある。デベロッパーは資金を調達し、それが使い果たされてしまうまで建設し、新たな資金調達があるまでプロジェクトが停止する、といったことが少なくなるのだ。
建築現場にテクノロジーを導入することで、プロジェクトのさまざまな側面で考えをまとめ上げることが可能になり、計画のわずかな変更もすべての部門に伝えられる。
プロジェクトマネージャーが、建設業界におけるコミュニケーションの障害に不満を持つケースは少なくない。レイアウトが変更されたときに、計画の更新がされず、電気技師が水道管に穴を開けなければいけなくなるといったことは、建設現場で起きる不具合のささいな一例である。
プロジェクトマネージャーがタブレットを持てば、計画の変更が常にプロジェクトマネージャーに知らされる。
建設業界がデジタル化されたことでデータを収集できるようになり、とりわけ安全面に関して建設業界で革命が起きるかもしれない。
オートデスクでチームをまとめる立場にあるパット・キーニー氏はデータ収集を通じ、職場の問題を解決する手助けをしている。このデータは、建設現場の会社が、毎日毎日入れ替わりでやってくる何百もの下請け業者や貿易会社との作業を、より効率的かつ安全に行えるようにする目的でも使用されている。データは多ければ多いほど、いい結果をもたらす。
「建設現場で起きた問題を調査できるようになりました。事故を評価し、何が再発する課題なのかを見つけ出します」とキーニー氏は続けた。
建設業界にもたらされている技術は実に有益で、設計者は膨大な量の情報をコンピューターに入力すれば、あとはソフトウェアから離れていても最適なワークフローを配置することができる。
人や物の動きが多い製造工場や組み立て工場においては、このことが特に役立つ。
配置を分析することにより、建築家と顧客の双方がオペレーションに最適な設計が構築できる。また、企業やデベロッパーがまだ現場を押さえていない場合でも、それを支援する技術がある。
アメリカに拠点を置くNearMapは、さまざまな都市の上空を飛行機で飛行し、膨大な数の非常に鮮明な画像を撮影しており、それを継続的な土地利用の確立に使用している。
緑地や建物が取り壊されている場所を見極められる顧客が、撮影された画像を利用できるようになっている。
「さまざまな角度から撮影した画像を使用することで、計画を実現させたときにどのような感じになるのかがわかるのです」と、Nearmap のCEO、ロブ・ニューマン氏は語る。
「収集した情報により、電話会社のネットワークが機能するかどうか、受信が塔によって阻害されないかをテクノロジー企業に伝えられます。これは5Gネットワークを拡大していくにあたっては、特に重要な情報となります」と彼は言う。
現在、アラビア湾岸地域では使用されていないが、Nearmapなどの企業が提供できるデータは、ドバイやそれよりも遠隔地になるジッダやリヤドといった都市のデベロッパーとってかなり貴重なものとなる
課題は、建設業界が利用可能な技術をいかに迅速に導入するかということだ。
アメリカでは波及効果がますます高まっている兆しがあるが、アラビア湾岸にも拡大するには、オートデスクなどの企業がこの地域におけるビジネスを追い求める必要がある。