
アラブニュース
【リヤド】2019年12月9日発表のサウジアラビアの2020年予算について、同国の大手会計監査法人であるKPMG Al Fozan & Partners(KPMGサウジアラビア)は概観し、今年度の石油市場が不安定ななかで、先進的かつ、財政の安定性および経済成長を両立させることを重視している、と評価した。
同予算では引き続き多角化への取り組みを支援している。民間部門を開発することにより石油部門に依存した経済から脱却、またビジョン2030の目標達成への助力をいっそう強化している。
2020年の歳入は、その62%は主に石油からの収益によるもので、8,330億リヤル(2,220億ドル)に到達する見込み。また、歳出は1兆200億リヤルを見込む。財政赤字は2019年の1,310億リヤル(GDPの4.7%)に対し、1,870億リヤル(2020年のGDP推定値の6.4%)となる。
公的債務は前年度の11.2%増となる7,540億リヤルを想定し、これは2020年のGDP推定値の26%を占める。
KPMGサウジアラビアのアブドラ・ハマド・アル=フォザン会長は今回の予算について次のように語る。「今回の予算案の主眼は、財政の安定性および持続可能性の維持、多角的な財源の強化、経済開発・社会開発の推進に向けた措置といえる」
「石油市場が不安定となり支出にも影響のあるなか、政府はビジョン実現計画を前へ進め注目される。また、2020年財政支出に1兆リヤル超を当てたことは、政府が積極的に経済成長に取り組む姿勢を示している」
他方で、実質GDP成長率は全体で2020年には2.3%に達するものと見込まれる。原油価格が比較的落ち着いている点、ビジョン2030計画の策定、インフラ投資の増大などが理由に上げられる。
非石油部門の収益については、2020年には過去最高の3,200億リヤルが見込まれる。これは、2019年見込みの3,150億リヤルの1.6%増となり、政府が非石油部門の開発支援をおこなうことで経済および社会の利益を強化する取り組みを継続させていることを受けた形だ。
KPMGサウジアラビアのチーフエコノミスト兼リサーチ部門トップのフサイン・アブサーク氏は語る。「想定する歳入を超える支出を総予算として見込んでおり、政府がビジョン2030を不断に実行していくことで経済を多角化させる意図とみうる。2020年予算のキモは、成長と財政的持続可能性の均衡を保ちつつ支出の効率性を強めているところだ」
石油は依然としてサウジアラビアの主たる収入源となることが見込まれてはいる。とはいえ、2019年の6,020億リヤルから2020年には14.8%減の5,130億リヤルを想定し、これは主として貿易戦争にともなう原油価格の不安定性を加味したものだ。
非石油部門の収益についても、前年の3,150億リヤルから1.6%増の3,200億リヤルを2020年には見込む。急増の裏には、政府が収益源を多角化し石油依存を軽減させる取り組みを継続していることがある。
税収については2,000億リヤルとし、前年の2,030億リヤルの1.2パーセント減と控えめに見積もる。モノとサービスに課す税収は非石油歳入の44.4パーセントと、最大の割合を示す。
KPMGサウジアラビアの公共部門トップのイスマイル・ダハム・アラニ氏は語る。「2019年には、ビジョン2030のイニシアチブのもとに多数のビジョン実現計画が実行段階に入っており、進展ぐあいは満足の行くものだ。しばらくは、これら計画が前向きの影響としてあらわれるものとみられる」
加えて、サウジアラビアの債務対GDP比は2021年まで28%を維持するものとみられる。昨年予測では25%だが、これは2019年の原油価格の不安定性による。2019年の債務は増加したものの、サウジの債務対GDP比は引き続き、サウジと同レベルの国の多くと比べていちじるしく低い水準だ。
「政府が持続可能性や財政均衡の達成に取り組みこれを重視することから、企業および公共政策の策定には裨益するものとみられる。今年は原油価格の不安定性は低減する見込みであることから、サウジアラビアは引き続きビジョン2030の目標達成に向け邁進するものとみている」。アル=フォザン会長はそう締めくくる。